二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 黒田エリの好きな人 ( No.48 )
日時: 2010/09/10 22:50
名前: 紅花 ◆iX9wdiXS9k (ID: HnQQx7lG)


 第二十三話 壊し魔

 *
 私は、壊し魔。
 *

 私はくすりと笑う。
 緑色の髪の毛の少年は、なにも知らずに、飲み物を飲み干していく。
 それから美味しいね、と笑う。
 なんて純粋な笑顔。なんて単純な心。
 でも、だからこそ壊しにくい。
 聞いたものを鵜呑みにしてしまう、単純な心。
 複雑に考えこみ、自分から崩壊してしまう人間だっている。
 私は、壊し魔。
 壊すことにこそ楽しみを見い出す。そう、父のように。
 人の事を、傀儡(かいらい)としてしか思っていない。
 そう、私は父によく似ている。
 母は恐れた。父に酷似した私を。
 そして逃げ出したのだ。
 緑の髪の毛の少年の顔が青白くなっていく。
 口を酸素不足の金魚のように開けたり閉じたりし、私を指差す。
 どく、と彼の唇が動く。
 
「今更気付いても、遅い」

 今、私の目の前の少年は、理性を失いかけている。
 父は、毒を発明することに長けていた。
 神のアクアも、我が愛しい父の作品。
 日本代表の鬼道有人も、不動明王も、すべて、父の作品。
 イタリア代表の監督も、父。
 私の父の名前は、影山澪冶。
 そして私は、壊し魔——影山澪。
 少年が駆け出した。
 彼は、学校を壊そうとしている。
 私は目覚めさせた、〈潜む者〉を。
 父は、サッカーを憎んでいた。
 だから、こう思った。
 サッカーを、他の人々にも憎ませればいい。
 私は、愛しい父を手伝うのだ。
 最後の一時、父が私を実験台にするまで、父の野望が叶うまで。
 外から、なにかが崩れ落ちる音が響き渡る。
 騒ぎが大きくなる。
 喧騒は嫌いだ。
 私はその場から立ち去り、駆け出す。

 待ってて、お父さま。
 今すぐ、会いに行きますからね。
 そしたら、報告しますわ。
 今日の出来事を——。
 そしたら、褒めてくださる?
 久しぶりに、甘えたいんですの————。

 *
 私の父の名前は、影山澪冶。
 *