二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.264 )
日時: 2011/03/08 15:19
名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: PdKBVByY)

    【 Ⅵ 】   欲望


     1.

「あぁ・・・お前か」
 両手両足を鎖につながれた、ネイビーブルーの羽を背に持つ男が、独り言を言うように呟いた。
無論、一人ではない。お前、と言われたもう一人、王族の装の男は、低くしゃがれた声を出す。
「・・・借りにもお前は囚人だ。余に向かっての発言に気をつけるんだな」
「ふん、お前こそ立場を理解するんだな。・・・で? 今度は何の用だ?
お前の依頼で蘇らせた者は・・・闇竜に、将軍三人に、兵士に・・・まだ何かを欲しているのか」
「・・・“蒼穹嚆矢”だ」
 囚人は、興味のなさそうな顔を少しあげた。
「・・・あぁ。あの、伝説の。・・・悪いが、そいつは出来ないな」
「何だと」
「彼女の力は強すぎる。おそらくその人物は、人間ではない。・・・少しばかり、長い時をかけるが・・・
その間、別の者は蘇らせられない。それでも構わないと言うか」
 皇帝は、ちっ、と舌打ちした。相変わらず、癪にさわる物言いをする。
「・・・お前が女神の果実を集めきれば・・・私の力を増幅させられれば、簡単だとは、言っただろう。
・・・さて、いつになったら手に入ることか」
「黙——」
 れ、とまでは、言えなかった。
 皇帝の持つ杖の先の宝玉に、映像のように、どこかの景色がうつった。
 ・・・その中に、四人の影がある。
 一人は、銀髪と金色の眸持つ美しい容姿の娘。
 一人は、紅の髪をぼさぼさにした、勝気な青年。
 一人は、漆黒の少し長めの髪を風に躍らせる青年。
 一人は、闇髪と蒼海の眸の、手に黄金に輝く果実を持った——


「・・・・・っな・・・女神の、果実・・・!?」


 皇帝は叫ぶ。囚人が、くっ、と笑った。
「遅かったようだな。・・・どうすることか・・・」
「黙っていろ!」
 皇帝は囚人を黙らせ、その四人を食い入るように見る。
(こいつ、は——!)
「これは、あのイザヤールの、弟子ではないか・・・!」
 しかも、こっちは。いや、こっちは・・・
「ほう・・・奇遇なことだ。・・・さて、どうする、皇帝。
求めているのだろう、その果実を・・・それも、喉から手が出るほどに」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
 今度は、怒鳴りつけない。しばらく考えて——考え続けて——



「ふん」



 ・・・そして、短く邪笑った。

 杖の玉の中で、四人の若者が屈託なく笑う。が、その笑みがぐにゃり、と崩れ、



そして、一瞬にして、杖からフッ、と消えた・・・。