二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 黒田エリの好きな人 ( No.52 )
日時: 2010/09/11 22:21
名前: 紅花 ◆iX9wdiXS9k (ID: joPTjG.e)


 第二十五話 若田の毒舌攻撃

 *
 ブラック化した若田を止められるのは、恐らく彼の双子の兄だけです。
 *

「すっげぇ」

 ぼそっと呟いたのは切先だった。
 目を見開いて、廃墟とかした中学を見つめている。
 黒いボールが、紫色の怪しげな光を放つ。
 無表情で、少年はボールを踏みつける。
 
「なんていうのかな。荘厳なかんじ」

 一人の少年がボールを踏みつけて廃墟の上に立っている、それだけだ。
 でも、その少年の表情が、荘厳だ、と感じさせていた。
 下界にいる人々を見下ろしている、そんな感じ。
 唇が歪む。歪んだ笑みは、どこまでも冷たい。
 若田が能天気な声をあげた。

「クイズだよ。あの子はなんで高いところにたっているんですしょーか?」

 大きな声で言う若田。その声はたぶん本人にも届いたのだろう、レーゼは眉を顰めた。
 
「あり? だれもわからないの? それじゃあ答え言うね。答えは、あの子はちょっと背が低いから、自分をおっきく見せようとしてるのでしたー孔雀と同じだよねー」

 レーゼの右眉がぴくっと動き、唇の形も変化する。
 ムカついているらしいが、必死で自分を押さえ込んでいるらしい。そんな様子が可愛らしくて、リュウジそっくりで、切先は吹きだした。
 ふきだした切先を見て、顔を赤くするレーゼ。思いっきりボールを蹴る。
 切先の顔面にあたるボール。
 ぶごっ、と奇妙な叫び声をあげながら倒れる切先。倒れてもなお、笑い続ける。
 
「あとねー、あの子の身長はというと、基山、南雲、涼野、砂木沼、知ってるよねー? あと吉良さんも知ってるよねー?」

 若田がまたもや口を開く。
 突然呼ばれた五人は少しうろたえたが、答える。

「彼は確か……150だったわよ、ね……?」
「たしか黒田は160……?」
「10センチも低いのか……そういう障害物って恋にあるとなんか諦めかけちゃうよね……」
「そーいやあいつ、昔っからずうっとチビだったよなぁ」
「それは南雲、お前があいつの頭を押していたからなのでは」

 上から瞳子、砂木沼、基山、南雲、涼野。
 それを聞いて満足げに笑うと、若田はまたレーゼに向かって言う。

「だってさー。すごいよねー。りえりは五年生でもう152だったのにねー。ってか君、これ以上背、のびるかなー?」
「黙れ! 黙れ黙れ黙れ!」
 
 左眉をぴくっと動かした後、顔をさらに真っ赤にして怒鳴り散らすレーゼ。
 平常心を失って涙目のレーゼを見てクスクス笑う若田。
 他の野次馬たちも笑い出す。
 髪の毛までもが赤くなりそうなくらい真っ赤になるレーゼ。

「うるさい! 黙れ! なにが可笑しい!」

 握り締めた拳が震えている。
 背が低いという事実は彼のコンプレックスだったに違いない。
 若田は言った。

「君ってさぁ、やっぱり緑川リュウジだよね。口調こそにてないけど怒ってるときの可愛らしさは同じだね」

 にたぁ〜、と笑みを浮かべる若田、全身の血が顔まで逆流したかのように赤いレーゼ。
 さらに追い討ちを続ける若田。

「大体、負けたチームのキャプテンが今更雷門に勝てるなんて無理っぽいし。ってかりえりも迷惑してんじゃない? あんたが暴走するたびとめなきゃなんないから」

 ——どうやら若田は、スパイだけでなく、追い詰めることも得意らしい。
 切先はそう思った。
 若田の攻撃がこれで終わるわけがない、若田はどんどんやっていく。

「ってかさー、りえりってポニテ好きだよね、君といい風丸といい。あとさー、君って体力不足だもんね、早く基礎体力をつける特訓をしたらどうなの? そこらへんで学校壊して負け犬の遠吠えしてるよりさぁ。あっ、負け犬の遠吠えはわかるよねぇ。諺得意だもんねぇ。あと、豚に歌を教えるな、もしってるよねぇ。無茶するなって意味だよね。うん、知ってたらいいんだよ。知ってたら。君はそれほど無知な子どもではなかったよね」

 すっかりブラック化してしまった若田。
 黒田、風丸、二見、円堂をはじめとするイナズマジャパンの面々は、ぽかんとして若田を見ている。
 レーゼの顔が青ざめていく。
 
「ねーねー基山、レーゼってなにが怖いの?」
「……えっと……ミステリー。流血表現苦手みたい……」
「へぇ〜。そーゆーの怖かったんだぁ。意外だねぇ。で、ホラーはどうなの?」

 レーゼが狂った。レーゼは頭を掻き毟りぶつぶつと呟くように喋りだす。
 すごい小さい声だったが、若田にはちゃんと聞こえていた。

「いやあの口から血をたらたら流しながら生き返るゾンビ怖いやっぱホラーだめアクションだめミステリーだめ血が流れるならなんでもだめ赤い液体もむり絵の具をかったら赤いやつは即処分南雲の髪が液体や血じゃなくってよかったです女じゃなくてよかったそれが正直な感想」

 ふぅん、若田は笑顔で言った。

「あのね、このあいだ怖い映画みたんだよ」

 ぴきっと音がして、レーゼが凍りついた。

「連続殺人事件が起こって、沢山の人が銃殺されて、血を流して、犯人も返り血を浴びてまっかっかで……「うわぁあああぁああああぁあああッ!!」

 頭を抱えていつのまにか廃墟の後ろに移動し震えだして絶叫するレーゼ、いや、緑川リュウジ。
 
「も、戻ってる……」
「怖がらせるって方法もあったのね……」

 感心する黒田と瞳子。
 怖がっている緑川をからかいに着たらしい元上司四人。

「ああ、俺がこの間みたやつなんかな、無差別殺人だぜ。ばんばんばんばん銃で撃つまくって、で打たれた人たちは血を……「ひぃいいいいぃいいぃいいいッ!」
「この間わたしがみたやつのほうが怖かった。血塗れの幽霊が生きている人間を祟って……「ぎゃぁああぁああああああぁぁあああッ!」
「僕がみた夢もかなり怖かったよ。地獄の血の川の夢でね……「いやだぁああぁああぁああああッ!」
「私が見たやつはな、血塗れになった動物の死体を白熊が銜えて……「やめてぇええぇえええぇえええええええッ!」

 か、かわいい。
 イナズマジャパンの面々は、そう思っていた。
 そして半泣きで元上司の四人を睨む緑川。

「もうっ! みんなの所為で、今日は眠れないよぉっ!」
「なら、寝なくてよろしい」

 元上司の四人の気持ちを代表して言う涼野。
 ふふふ、と笑みを浮かべて、怖がっていると同時に恥かしがっている緑川を見ている。
 むぅ、と怒って唇を尖らせすねる緑川。
 かわいい。
 再びそう思うその場にいる人々。
 切先は呟いた。
 
 *
 たぶん、こいつは弟系だろなぁ……。
 *