二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 平助’sエピソード 〜薄桜鬼〜 ( No.21 )
日時: 2010/09/06 18:09
名前: 桜架 (ID: q9W3Aa/j)

エピソード参『伝えられない・伝えたい』


〜平助side〜




角屋(島原の店)を出て、ただひたすら走り続けた。
そして、曲がり角を曲がったとき、思わず目を見開いた。


俺の中で、何かがプツンと切れた音がした。
なんだ、これ。胸が引き裂かれたように苦しくて、痛い。
胸を片手で強く鷲掴みながら、目の前の光景に息を呑む。


なあ、千鶴。・・・覚えてるか?
俺がお前に約束したこと・・・・———




目の前の光景、左之さんの隣で見覚えのある・・・
いや、絶対に見間違えたりしない。——俺の好きな人、千鶴が女の格好をしていた。


「・・・・ち、づる」


かすれる声。これでも大きな声を出した。
腹の底から。

すると、その声が聞こえたのか、千鶴は反射的に俺のほうを見た。

まるで、——なんでいるの?

とでも言っているような表情で・・・——



「へ、すけ・・・君?」



引きつった顔で俺の名を呼ぶ。
そんな顔で俺の名前を呼ぶなよ・・・。
いつもの、優しい笑顔で『平助君!』て呼んで欲しかった。

俺はひとりでに泣きそうな顔で呟いた。


「ごめん、・・・邪魔したよな」

「・・・ちがっ?!」


言い訳はいいよ。もうわかってるから。
俺は無理に笑顔を作って、


「約束・・・・、俺だけか。・・・覚えてたの」



千鶴は何も言わなかった。
左之さんは俺たちの成り行きを見ているようだ。
・・・・邪魔者か。


「じゃぁ・・・な」

「——平助君!!」


俺はその場を駆け出していた。
ほとんど何を言ったか覚えていなかった。

ただ、わかっていたことは
千鶴が泣いていたことだけだった——