二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.284 )
日時: 2011/03/17 20:03
名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: fckezDFm)

 やはり珍しく、猛烈に怒ったシェナを残し、マルヴィナだけ(着替えも何も、旅装のまま寝ていた)が浜に出る。
が、尻をブッ叩かれた男は、いまだそこをさすりつつ、「何か用?」と聞き返すマルヴィナを睨めつけた。
「・・・何、じゃない。——あぁ、痛ぇ・・・急にこのオリガが、偉大なるぬしさまへの祈りをやめたいとか言い出した。
お前ら、何を吹き込んでくれた?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
 マルヴィナはすっと群衆を見渡した。村長、昨日の話好きの老人、宿屋の女将、若者たち、そして、オリガ。
 オリガは、今にも泣きそうに顔を歪め、おどおどとマルヴィナを見上げた。
マルヴィナは静かに、だがしっかりと怒りを込めて男を睨み返し、はっ、と笑った。
「まぁ、言ったことは言ったが、最終的に決めたのはわたしじゃない。
オリガは、前々からやめたがっていたみたいだけれど?」
「何だと?」
「わたしは、悩んでいたオリガに、助言をしただけ。あえて言うなら、わたしも間違っていると言い切る一人だが」
「旅人が、村の事情に口出すんじゃないよ!」
 宿屋の女将だ。マルヴィナはゆっくりと、そちらを向いた。瞳の奥の怒りに、女将はたじろぐ。
「・・・何が村の事情だ。結局はオリガを憐れむふりして利用して、楽しているだけじゃないか。
そのくせ、オリガにロクな食べ物も渡さない、魚をたんまりもらっているはずの大人が、盗みを犯してまで
まだ富を求める。こんなのは村の事情じゃない、人間の事情だ!」
「貴様」
 最初の男がいきり立ったが、マルヴィナの変わらぬ瞳の色に、結局何もできずにいる。
「小娘が・・・分かったようなことを」
「あぁ何だ、大人は分かっているとでもいうのか? 盗みは別にいいことで、人に苦労させてその人に
褒美はやらなくて良くて、自分さえ良ければ他人はどうでもいい、とでもこの村では教えているのか?
少なくとも、わたしはこの村で、そういうことを見てきたが」
 ぽんぽん出されるそれらの言葉に、大人たちは口ごもり、オリガはぱっと顔をほころばせる。
「マルヴィナさん・・・ありがとうございます・・・・・・かはっ!」
「黙ってなっ」
 若者の手が、小さなオリガの肩をつかみ、激しく揺さぶる。
「お前はただ祈ってりゃいいんだ」
「オリガに手を出すな!!」
 今日一番の大声が出る。マルヴィナは若者の手を叩き、止めに入ったが、何を思ってか、別の男が不意を狙って
マルヴィナのこめかみを突いた。
「ッ!?」
 頭がぐらり、と揺れ、さらに拳がマルヴィナの首を打ち据えた。起きたてで、
準備運動も何もしていなかったマルヴィナは、耐え切れず浜に膝をつき喘いだ。
「マルヴィナさんっ!!」
 解放され、ふらつきながらも、オリガはマルヴィナの名を呼び、駆け寄ろうとして・・・弾き飛ばされる。
ロクな食べ物も口にできない少女は軽い。軽く一メートル半の長さを飛ばされ、足をもつれさせた。
それを起こしてくれたのは村長だ。オリガはマルヴィナの助けを乞おうとして・・・さえぎられる。
「オリガよ、旅人の言うことなど、聞いてはいけない。お前はこの村の娘、誇り高き大海の神ぬしさまの
唯一の巫女なのだ。お前の使命は、祈ること、それだけではないか・・・むっ?」
 身勝手で、台詞めいた言葉を言ってのけた村長は、その時身体に揺れを感じた。
空の青をそのまま映したかのようなその蒼海から、闇夜の、漆黒の鉛を思わせる巨大な影が——

 否、海のヌシが、その瞳を赤く燃やし、姿を現した。







Chess:
   今後のストーリー構成上本来の村長のプライベートビーチ云々のアレはナシとしましたご了承くださいませませ。
      (セリアス: ませませって、さだま●しさんかっ