二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 木と蝶と小夜曲*REBORN/第18話更新 ( No.83 )
日時: 2011/02/18 23:36
名前: 涙水 (ID: sDjU3pW8)

 【第19話*始まりの序曲オーバーチュア①】


四ツ辻に差し掛かると、四人は立ち止まった。

「俺はここで曲がるから、ここでさよならだ。
 ツナはまた明日、獄寺と成瀬はまた月曜日な!」

「家がこっちなんで俺もここで別れます。
 十代目、お気を付けて!」

山本が右の角へ、獄寺が左の角へ曲がり、

「またね、二人共」

「獄寺君と山本君、さようなら」

ツナと譲葉がそのまま直進しようとした刹那、

「……ッ!
 綱吉君、伏せてっ!」

「わっ!」

唐突に叫んだ譲葉がツナを押し倒す。
彼女の声に驚き歩みを止めて振り返った獄寺と山本の目の前を、風が凄い速さで駆け抜けた。
それは単なる風とは言い難く、鎌鼬かまいたちのような鋭さを孕んでいて、巻き込まれた落ち葉は切り刻まれて霧散した。

「十代目! 成瀬!」

「おいっ、大丈夫か!?」

驚いた二人が駆け寄ってくる。

「来ちゃだめ!」

「「!」」

俯せのまま譲葉がそう叫ぶと、獄寺と山本は弾かれたように立ち止まった。

鎌鼬が襲ってこないか確認しながら、譲葉は身体を起こし倒れたままのツナに声をかける。

「綱吉君、怪我はないですかっ?」

「……な、なんとか大丈夫だけど」

そう返事をしたツナを見て、譲は葉ホッと胸を撫で下ろした。
とっさに伏せたおかげで、鎌鼬は服をかすめただけのようだった。
その証拠に背中の服が少し擦り切れている。

ツナの手を引っ張って立ち上がらせると譲葉は、

「綱吉君、獄寺君と山本君と急いでここから離れてください!」

「ちょ、ちょっと待って! 譲葉っ」

訳が分からずツナが戸惑う。

「おい! 成瀬どういことだっ?」

「ツナと獄寺の言う通りだぜ?
 何が起こってるか説明してくんねーか?」

一度は立ち止まった二人も、ツナと譲葉の近くに寄ってきた。
そんな彼らに譲葉は懇願するように、逃げろと言う。

「すいませんっ、ごめんなさい!
 時間がないんです。早く逃げてください!
 お願いします、早く、早く、私は皆さんを巻き込みたく……っ」

「さすが偽善者だね、セシル・ブランジーニ。
 それとも成瀬譲葉って呼べばいいのかな?
 ねぇ? アールベロの金のカナリア

突然介入してきた声に、譲葉達は振り返る。

そこにいたのは、小柄な少年。
肩より少し上の位置で切り揃えられた白髪に、鈍く光るガラス玉のような灰色の瞳をしている。
チェック柄の上着に七分丈のズボンをはいていて、手にしているのは複雑な模様が書かれ金糸で縁取られたついの旗。

「ゆ、譲葉の知り合い?」

ツナが尋ねるが譲葉はその問いに答えず、ただごめんなさいと小さな声で言い返した。
そして彼女の視線は再び白髪の少年に向か、口を開く。

「白ウサギ、用があるのは私なんだよね?
 この人達はアールベロに関係ないの。
 だから彼らはここから逃がしてあげ……」

「そんなの信じられる訳ねーだろー。
 つーか白ウサギ、何お前だけカッコイー登場してんだよ。ずりぃぞー」

頭をガシガシ掻きながら、白髪の少年とは逆の角から、青年が現れる。
はねた暗い紫の髪に赤紫の瞳の青年は、長く鋭い爪をしていて口からは犬歯がのぞく。
袖は肘の辺りまでで、動きやすそうで黒や紫色を基調とした衣装を身につけている。

「大丈夫、大丈夫。
 まだ登場しただけで名乗ってないから。
 という訳で、自己紹介ー!
 僕はリーブロファミリーの白ウサギ。
 で、そっちはーっ」

「同じくリーブロのチェシャ猫ー!
 まあ適度によろしくなー」

妙に緊張感のない言い方をする白ウサギとチェシャ猫。

「リーブロファミリーって……、マフィアなの!?」

ツナが驚いて声を上げると、

「リーブロ……聞いたことあるッス。
 確かイギリス系の小規模マフィアだった気が……」

「けどよ、そんな奴らがなんで成瀬を知ってんだ?」

獄寺が頷き、山本が首を傾げた。

「じゃあさ、アールベロファミリーって知らない?」

白ウサギがにっこり笑って言う。
譲葉の表情が強張り、何かを言おうと口を開いて止める。

「獄寺君知ってるの?」

「アールベロファミリーはイタリアのマフィアです。
 リーブロと同じく規模は小さい方なんすけど、歴史だけは長いんですよ」

その説明が終わると、白ウサギは譲葉を一瞥する。
譲葉は何も口に出さなかったが、唇を噛み締め白ウサギを睨み返した。
その様子に満足げに微笑むと白ウサギは口を開き旗を上げ、

「そのアールベロのね、十二代目なんだよ。
 そこにいる女が」

譲葉を旗で指した。