二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.478 )
日時: 2011/11/08 22:28
名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: EetYfsjv)

       2.



 マルヴィナは、ずっと考え込んでいた。
口数が少ない彼女に戸惑いながらも、三人は割といつもの調子で草原を進んだ。

 翌日の話である。
ナムジンの協力者となれた四人は、ナムジンの話を聞き、そして現在、行動に移している。
彼が言うには、シャルマナの正体を暴ける何かさえあれば、草原の民たちで総がかりで倒せるのではないか、と
いうようなことだった。
だが、その『何か』がなかったために、いろいろな討伐方法を考えていたとも。
が、草原の民ではない、自由ある旅人がいれば、話は変わってくる。その『何か』を、
もしかしたら手に入れられるのではないかと。
「いや簡単に言ってくれるな。まずどこにあるかが分からん」
 セリアスはそう言ったが、やらないわけにはいかない。
そろそろ時間がまずいからとナムジンが狩人の包に戻った後、四人はそこに残ってそろって唸っていたのだが、
そこに姿を現したのは——霊体であるナムジンの母パルであった。
 彼女は助言をくれた。正体を暴く『何か』——それは、この辺りの地にあると。

 ——ここから東、パルの故郷、及び魔物に滅ぼされた洞窟の中の村カズチャ。
その奥に生える守り神ならぬ守り草を、彼らは名の通り、アバキ草、と呼んでいた。
 邪悪の正体を明るみにする、魔法的な力を持つものである。
それさえ手に入れることが出来れば、シャルマナというもの——その果実を喰らった魔物の偽の姿を解ける。
彼女は、そう言ったのである。
 ・・・もちろんここで四人が思ったのは、やっぱりあったんじゃないかしらっとした顔で「知らん」など
言いやがって——類のことではあったのだが。



「・・・マルヴィナ。どうしたの?」
 遂にシェナが、問う。マルヴィナは視線を上げ、何が? と問い返した。
「何がじゃないわよ。何か、マルヴィナが静かだと、調子狂っちゃうんだけど」
「そんなこと言わ——ちょっとそれどういう意味だ?」
「うん、いつもの調子は機能しているみたいね」シェナは頷き、で、何か悩んでいるの? と聞く。
「いや、そうじゃなくて・・・うん。果実のこと、考えていてさ」
「果実」拍子抜けしたように、言う。
「・・・ここで入手できたら、六つ目だろ? で——七つ目は、一体どこにあるんだろうって思って。
ほら、今まで、あまりにもいい調子で見つけてきただろ? まだまだ世界は広いのに・・・最後の一つを探すのに、
時間がかかるんじゃないかって思っちゃってさ」
 確かにそのとおりである。が、それは今言っても仕方のないことだ。
それよりも重要なのは——見つかった時、である。
「まぁ、仮に手に入れることができたとして——七つ、揃ったとして。その時、一体何が起こるのか——心配なんだ。
言い伝えが本当なら、天使は神の国へ戻れる。けれど——わたしたちは? 翼も光輪もないわたしたちは、
一体どうなるんだ?」

 彼らの中に、沈黙が落ちる。そういえば、考えてもいなかった。
けれど、何故考えていなかったんだと言われるほど、単純かつ重要なことである。
 誰も何も言えず、しばらく沈黙が続いた。マルヴィナはその空気に焦り、最終的にゴメン、と慌て口調で謝る。
「いま、考えるべきことじゃないな。ゴメン、雰囲気暗くしちゃって。えっと・・・うん、・・・・・・・」
 気の利いた言葉が思いつかず、やはり結局黙った。
それでも昼頃になると、ようやく普段と同じようなテンションとなったのだが、
マルヴィナの言ったその言葉を忘れることはできなかった——・・・。