二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.340 )
- 日時: 2011/04/06 20:58
- 名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: fckezDFm)
風呂を出て着替え、服を洗濯し、シェナの長すぎる銀髪を乾かしている間。
「あれっ?」
マルヴィナは、一人の従業員に視点を合わせた。
綺麗な飴色の短い髪、化粧っ気のあまりないさっぱりした雰囲気の女性、マルヴィナはその人に声をかける。
「あのぉ・・・ひょっとして、ハイリーさん?」
いきなり名を呼んだ泊まり客に、従業員は驚き、頷いた。
「え、えぇ・・・あの、・・・何故?」
「やっぱり! ベクセリアで、町長サン家で、『お客様ですか?』って聞いてきた、
執事代理の、ハイリー・ミンテルさん・・・って」
「・・・・・・マルヴィナ。あなた一体何者?」
余計なほど覚えていたマルヴィナに半眼を向けるシェナ。
「・・・うん。わたしも、今思った」
(大抵あなたがこれほど覚えている相手って、怪しい人間のはずじゃ・・・)
マルヴィナはどこか疑わしい人物のことはよく覚えている。実際、黒騎士の馬の鳴き声、
ツォの魚窃盗未遂男、第一印象的に怪しかったらしいカラコタ橋のメダル(開き直ってそう呼ぶことにしている)を
今でもよく覚えているのだが、
(・・・ハイリーさんが、怪しい人物だって言うのかしら)
そういえば、初めて会ったベクセリア、そこで見た彼女の動きには素人らしくないものがあった。
それと関係あるのだろうか。・・・いや。
(・・・考えすぎか)
シェナは止めていた手でタオル越しに髪をぐしゃぐしゃにかき回し、髪の隙間から二人を見る。
どうやらハイリーもマルヴィナのことを思い出したらしい。二人は楽しそうに話していた。
やっぱり、考えすぎねとシェナは自嘲気味に笑った。
「それにしても、どうしてここに? ベクセリアで働いていたのに」
「あれは出稼ぎみたいなものです」ハイリーは笑う。
「生き別れた弟がここにいるって聞いたんです。・・・まぁ、とっくに親戚の家に行ってしまったみたいなんですけれど」
「そう、だったんだ・・・」
姉弟か、と思った。天使界に兄弟はほとんどいない。親は誰にもいない。
天使にとっての親は、創造神、創り、天使界に送る、全ての生命の父創造神グランゼニスだから。
「それで、今はここの宿で働いている、ということです」
「ここの人たち、感じも良いし、真面目そうだし、ハイリーさんにぴったりかもね」
シェナが髪をもてあそびながら笑った。
「あはは、私はそんな真面目じゃ——コホン。・・・従業員が礼儀正しいのは、以前町の中央のお屋敷で
働いていた、使用人たちだからですね。どうやら、一年前に、全員やめさせられたみたいなんですけど」
「やめさせられたぁ?」
マルヴィナ、復唱。「全員?」
「えぇ・・・お屋敷のマキナさまに、そうおっしゃられたと」
「じゃあ、何? マキナって、今、あの屋敷に・・・一人暮らししているってこと?」
ハイリーの答えは、肯定だった。
「一年前、病弱だったマキナさまのご病気が、ある万病に効くという果実のおかげで治ったということでして。
でも、それ以来、どことなくマキナさまは変わられたみたいだと、おっしゃっていました」
そうなんだ、と頷こうとしたマルヴィナ&シェナ、その視線を素早くばっちり合わせ、
同時に「「果実って!?」」とすごい勢いで尋ねる。
「は、はい? い、いえ、よくは存じませんが、手の平にしっかりと乗るような、
大きな金色の果物だったそうです」
金色の果物——! マルヴィナは叫びそうになったが、何とか抑えた。もしかしてこんなのか!? と、
実際に集めた三つの果実を見せてやりたかったが、さすがにそうするとこの町の長の、[あのオヤジ]に
目をつけられそうなので、行動に移すわけにはいかなかった。第一、今は部屋の中である。
それにしても、どこへ行っても果実がすんなり手に入らない。行く先行く先、狙ったように果実が
[あった]ということが、唯一の救いではあったが。
「でも、やっぱり、マキナさまのことが、心配になってしまうんです」
ハイリーは深々と、ため息をつく。
「何でも人にあげてしまうから・・・だから、欲望だらけの町の人に、いいように使われてしまうんです」