二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.218 )
日時: 2011/02/02 17:26
名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: PdKBVByY)

    【 Ⅴ 】   道次


     1.

 はるか上空を漂う、天使の国——
 その、最も天に近い、世界樹の立つ場所。

「・・・長老オムイさま。そろそろ、お戻りになられては・・・」

 近衛天使が、世界樹に祈り続けるオムイに話しかけた。
「・・・うむ・・・それもそうじゃな・・・」
 オムイはいつもと同じように、ため息をつき、立ち上がる。
名残惜しげに、あるいは心配げに世界樹を見てから立ち去るというのは、毎回の事だった。
 ・・・だが。今回は、違う。
「・・・・・・・・・むっ・・・?」
「はい?」
 何かの音を聞き取ったオムイに、上級天使が聞き返す。だが、答えられる前に、近衛天使も理解した。
 突然何かに明るく照らされた空。聞き覚えのある汽笛の音。
「——あっ・・・あれは!?」
 つい、近衛天使のうち一人は、その名を呼んだ。

「——天の箱舟——!」

 天使たちは、驚きに顔を固まらせ、あるいは喜びに顔をほころばせる。
また[あの悲劇]がおこる気がして、顔をしかめる者もいた。
 オムイの表情は、安堵である。長老は呟く。「我々を、救いに来てくださったのじゃ・・・!」
 光の煙を伴い、あの日と同じ位置に、停まる。
 扉が開く。天使たちの視線が殺到する。
 光の向こうから現れた人影は、

「———————なっ!? まさか、・・・マルヴィナっ・・・!?」

 ——無論、マルヴィナ、キルガ、セリアスだった。


 三人は長老の間で、横一列に並んだ。
「・・・それでは、説明してくれ。何が起こったのか・・・」
 オムイはようやく落ち着きを取り戻し、促した。
 翼も光輪もない理由は、天使界から“落ちた”ことにあるのか、それとも偶然なのかは定かではない。
その説明から始まり、天使のチカラを三人ともほとんど失っていることと、人間界のあちこちで
異変が起きていることなどをオムイに話した。だが、シェナのことは言っていない。
 長い説明を終え、三人はようやく黙った。
「・・・そうか。ここを襲った邪悪な光は、人間界までも・・・お前たちも覚えておろう。女神の果実が実ったあの日——
光は雲を面向き、女神の果実はすべて人間界に落ちた。お前たちとともに」
 オムイは杖をトン、と床につく。「・・・お前たちの他に落ちていった天使は、いまだ戻らぬ・・・」
 確かに、天使界は以前より天使の姿が少なく見えた。
「そして、あの光の原因を調べるために、何人かの(天使でも数え方は“人”らしい)天使が地上へ降りて行ったが・・・
誰も、帰ってはこんのじゃ。まるで、皆何かがあったようにな・・・」
「誰も・・・? ——えっ、それでは、イザヤールさまはっ!?」
「・・・その一人じゃ。イザヤールだけではない。キルガの師ローシャも、セリアスの師テリガンも・・・な」
 キルガとセリアスの顔色は、ほぼ同時に変わった。
「・・・ともあれ、お前たちだけでも戻ってこれた・・・いろいろ済ませたら、世界樹で一晩祈りなさい。
感謝の意を込めて・・・もしかしたら、翼や光輪を元に戻してくれるかもしれん」
 その言葉を聞いた後、三人は敬礼して立ち去った。