二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.572 )
- 日時: 2012/08/26 22:40
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: bkovp2sD)
日が昇り始め、キルガはたき火を消して砂をかける。マルヴィナは最終的に、眠りに行った。
もうそろそろマルヴィナが起き、シェナが起き、そしてセリアスは起きないだろう。
キルガはそのまま外で、明るくなった空を見上げた。
——聖騎士だ。
マルヴィナの一言を、思い出す。
聖騎士。大切な人を守る、博愛の騎士。
・・・けれど。守っているだけでは、駄目なのではないか。・・・そう、思い始めるようにもなった。
守り、という言葉に、縛られすぎているのではないか。
だから、いつまでも、動けないのではないか。
(・・・ならば)
ならば、どうすればいい?
キルガは目を細め、胡坐をかいた膝に腕をのせ、頬杖をつく。
(・・・たまには、自由に動いてみようか・・・提案しても、いいだろうか)
新天地で新たな連携を生み出すのは少々危険ではあった。だが、このままでは、本当に何も変わらない気がした。
やってみよう。キルガは、静かに決意する。
おはよう、と言って、マルヴィナとシェナが同時に出てくる。キルガも挨拶を返し、立ち上がった。
さて、起こすか。と、キルガはセリアスのいるテントに向かう。
今日のセリアスは、十八回の「起きろー」で目が覚めた。
「・・・空の英雄、だったか」
日は大分昇り、二つのテントを片付け、旅の再開準備を整え再び歩き出す。
「・・・空の英雄グレイナル——確か、ゲルニック、とかいう男が言っていたな・・・
ドミールに向かい、空の英雄を亡き者へ、と」
「うん。力を貸してもらうといいって・・・でも、急がないと、先に奴らに狙われる。早くしないと・・・あ」
そこでマルヴィナは、一つ思いつくことがあった。『空の英雄』。空。
“— ダメだ・・・空に関係する名前が入ることしか、分からない —”
・・・もしかして。
マルヴィナは、唇を結び、腰の銀河の剣に、そっと触れた。
「ドミール、・・・か」
シェナが呟いた。言いながら、その表情はまた、険しかった。
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうしよう)
思いはもちろん、誰にも気づかれはしなかったが。
四人の傷跡による血の匂いにひかれて度々襲い掛かってくる魔物をどうにかして退け、
四人が魔獣の洞窟に着いたのはそれからまた半日の後のことだった。
「・・・はぁっ・・・本当、遠かったな」
「魔物が、多かったからじゃ、ないかしら・・・う、ちょっとへとへと」
特にマルヴィナはやけに狙われていたし、シェナもきりがないと言って最後には魔法攻撃を連発したので、
かなりの疲労を伴いつつも歩いていた。
「封印を解いてもらったら、一度休もうぜ。この先何があるかわかんないし」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うぃ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あぃ」
マルヴィナとシェナはいずれも妙な言葉で了承し、キルガとセリアスは何とも微妙な笑顔で顔を見合わせた。
マルヴィナがラテーナの名を呼ぶと、彼女は驚いて振り返り、増えた人数にもう一度驚いた。
「あ、仲間だ。・・・それと、ごめん。遅くなった」
『遠いもの、仕方ないわ。・・・それに、待つのは、慣れているわ』
本人はフォローのつもりで言ったのだろうが、
その意味を知っているマルヴィナは、本当に申し訳なく思い、恐縮した。
『・・・じゃあ、封印を解くわよ』
ラテーナは言うなり、両手を胸の前で組む。何かに祈るように、しばらく静かに止まっていた。
そして——その声が、[響いた]。
「我はナザムに生まれし者。ドミールを目指すものに代わりて光の矢を求める」
その声は——確かに、響いたのだ。
[人に]、そして、[封印に]聞こえる——『声』として。
「——我の祈りに応えよ!」
ラテーナが叫んだ瞬間、入口に張られていた結界が、あまりにも呆気なく、いきなり消え去った。
当たり前のこととはいえ、一同はぽかんと口を開けてしまい、ラテーナはそれを見て笑う。
『・・・これで、いいかしら?』
声は、戻っていた。
「え、あ、うん。・・・ありがとうラテーナ、助かった」
『・・・えぇ。それじゃあ、わたしは行くわね。あの人を・・・』
ラテーナは一度目を細めると、四人をしかと見て、言った。
『————エルギオスを、探さないといけないから』
その言葉に反応したのは、三人——
[マルヴィナ以外]、三人だった。