二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.247 )
- 日時: 2011/02/24 17:26
- 名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: PdKBVByY)
3.
ダーマの塔。
かつて転職の儀式があったというだけあって中はなかなか神聖な雰囲気を感じさせられた。
しかしこうも魔物が多くては、神聖もへったくれもない。そして。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・なんでアンタまでいるんだ?」
ちゃっかり横にいる“六人目”変人スカリオもうっとうしい。
「何でって、来ないなんて一言も言ってないよ」
「来るとも言ってないだろっ」
「まぁ、細かいことは——」
「気にするわッ」
「ああ、ようやくボクに気を——」
「前言撤回、気にさわる!!」
・・・そんな妙にテンポのいい会話が生じた。
案内人・ロウ・アドネスは、先頭にいた。当然の如く、セリアスはその後ろである。
彼は向かってくる魔物にのみ対抗した。逃げ隠れする魔物には、手を出さない。
だが、その一撃の、重さ、鋭さ、正確さ。初老であることなど全く気にならなかった。
一瞬たりとも隙を見せない。代わりに、無駄のない行動をとる。
そんな彼の動きを、セリアスは糸でつながれたように見続けた。これが、バトルマスター・・・
(常にまわりを意識し、集中する・・・仲間を、守る為・・・に)
セリアスの中で、決意が固まってゆく。
ロウの強さに恐れをなしたのか、魔物たちは上階ではほとんど手を出してこなかった。
しんがりのスカリオを狙おうとする魔物もいたが、意外なことにそいつらは
スカリオの剣技の元に次々ひれ伏して行った。
(・・・へぇ、意外とやるんだ)
マルヴィナはその様子を見て、(ほんの少しだけ)認める。
そんなわけで、意外と早く塔の頂上に着く。それでも、そろそろ夕暮れる前であった。
「・・・誰もいない・・・よね」
シェナが嘆息しつつ呟く。「もしかして無駄骨だった?」
「いや」答えたのはロウだ。「こちらだ」
ロウが指し示したのは、明らかに場違いそうな、そこにぽつんと立つ大きな鏡である。
銀色だったのだろうその縁は、今や永の時を超えて灰色にくすんでいた。
「これは己の決意を表す鏡」説明する。
「転職はなまかな決意で出来るものではなかった。
その決意を認められた者のみ、この先の空間へ行けたのだ・・・だが」
ロウはそのまま呻く。シェナが首を傾げて、言った。
「・・・確かに、何らかの魔法的な力がかかっているみたいだけど・・・
どっちかというと、呪いの匂いがしませんか? ・・・これは、きっと別の入る方法があるはず」
「分かるのか。・・・だがあいにく私は、魔法的なものの知識はないのでな」
そりゃそーだバトルマスターなんだから、と声に出さずマルヴィナ。
「“光戦士”殿」
「ん?」
ロウの特別な名の呼び方に、反応したのはスカリオである。
「なんだい? ・・・てか、知ってたのか。ボクのこと」
「無論だ。・・・任せても良いだろうか」
「あぁ、いいよ。魔法はボクの専門だからね」
前に進み出るスカリオ。
「・・・・・・・・・“光戦士”・・・?」
「ボク自身の称号さ」
スカリオは至るところを観察しつつ答える。
「知らないのかい? 旅人や城の兵士などには、たいてい称号が付けられる。神殿でつけてもらえることもあるんだ。
世界広しと言えど、同じ名前の人はいるからね。
称号なら、よっぽどのことがない限り同じものは現れない・・・分かったよ」
スカリオは肩越しに振り返る。「行くかい? この先に」
「行く。当たり前だろ」
「ん。じゃあ、みんな、目を瞑ってくれ。——行くよ」
マルヴィナは、目を閉じた。
身体がかあっと熱くなる。重い風が、彼らをさらった。