二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 木と蝶と小夜曲*REBORN/第20話更新 ( No.90 )
- 日時: 2011/03/18 10:05
- 名前: 涙水 (ID: PGG0kMGj)
【第21話*始まりの序曲③】
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「え……?
譲葉が……マフィアの……ボス?」
ツナが目を見開いて言った。
隣にいる譲葉に顔を向けたが、俯いているのか前髪で顔が隠れて、表情が見えない。
「マジか…?
つーか、成瀬は何で黙ってたんだよ……」
獄寺も驚きを隠せず呟き、内容がいまいち分かっていない山本も少なからず驚いているようだった。
「あり? こいつ等本当に金の鳥のこと知らなかったのか?
つーことは白チャンよ、こいつ等もしかしなくても無関係者?
アリスは関係ねー奴を巻き込むの好きじゃねぇし、逃がすべきか?」
ツナ達の様子を見ていたチェシャ猫が、白ウサギに尋ねる。
白ウサギはんー、と考えるそぶりを見せてから、
「でもさ、アールベロやリーブロのことを知ってるってことは、少なくとも一般人じゃあないよね」
その言葉に俯いていた譲葉が、ばっと顔を上げた。
そして息を呑んで白ウサギの次の言葉を待つ。
「マフィア自体か、マフィアの関係者と考えられる。
——だからアールベロが他のマフィアに援助を求めた、ともとれるよね?」
「違うわ!」
黙っていた譲葉が叫んだ。
「私がこの町に逃れて来たのは偶然なのっ!
この人達は何も知らずに、私に親切にしてくれているだけ。
今回のことには無関係よ。刃を向けて良い相手ではないわ!」
手を広げてツナ達を庇うように、譲葉は立つ。
「それに彼らを傷付けたら……っ」
彼女が息せき切って言う途中で、白ウサギは口を開いた。
「そう言われてもね、君の言葉には証拠がない。
そして僕には君の言葉を信じる義理もない。
アリスからは半殺しまでなら良しと許可を得てる訳で、つまり死ななければいい訳で」
そう言いながら白ウサギは対の旗を持ち直す。
「まあ、簡単に言えば僕は君達を攻撃できるって訳。
それじゃっ、Whirlwind(旋風)!」
彼が言葉と共に旗を振るうと、つむじ風が巻き起こった。
風は落ち葉を飲み込んで真っ直ぐツナ達に向かってくる。
「うわ……っ!」
条件反射でツナが顔を腕でかばう。
すると腕の隙間から、譲葉の金髪が揺れるのが見えた。
彼女は両腕を広げ、息を吸い込んだ。
そして
「〝歌声は空に響き 風を揺らす〟」
透き通る声で歌を紡いだ。
音が空気を震わすのが分かる。
それ程までに譲葉の歌声は美しかった。
しかし驚きはそれだけで収まらず、向かって来ていたつむじ風が震える空気に触れた途端、まるで溶けるように凪いだ。
「!」
目を見開くツナ達を気にも留めず、譲葉は制服のポケットから小さな焦げ茶色の粒をニ、三個取り出す。
「〝雫は大地に注ぎ 新たな芽が吹く〟
生を繋ぐ媒介は私、繋がれる種は汝!」
再び歌を紡いでからそう唱えると、譲葉は差し出した右手でぎゅっと粒を握りしめた。
次の瞬間、彼女の右手から木の芽が飛び出した。
勢いよく成長していくそれは、すぐにメキメキと音を立てる幹になっていき、譲葉が右腕で白ウサギを指すと、彼に向かって動物のように空中に伸びていく。
白ウサギは臆すことなく旗を振り、風で幹を切り裂いた。
「ふーん?
音源と水源がなくても植物を扱えるんだね。
さすがアールベロのボス、と言ったところかな?
でもその木の栄養素、君の血液でしょ。
どれくらいもつかなぁ」
楽しげに言う白ウサギからツナが譲葉の右腕に視線を移すと、彼女の手と木の間から赤い液が滴っているのが見えた。
言うまでもなくそれが血だと分かる。
「ゆっ、譲葉! それ、血……っ」
「今までいろいろ騙していてごめんなさい。
でもこれだけは信じてください。
あなた達のことは私の命に変えても、必ず守りますから」
振り返らず言う彼女の声に気圧されて、ツナはこれ以上何も言えなくなる。
「無茶すんなよなー、金の鳥。
出血多量で死なれても困るんだわ、俺達。
だからよ、適当にやられとけって。なっ?」
背後にいたチェシャ猫の語尾が上がったのは、彼が地面を蹴って飛び上がったからだった。
ツナが振り返ると獄寺と山本めがけて、彼の鋭い爪が一閃したのが見え、背中からは譲葉が息を呑む音と、白ウサギが風を放つ声が聞こえる。
来るであろう痛みを予想して、ツナはぎゅっと目をつぶった。