二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン 黒田エリの好きな人 ( No.43 )
- 日時: 2010/09/05 20:33
- 名前: 紅花 ◆iX9wdiXS9k (ID: 3P/76RIf)
第十九話 壊れやすいもの
*
なんで、なんで壊れやすいものが、この世に溢れているんだろう。
*
「おはようございます……」
テレビの目覚し機能で目覚める私達。
ふぁあ、と欠伸をするマキちゃん。
蒼くて長い髪が、すっごく可愛らしい。紅の瞳は、まだ眠そうだ。
私は鏡を覗く。相変わらず、ぼさぼさしてる。
天然パーマの寝起きはこんな感じ。
鳥の巣みたいな?
髪を梳いて元に戻すけど、やっぱり跳ねてる。
髪を梳く私の隣で、マキちゃんが髪の毛をセンプウキみたいなお団子にしている。
「男どもはまだ起きないのかしら?」
「みたいですね……あっ、私がカゲトくんを起こしにいきますね!」
眠そうだったマキちゃんの眠気がふっとんだらしい。
紅の瞳がキラキラと輝いてる。
変換早すぎ。
スキップし、鼻歌を歌いながら、一直線にカゲトとリュウジくんのいる部屋にいくマキちゃん。
ふぅ、と溜息をついて食パンを焼き、マヨネーズと卵を取り出す。マヨネーズを塗って、マッシャーで潰した卵を加えると、すっごく美味しいんだ。
「今日はいい天気だよー!!」
「はぁ?」
カゲトの呆れた声が聞こえてくる。まあ、そんな彼の気持ちもわかる。
だって、外から響いてくるのは、雨の砕ける音ばっかりだったから。
それって超ウザイ。
だって、天然パーマは水に濡れたり、湿気があるとすると、跳ねるんだよ。
ぎゅーって髪をひっぱって、続けて朝ごはんをつくる。
今日はかなり早起きしたから、目玉焼き、つくろっかな。
卵を四つ取り出して、コンコン、とフライパンにぶつける。
うちって、卵の使用率高いよなぁ。鳥さんには感謝しなきゃねぇ。
そんなことを考えながらやっていると、
「ふぁ〜、眠い眠い」
「あぁ、雨かぁ。これじゃ星が見られないや」
窓の外を見て、憂鬱そうに呟くリュウジくん。
もう! 憂鬱なのはこっちよ!
そう思いながら、パンにマヨネーズを塗り、卵を加え、それから目玉焼きを他のお皿にいれる。トレイに乗せて運ぶ。
「ごめんなさい、お義姉さん。手伝わなくて……」
「いいって、いいって」
すまなさそうに言うマキちゃんに、私は右手をヒラヒラふる。
ってか、いつのまに「お義姉さん」になったんだ、私。
「おふくろ」と「姑」の気分を味わう、15歳の複雑な朝。
「んぐんぐ。んぐぐぐぐんぐぐ?」
「なに言ってんの、カゲト」
「もぐぐ。もぐぐぐぐぐ」
「リュウジくんまで、なに言ってんの? もう、二人ともごっくんしてから話なさい!」
完全に小さい子扱いされている二人の男、そして完全に子どもをしつけている母親になっている私。
二人とも素直に私の言うことを聞いて、口の中にあるものを呑み込む。
因みに、リュウジくんはもちろん人懐っこい状態だ。
素直に聞いてくれるのは嬉しいんだけど、なんか、複雑。
「マキにさ、相合傘にするか、しないかって聞いたんだよ」
「あたりまえじゃない、相合傘だよ」
「今日、郵便配達しないの。学校いくって」
「勉強忘れてないでしょうね?」
「もっちろん!」
「宿題は? ティッシュは? ハンカチは?」
「うわ、やべ、マキがくれたハンカチと昔のハンカチ交換するの忘れてた!」
「ちょっと、そんな大切なこと忘れないでよ!」
カゲトとマキめ! いつの間にそんな親しい関係になった!?
姉と赤の他人が居る場で堂々と相合傘するかどうかと聞いてるお前等は……うらやましすぎる!!
ってかなんでおふくろになってんだ私!
宿題は、ティッシュは、ハンカチはって、完璧な母親だよ!
とりあえず、学校行くか……。
朝ごはんを食べ終え、制服に着替えると、鞄を持って出かける。傘は黒。因みにマキちゃんとカゲトのは、ブルーで紫陽花の絵が描いてある。マキちゃんのやつだ。
で、リュウジくんが、紺色。星座が色々描かれたやつ。本当に星が好きなんだなぁ。
傘を開ける。ばっと、花が三つ咲く。
さっきまで、雨はやさしいワルツを踊っていたのに、今ではもう、激しいタップダンスに変わっている。
あっ……二見さん!? その先にいるのは……一郎太!
二見さんは喜び勇んで一郎太のほうへ走っていくと、一郎太の、蒼い傘の中に入って、自分の桃色の傘を畳む。
その横顔が、凄く楽しそうだ。
胸が引き裂かれそうで、私は走り出した。
転んだってどうでもいいよ。血がでなけりゃね。
そうしてたら、誰かにぶつかった。その誰かは、傘をさしてなかった。
その誰かが振り向く。
「ごっ、ごめんなさい……」
白くて細長い顔、黒くてつやつやした長髪を、無造作に束ねている。前髪だけ、明るく鮮やかなオレンジに染められている。
着ているのは……雷門中の制服? でも、こんなこ見たことない。
鋭くて小さい目がぎらぎら光る。ひっ、怖い。
「べつに」
彼はそっけなくいった。
それから、私の制服を見て、
「雷門中の子?」
「は、はい!」
「俺、転校生」
「えっと、名前は……」
彼はくすっと笑った。
自嘲的な笑みだけど、レーゼの笑みに似ている。
そう感じた。
「切先刃(きっさき やいば)。それが俺の名前。自分でつけた」
へっ?
拍子抜けした。
ちょちょちょ、なんでよりによってそんな名前つけるの!?
驚いている私を他所に、彼はリュウジくんを見つけて、彼の傘のなかに入った。
それからリュウジくんとなにやら喋りだした。
なになに、この展開!?
リュウジくんと刃くんの目が、熱っぽくなってる!?
なんだか、自分だけ仲間はずれみたいな感じになって、私はもっと早く歩いた。
すると、ハルちゃんと鬼道が歩いてた。
「はるちゃん、鬼道!」
二人が振り返る。
「あっ、エリさん!」
「黒田」
「やっほー。サッカー部のみんなは元気?」
二人は顔を見合わせた。
えっ? これって、やばくない?
「えっと、それが、」
言いにくそうに口を開くはるちゃん。
「風丸くん、サッカー部やめちゃって」
「えっ……?」
*
友達と一緒の安らぎの時間は、その一言によって、崩れ去った。
*