二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 平助’sエピソード 〜薄桜鬼〜 ( No.25 )
日時: 2010/09/10 19:56
名前: 桜架 (ID: q9W3Aa/j)

エピソード参『伝えられない・伝えたい』



〜平助side〜




あの日以来、千鶴とは会っていない。
屯所にいれば絶対に会うときがあるのに、会っていない。
飯の時間も一緒に居ないし、巡察だって一緒じゃなくなった。


あの日、自分で現実から目をそむけたのに、・・・・今更後悔してる自分がいる。
それがわかっているからこそ更に情けない。





・・・・今、お前に会いたいと思ってる自分がいる・・———







ある日・・・——



「平助」


呼ばれて振り返ると、そこには左之さんが立っていた。
正直、左之さんとは会いたくなかった。
俺は苦笑いを浮かべて「何?何かよう?」と言う。
左之さんは表情を変えず、ただ俺を無表情で見つめてから言葉を紡いだ。


「今日は全員で島原に行くらしい。土方さんからの命令だ」



土方さんからの命令?
なのになんで左之さんから俺に言うの?
疑問に思いながらも、俺は頷いてその場を後にした。


その日の夜、俺は巡察が会ったため、あとから合流することになっていた。
・・・・確かこの部屋だっけ?
一番奥の右部屋っていってたっけ?
俺はふすまを静かに開いた。


「悪い、巡察で遅れ・・——」



伏せていた瞳をあげると、いるはずのない人がいて、思わず言葉を失う。
俺は目を見開きながら、相手を頭のてっぺんから爪先までじっくりと見る。


「なんで、・・・・どうして」


・・・・・どうして千鶴がココにいるんだ?


「久しぶり、・・・平助君」



懐かしい声。懐かしい姿。
頬を少し赤らめながら優しく笑う。
髪の毛を触って、照れを隠すしぐさ。
・・・・俺の、俺の大好きな人———


集まっているはずの新撰組幹部たちがいない。
そういうことかよ、左之さん。
俺を騙したって訳ね。
昼間の左之さんとの会話を思い出す。
全部この為かよ・・・・・。

・・・・自分で確かめて来いっつーことか。




俺は深くため息を吐いてから、一歩足を進めた。