二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.538 )
日時: 2012/08/15 19:51
名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: bkovp2sD)

 マイレナの表情がようやく、当初のものとなる。
『ごめ。話戻すか。・・・んとね・・・とりあえず、落ち着いて聞きなよ。
・・・マルヴィナが天使界から落ちた時、嫌な波動が襲ってきたっしょ』
 マイレナは一度ふっと天を仰ぐと、そのまま唇をほぼ動かさずに、早口に言った。

『・・・あれを放った者と、霊を甦らせている者は、同一人物だよ』



 雷が身体を走ったようだった。目は見開き、足はすくむ。
「・・・・・・・・・・・・ぅ」
 嘘だろ——思わず、言いかけた。もちろんこの状況で嘘をつかれたはずがないということは、分かっている。
だが、そう言いたくなるほどに、衝撃的過ぎたのだ。
 もう、何年前になる? ・・・天使たちの笑顔が、喜びが、ただその一撃で砕かれたあの瞬間。
あれで、どれだけの天使たちが行方不明になったのだろう——

「・・・・・・・・・・・・?」

 ふと、とある疑問が頭をかすめた。
だが、マイレナは、そのまま話を続ける。
『・・・正体は、今は知っちゃいけない。だけど——いつか知ることになる。
ただ、これだけは言っておくよ。・・・そいつは、マルヴィナに、深く関係している』
「なっ!!?」驚いてばかりだ。「わたしに・・・? どういう事なんだ、わたしに関係するって、一体何なんだよ」
『それは』マイレナは一度言葉を切る。
『ウチが言ったら、とんでもないことになる。・・・それは、自分で探り、自分で見つけること。
人から聞いたことは信じられなくなるところがある。でも。自分で見つけたことは、どんなに信じがたくても、
それが真実だってことで、信じなければならないからね』
 マイレナの少し難しい話に、マルヴィナは少なからず驚いた。そして、思う——この人は、本当に賢者なんだと。
『まぁ、まずは天の箱舟に戻りな。果実は、そろったんだからさ』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。本当に、分かるのか? いつか・・・それは近いのか?」
『わかるよ。遠いか近いかは・・・あんた次第かな』
 そういうなり、マイレナは少し消えかかる。・・・だが、彼女は。完全に消える前に——こういった。


『それに、どうせ戻れないから』——マルヴィナには、聞こえない声で。











 翌朝——
マルヴィナはセントシュタイン城に赴き、リッカと久々に会話した。もしかしたら、もう会えなくなるかもしれない。
だが、長居はかえって、辛さを仰いだ。マルヴィナは耐え切れなくなって、昼前には宿を出た。
「また来てね」——リッカの、何も知らない屈託のない笑顔を、少し寂しそうに受け止めながら。



 そしてその昼——アユルダーマ島、ダーマ神殿西、草花の生い茂る草原の中、
蒼い木の前——        (漆千音: なんで『青息』って出るんだ!!)
「シェナ、いいね。逃がさんぞ」
「・・・・・・・・・・・・・・」
 天使界へ[戻る]ことを、シェナは前回と同様に渋っていた。だが、マルヴィナの必死の説得で、
観念したのかどうにかここに立つまでに持ち込んだのだ。
「・・・で。結局、どーやって呼び戻すんだ?」
 いつかサンディは言っていた——箱舟が今蒼い木の所にないから果実は箱舟の中には入れられない。
じゃあどうやって帰るんだよ!! とセリアスが言ったところ、マルヴィナが「当てがある」と言い出したのだ。
前回まで、そんなことは言わなかったのに。
「で、何でマルヴィナが知っているんだ?」
 キルガの悪気ないぽつりとした意見に、
「あー・・・なんでだろうね? ウン」
 マルヴィナが何とも曖昧に答え、
「いやウンじゃないぞ」
 セリアスが手を上下にひらひら振ってツッコミを入れる。
そうこうしているうちに、マルヴィナは木の前に立ち、その堂々たる幹に手を触れさせる。
 マルヴィナが目を閉じる。途端、葉の蒼が、マルヴィナを包み込む! 
ない風に吹かれて、マルヴィナの髪が踊る。目を見張る三人と、黙ってそれを見るサンディの前で、
マルヴィナは唇を動かさず、厳かに言った——
「・・・神の創りし天空の舟よ。女神の力宿せし聖なる樹木の前に、今姿を現せ——」
 遠くから、甲高い汽笛の音が鳴り響く。キルガが、セリアスが、はっとする。黄金色の曲線を引きながら、
それは次第に姿を現した。
 女神の果実同様、優雅な金色を携えた、天の箱舟、まさにそれであった——・・・。