二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 黒田エリの好きな人 ( No.26 )
日時: 2010/09/04 22:20
名前: 紅花 ◆iX9wdiXS9k (ID: W3jWtiQq)


 第十三話 〈潜む者〉

 *
 はい——私にできることなら。
 *

『始めまして。
 ネオジャパンの監督、吉良瞳子です。
 黒田エリさんですね?
 貴女のことは存じています。
 チーム[ブロッサム・クイーン]のキャプテン兼ミッドフィルダー。違いますか?
 エイリア学園言う学校があって、一時期、日本で中学の破壊活動を続けていました。
 それと[ダークエンペラーズ]を食い止めたのは、イナズマジャパンです。
 貴女に、お陽さま園に来ていただきたいのです。
 なぜか、と説明すると、話が長くなるので、一度こちらにきてくれませんか?
 その時は、ご連絡ください。

 ○○‐○○○‐○○○○

                 吉良瞳子』

 ……何がいいたいんだこの人。
 エイリア学園を食い止めたのはイナズマジャパン。それが私になんの関係があるんだろう?
 まあいいや、考えるのも時間の無駄。天むす探しにいこう。
 あ、先に電話しといたほうがいいかな。今日の午後四時にしよう。

『はい、もしもし。お陽さま園です』
「あの、吉良瞳子さんですか?」
『はい』
「始めまして、黒田エリと申します。手紙、届きました。ありがとうございます!」

 私って敬語苦手なんだよ〜。本読んでもわかんねぇし。

「今日の午後四時にいきますね。あと、その、理由とかは……」
『理由、ですか? ああ、理由はですね……』
 
 受話器の向こうで、ふうう、っと息を吐く音が聞こえた。

『貴女しかいないからです。——暴走した緑川リュウジを止められるのは』

 は?
 暴走したリュウジ?
 なにそれ?
 意味不明!!
 詳しい説明求む!!

『話すとやはり長くなるので、お陽さま園でお話いたします。では、今日の午後四時』

 ああ〜、切っちゃった!
 この瞳子って人、マイペースだなぁ。
 着替えて出かける。コンビニなら坂下にある。
 坂をとっとっと、と走っていき、コンビニに入る。
 クーラーの風が涼しいけど、すこし寒すぎない?
 おにぎりを探す。天むす、天むす……あった!
 おにぎりと天麩羅がプラスしたみたいなモノだ。
 五つ買う。体力つけるんだったらたくさん食べないとね。
 ついでにコーラを買っておく。それから自分には、パン。ダイエット中なんだもん、しかたないでしょ。
 
 お昼になって、擦り傷だらけのリュウジくんが帰ってきた。

「やっほー。来たよー。天むすカモン!」
「その前に手ぇあらってこい」
「えぇー。おなかすいて動けない」
「嘘つけ。見たぞ。お前が猛スピードで自転車こぐの」
「あっ、見てたのかよ。鋭いよなー」
「鋭い、かねぇ? とりあえずシャワー浴びて来い」

 はいはい、と言いながらお風呂場まで歩くリュウジくん。
 久しぶりだなぁ、気軽に話せる男友達って。
 だって、一郎太に好きになってもらおうとして、必死で頑張ってたもの。
 一郎太以外の男の子と話す機会がどんどん減ってった。
 意識してるんだよ、ってわかって欲しかったけど。
 一郎太はそれまで、私のこと、あんまり知らなかったみたいだ。
 どのくらいかして、風呂場からリュウジくんが頭を覗かせた。髪を解いている。濡れた髪が、顔に張り付いていた。

「あのさ、服」
「あるじゃん」
「でも、汚いよ?」

 その一言は、魔法の言葉。私は直ぐにズボンと白のTシャツを持ってきて放り投げた。

「ありがとねー」

 着替えると、なかなか合っていた。
 髪の毛をポニーテールにし、いただきまぁすと言って天むすを食べる。
 可愛いなぁ。
 なんか、「年下」って感じだ。
 姿は私とおなじくらいの年でも、精神年齢はまだまだ子どもなのかもしれない。
 そのあと、どれくらいかサッカーをやって、お陽さま園へいく。
 そして、瞳子さんと私だけで、話し始めた。

「あのね、リュウジは、血を見るのが嫌いなの」
「血」
「そう、血。彼の両親は殺されたの。リュウジは現場を目撃している」
「そんな……」

 そんなのって悲しい。
 私も小さい頃、母親のことが嫌いで、死んじゃえって思ったことがあったけど。
 母親の笑顔を見て、思ったんだよ。
 お願い、死なないで。
 ——って。
 どんなに叱られても、憎めなかった。
 だって、私、幸せだから。
 虐待されたりもしなかったし、病気で亡くしたなんてこともなかった。
 でも、ここにいる子どもは、全て、両親がいない、もしくは捨てられた子どもたち。
 なんだか悲しくなる。

「でも——でもなんで私が彼をとめることが出来るんですか?」
「貴女はとめたことがある。忘れたの?」

 えっと……六年生の時かな。
 日本に遊びに来た時、男の子を見つけたんだよね。
 深く帽子を被っていたけど、その下の、憎しみに満ちた目はよく見えた。
 
「リュウジは血を見ると、『レーゼ』になる。そして、建物を破壊しようとする。だから彼は建物を破壊することに専念した。マスターランクは建物を破壊するのが少なかったの、気付かなかった?」

 あの男の子は、そうだ、破壊しようとしていた。
 建物を殴っていた。八つ当たりみたいに。
 そうしたって、どうにもならないのに。
 見てると悲しくなった。この子はなにを考えているんだろうって。
 あれは、暴走してたの?
 その後、私は、彼を止めた——……

「そう。貴女は彼を止めた。他の誰も止められなかった。イナズマイレブンは、エイリア学園を止めることは出来ても、リュウジの中に潜む『レーゼ』をとめることは出来なかった——だけど、貴女はとめることが出来た。だから、貴女に頼みたいの」

 長い、さらさらした黒髪の女性——吉良瞳子さんは、頭を下げた。

「お願い。彼が暴走しそうになったら、止めて」
「それは、」
「ね?」

 悲しみに満ちた目で見つめられて、私は戸惑った。
 彼女は20歳くらいのはずだ。でも、何故か、老けて見える。
 きっと苦労してきたんだろう。
 
「はい——私にできることなら」

 *
 努力するってことを、学びたい。
 *