二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 木と蝶と小夜曲*REBORN/第21話更新 ( No.97 )
日時: 2011/04/07 09:04
名前: 涙水 (ID: PGG0kMGj)

 【第22話*始まりの序曲オーバーチュア④】後編


「その命令はあたしが受けるわ」



————バチィッ。
ツナ達の周りを円を描くように閃光が走り、白ウサギは起こしていた竜巻ごと弾かれた。

「っ!」

竜巻が霧散して、右腕を押さえてよろめいた白ウサギの名前を、チェシャ猫が叫ぶように呼んだ。

「白っ、無事かっ?」

「……うん、ちょっと痺れただけ」

ふらりと揺れて白ウサギが返事をする。
そんな彼とツナ達の間に、少女が二人降り立った。

「へぇ、歩けるのね。
 結構キツイのくらわしたつもりだったんだけど。
 もうちょい電圧上げとけば良かったかも」

そう言ったのは火花を散らす電気コードを手袋越しに持った、納戸色の瞳に、浅緑の髪を編み込んでいる少女。

「なっ、梛芽なぎめ!?
 どうしてあなたまでここにっ? 屋敷を張ってたはずだよね?」

譲葉が珍しく呼び捨て呼んだ少女梛芽は、

「あんた達三人共と連絡とれなくなったから、もう迎えに来るしかないじゃない。
 文句言うならちゃんと携帯に出てちょーだい。
 それに文句より先にあたしに言うことがあるでしょうが」

「……あ、ありがとう」

譲葉が条件反射で礼を言う。
それを見て日向はくすくすと笑い、

「エラソーだねぇ、先輩。
 助けにくるのすっごい、ギリギリだったのにー。
 ていうかもう来てたのに、助けに出てこなかったくせにー」

「黙りな、日向。焦がすよ?」

電気コードをびしっと引っ張り、梛芽が冷ややかな目で見る。

「えっ、日向ちゃん、梛芽がいること知ってたの?」

「うん、まあね。
 汐璃も気付いてたよねー?」

「ええ。早く助けに行けって言ってるさやと言い合いしてるの、見えてたわよ」

汐璃が視線を投げたのは、梛芽と共に現れた水色の髪に淡紫色の瞳の少女だ。
長い水色の髪をひとつにまとめて三つ編みにしている彼女は、汐璃に向かって口を開く。

「梛芽さんが全然助けに入ろうとされないので」

「だって相手が油断してる時が、一番効率よく助けられるでしょ?」

微妙に嫌味のこもった清の声に、梛芽は眉根を寄せて言い返すと、視線を戻し、

「さーて、白ウサギ。形勢逆転ね。
 いくらあんたでもこれだけ人数差があるとキツイわよね。
 仕掛けようとしてるあんたにも言ってるのよ、チェシャ猫」

「……チッ」

ツナが振り向くと爪をかまえていたチェシャ猫が舌打ちする。

「退くのなら十秒だけ待ったげるわ。
 あたしは別に構わないけど、うちのボスはこんな町中で戦うの嫌だろうからね。
 さあ、どうする?」

梛芽が電気コードに火花を散らして、脅すように問いかけた。

「……」

白ウサギは唇を噛み締めて、梛芽を睨みつけた。
しかし梛芽は気にした様子もなく、カウントダウンを始める。

「十、九、八、七……」

「……一旦退くぞ、白。部が悪すぎる。
 それに今回は戦うことが目的じゃねぇしよ」

動こうとしない白ウサギにチェシャ猫が低い声で言うと、

「……うん、そだね」

そう言って白ウサギは、上着のポケットから白封筒を取り出し投げて寄越す。
それを譲葉が空中で掴みとった。

「我が主アリスからの招待状だよ」

そう言うと白ウサギは旗を振り風を起こし、風が止む頃には彼の姿はなかった。
チェシャ猫も同様だ。

「……ふぅ」

ツナが安堵の溜息を漏らすと、横に立っていた獄寺が譲葉達に向かって口を開いた。

「おいっ、テメー等何者なんだよ!
 さっきの奴等もよ、それにアールベロとリーブロってマフィアの名前だろ!?」

「まあまあ獄寺、そんなに怒るなって」

「うっせー、野球バカ!!
 変な連中に十代目が襲われたんだぞ!?」

にこにこと笑って肩を叩いてきた山本に、獄寺は怒鳴る。

「獄寺君、俺は別に気にしてないからっ。
 ……でも譲葉、記憶のこととかその子達のこととか、本当のこと話してくれないかな……?」

ツナが譲葉に苦笑を見せる。
彼女は逡巡したが頷いて、

「すいませんでした、綱吉君。巻き込んでしまって。
 話します、本当のことを。アールベロのこともリーブロのことも、私のことも……」

「日向を追ってきたら……君達なに群れてるの? 咬み殺すよ?」

突然、譲葉の言葉を遮られた。
声のする方には並盛中風紀委員会委員長の雲雀恭弥が、不機嫌そうな顔で立っている。

「ひっ、雲雀さん!?」

「あ、恭弥ーっ。迎えに来てくれたのー?」

「雲雀さんを呼び捨て!?」

雲雀が来たことよりも、日向が雲雀の名前を呼び捨てで呼んだことの方が、ツナを驚かせる。
ツナが目を白黒させていると、

「……ボス」

聞き覚えのあるか細い声に呼ばれた。
振り返ると、

「クローム! ……と、その人は?」

リング争奪戦以来会っていなかったクローム髑髏と、その後ろに中性的な少年が立っていた。

「あら、瑠架久しぶりね」

「はい、七日ぶりくらいですね。
 探したんですよ? 姉さん」

汐璃が笑顔で少年に声をかけると、少年も笑顔でそれを返す。

「……あの綱吉君、場所、変えませんか……?」

「……うん譲葉、俺も変えた方がいいと思う」

ツナが気付くと、かなりの大所帯になっていた。