二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.344 )
- 日時: 2011/04/12 20:10
- 名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: fckezDFm)
シェナは一人、部屋の外のベランダで夜風にあたっていた。ほてった頬を風が撫でていく。
(懐かしいな。この町)
眠り始めるにはまだ早い夜、民家や酒場から、人々の笑い声が聞こえた。
シェナは目を閉じる。この町は、[あの日]を迎えてから、初めて来た町だった。
私が目覚めてから、初めて来——
「あれっシェナ?」
と、いきなり自分を呼ぶ声がする。びくんっ! と体が大きくはね、勢いよく振り返ると、そこにキルガがいる。
「な、あ、き、キルガっ?」
「どうしたんだ? こんなところで、風邪ひかないか・・・って、そんなわけないか」
[天使が]風邪をひくなんてありえないのだが、それよりもシェナは自分の今の反応の不自然さを
彼に気付かれなかった(あるいは気にされなかった)事が重要であった。助かった、と思った。
「ええ。大丈夫。・・・マルヴィナなら、あっちのベランダよ」
「あ、そっちか。——いやいや、訊いてない訊いてない」
キルガが納得してから、あわてて否定する。が、最初に言った言葉は明らかに本音である。
その様子にシェナはいつもの調子を取り戻し、
「はい、無理しない」
と言ってやる。当然返す言葉のないキルガ、シェナに「いってらっしゃい」と見送られ、
溜め息をついていることがまるわかりな足取りでその場から立ち去る(と言いながら向きはマルヴィナのいる方)。
だが、真っ先にあったのはマルヴィナではなく、サンディであった。
「やぁぁぁぁっと見つけた——っ! マジ探したんだからーっ!」
探されていたのはこっちなのか、と胸中で突っ込みつつ、
キルガはとりあえず「・・・サンディ」と名を呼んでおいた。
「あれ、キルガじゃん。マルヴィナかと思った」
「・・・サンディ、視力は?」
「両眼5.0」
「どんなんだ・・・? どう考えても見た目に無理があるだろう」
というキルガの正論は、当然ながらサンディを凹ます材料にはならないのだが。
ともかくマルヴィナを探していたらしい彼女に、マルヴィナならあっちのベランダだと、
シェナ情報をそのまま伝える。が、彼女はいるならイイ、とあっさりした答えを返し、そのままくるんと回る。
「とっこっろっでぇ〜、このアタシ見て、な〜んか気付くことナイ〜?」
「あぁ、コサージュか?」
「分かってんなら先に言いなさいヨっ!!」
サンディがいつも髪を飾っているコサージュである。が、今は恐ろしいほどに色鮮やかな
強烈ピンクの派手な花に変わっている。なんだかどこかで見たことがあるような気がしたが、
それにしてもサンディの好みにぴったりあった花だな、と思った。見ているだけで目を覚ましそうである。
「どうしたんだ? それ」
「ふっふ〜ん。フラショに売ってた〜」
「・・・ふらしょ?」
考えること四秒、フラワーショップの略であることに気付いたが・・・
何でも略せばいいというものでもないような。
それよりもキルガが意見を付けたのは、
「つまり万引き?」
ということである。サンディは即答で反論をする。
「人聞き悪っ! フツーに、んー、まぁもらった的な?」
「イコール万引きだな」
当然キルガも突っ込む。
サンディがぷううううっ、と頬を膨らませ、苦笑してキルガがもう一言何かを言おうとしたとき、
「あれ、キルガ、何やってんだ?」
という、捜していた人物の声が後ろからして、頭の上に何かが乗っていたら確実に吹っ飛ぶような勢いで
キルガは慌て振り返った。
その様子にマルヴィナは驚き、目をしばたたかせる。
「・・・何?」
「あ、いや・・・驚いた」
何ともそのまんまな感想に、マルヴィナはあそ、と気の抜けた返事をする。
サンディがマルヴィナの姿を確認し、シェナのいる方向へ行き、そしてマルヴィナは逆方向、
つまりキルガの方向へ歩いて行って、そのままその横を、・・・通り過ぎる。
「ま、いいや。おやすみ」
「・・・は? あの、マルヴィナ」
「あー眠・・・今日は寝られそう・・・じゃ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
一人残されたキルガを、シェナはもちろん笑いをこらえながら眺めていたりする。
・・・ちなみに、セリアスはとっくに寝たらしかった。