二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.534 )
- 日時: 2012/08/15 11:39
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: bkovp2sD)
「マルヴィナ」
最後に学校内を見ておきたくて、夕方、マルヴィナは一人校舎を歩き回っていた。
彼女がいた教室の前の廊下を通った時、その部屋の中から呼び止められる——声の主は、もうわかる。
「あぁ、モザイオ」
マルヴィナは笑いかけた。初めて会った時の表情は、微塵も残っていなかった。
「その・・・しっかり、言っていなかったからな。その・・・えっと、・・・ありがとよ」
「・・・・・・・・・・・・・・」マルヴィナは目を一度ぱちくりとさせ、くすりと笑った。
「どうしたの? 急に。・・・熱でもある?」
「どういう意味だ? ・・・いやだから、・・・しっかり、言ってなかったから・・・」
「気にすんな。みんな無事で良かったよ」
ばっさりと言い、にっこり笑うマルヴィナの顔が、夕焼けで赤く染まる。モザイオは知らず内に、顔をそむけた。
「お前・・・本当は、ただの学生じゃないだろ。お前だけじゃない、・・・一緒にいた、キルガってやつも」
「うん」マルヴィナは隠すことなく、あっさりと肯定した。
「わたしたちは・・・旅人だ。今回、探偵と間違われて、誘拐騒動を調べていた」
「そんなこと知らず色々、悪かったな」
「ちょっと、どうしたの? いきなり。この数日わたしが見てきたモザイオは、そんな性格じゃないはずだろ?」
マルヴィナは髪を耳にかけて、モザイオを改めて見る。モザイオは慌てて、話を逸らした。
「明日、発つのか」
「うん。・・・帰らなければならない場所がある。だから・・・今日でみんなともお別れだな」
モザイオは黙った。まだ、認めてそんなに時間がたっていないのに。
それはなんだか、長年の友を失ったような感覚だった。
「えっと・・・その、だな・・・」
モザイオは何故か若干混乱しつつ、思ったことをぱっと口に出してしまった。
「お、俺さ——」
夕焼けに染まる、教室前の廊下で。
彼は、言った。
「俺、この学校、変えてやろうかなって、思ったんだ。あの初代が、こんな俺にも目をかけてくれたからよ。
・・・ちょっとこさ、その恩返しみたいな・・・その」
言いたいことがまとまらず、一気にしゃべった。だが、マルヴィナはあっさり、本当にあっさりと、言った。
「頑張れ」と——
できるとも、できないとも言わない、ただ、頑張れと。
その言葉は、今まで言われてきたどんな言葉よりも、力があるように思えた。
マルヴィナが手を差し出す。モザイオは戸惑ったようにそれを見て——そして、その握手に応じた。
マルヴィナがニッと歯を見せて笑う。モザイオは慌てるようにその手を離し、
やり場に困って結局ズボンのポケットの中に突っ込んだ。
そして、少しだけ距離をとる。そのまま、手を少し上げて——
「じゃあ——気を付けてな!」
叫んで、そのままマルヴィナの横をすり抜けて走って行った。
「あぁ、ありがとう」
マルヴィナの声を最後に聞いた彼の顔が赤かったのは、夕日だけのせいではなかった。
そんな青春を、
「ふふっ。キルガにライバル、とうじょーう」
シェナは陰からこっそりと眺めていたりする。
漆千音))まさかわたしがこんな話を書く時が来るとは((爆