二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン 黒田エリの好きな人 ( No.21 )
- 日時: 2010/09/04 01:20
- 名前: 紅花 ◆iX9wdiXS9k (ID: 08bdl7kq)
第十話 意外な姉弟と眼帯少女
*
ほら、私達、よく似てるでしょ?
*
「うーむ」
俺は困っていた。
「大丈夫か、鬼道?」
そう風丸に聞かれて、俺は苦笑するしかなかった。
風丸に言えるわけないじゃないか。
——黒田エリの腹蹴りによる被害者が出過ぎでまともに練習できないって。
はー、と息を吐く。
黒田は、助っ人を呼んでくる、と言っていた。
信じていいんだろうか?
人を疑うのはよくない、それはわかっている、だけど、やっぱり、
信じていいんだろうか?
そう思ってしまう。
何せあの黒田のことだ。
明るくマイペース、忘れっぽくて軽くてポジティブ過ぎて無責任、酷く言えば野蛮なあの女(アマ)に、約束がちゃんと守れるかどうか。
毎日遅刻しているのも黒田だし。
噂をすれば影がたつ。黒田が歩いてきた。
じたばたもがく人間を引きずりながら。
フットボールフロンティアインターナショナル。
俺たちは今、ライオコット島にいる。
「ほら、立て! カゲト!」
カゲト。この名前は聞いたことがある。
脳裏のデータファイルを探る。
見つけた。
闇野カゲト、通称シャドウ。
白い髪に黒い肌が特徴的な少年。
「ほら、紹介するよ! 闇野カゲト、わたしの異母弟でーす!」
「ほー、異母弟……って、えぇええぇぇえええぇええええ!?」
絶叫が響き渡る。
よく見ると、二人は似ていた。
髪の毛の色とかは違うけれど。
髪の毛の跳ね方とか、方向とか。
よく似ている。
「よく似ているな」
「こいつに似たっていいとこないから」
「私達父親似なの。あとさ、それ、どういう意味?」
頭を掴み、髪をくしゃくしゃにする。
無言で黒田を睨みつけるカゲト。
微笑みながら睨み変えす黒田。
禍々しい雰囲気が渦巻きだす。
その雰囲気から逃れようとするかのように、佐久間がジュースを買ってくると言い出した。
ぬけがけする気か。
ゴーグル越しに佐久間を睨みつける。
そんな俺の視線に気付いた佐久間はひゅ〜、と口笛を吹き、顔を背ける。
そんな時、突然、豪炎寺の顔がぱぁああっ、と輝いた。
こんなに喜んでいる顔、始めてみたぞ。
俺の目がすっと移動する。
豪炎寺の妹が走ってくる。
それから立ち止まって振り返る。はやくおいでよ、と言っているらしい。
後ろにいる少女は、びくびくしながら歩いてくる。
長髪を風に靡かせ、右目に眼帯をしている。佐久間と同じ眼帯だ。
「お兄ちゃん!」
と夕香ちゃんが叫んで豪炎寺に抱きつく。夕香ちゃんを抱える豪炎寺。今、幸せですと右頬に書いてある。
左頬には、我が人生に悔いなし、と書いてある。
額には、夕香は俺の天使、と書いてある。
白鬼道が黒鬼道になった。黒鬼道がぼそっと呟く。
このシスコン。親バカならぬ妹バカ。
同時に、ちょっと懐かしかった。
昔、俺もそうやって春奈を抱いていたなぁ、と暫し思い出に浸る。
『お兄ちゃんすごーい!お兄ちゃんのこと大好き!』
あのころは可愛かったな。
続けて脳裏のアルバムを捲る。
『お兄ちゃんなんかきらい!』
『お兄ちゃんのわからずや!』
『お兄ちゃんのあほんだら!』
ダメだ。褒め称える声よりも、罵声のほうが多い。
思わず頭を抱える。
「本当に大丈夫か、鬼道……?」
「お兄ちゃん、大丈夫……?」
春奈と風丸に聞かれて、俺は今まで考えてきた事を思い出し、顔を真っ赤にした。これは誰にも言わないほうが良いだろう。
俺は話題を変えるべく、眼帯少女を見た。
「ところで、あいつは佐久間の妹か?」
「いや、初めて見る顔だが」
「でも帝国の制服着てるぞ」
「あ、ほんとだ」
少女はすぅ〜、と息を吸うと喋りだした。
「わ、わたし、さ、さくませんぱいのファンなんです!」
顔を真っ赤にし、半泣きで言葉を紡ぎだす少女。
「たっ、谷村律って言います!」
「谷村……か。聞いた事ないな」
呟く佐久間。谷村律が泣き出した。
俺ははぁ、と溜息をつく。佐久間。お前もすこし、空気読め。
「佐久間先輩に会いたくてっ、てっ、帝国に、転校したんです、っ、でもっ、わたしっ、ずっとっ、ずっと放したいなって、思ってたけどっ、一度もっ、話しかけられなくてっ、っ、いいことがあるかもってっ、思ったら、っ、たんじょうびのひにっ、ライオコット島に言っちゃうし……」
かなり小心者のようだ。これじゃ、話しかけられないだろうな。
「その眼帯は……」
「手作りですっ、ぐすっ」
そして、三日後。
「ま、マネージャーとして、さ、佐久間先輩のことを応援したいです!」
厄介なマネージャーが、また増えたのだった……。
*
佐久間先輩ファンクラブを設立したいです!
*