二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼〜恋情想起〜 ( No.86 )
日時: 2010/10/26 20:09
名前: 桜架 (ID: q9W3Aa/j)


エピソード六『町娘と隊士』





私は思わず浪士の前に飛び出してしまった。





「あなた方が京の治安を守っているのなら・・・・・
町の人を守るのが仕事でしょう?
なのに守るべき対象の者を傷つけるなんておかしいです!」


「なにっ・・・・?!」




私の言葉で顔をゆがませながら、浪士たちは一歩後ずさる。
だけどすぐに表情を戻し、一歩一歩、私に近づいてくる。



ここで退いたらダメ・・・・・。


私は身の危険に冷や汗をかきながらも、浪士たちを睨み続けた。

町の人たちは誰一人止めようとせず、ただなりゆきを見るばかり・・・・。



ザッと、浪士たちが目の前に来た。
・・・・・・どうしよう・・・っ、このままじゃ・・・・

浪士たちは私と後ろに居る店員を見て、不敵に微笑んだ。




———殺されちゃうっ?!





私は恐さのあまり目をきつく瞑った。
その刹那、
凛とした声が耳に響いた。




「おい、そいつらに手ぇ出してみろ・・・・」




その声は何処か冷えていて、怒りを感じさせた。
私はそっと、瞑っていた瞳を開けた。



目の前には緑色の着物を着た、小柄な男性が私達を庇うように立っていた。

・・・・・・だ、・・れ?



私はその光景に目を見開かせていた。




「なんだ貴様はっ・・・!」




一人の浪士がそう叫ぶと、隣の浪士が焦ったようにその浪士を引き止めた。



「ヤベぇって!こいつ、新撰組の藤堂だぜっ!!」

「——っな?!」

「その通り、オレは新撰組八番組組長、藤堂平助だ」




誠実に響くその声が、酷く頭に残る。
凛としたその姿に私は思わず見入ってしまった。

そして彼の名をゆっくりと・・・、呟いた。





「新撰組・・・・、藤堂・・・平助」








私はここで
平助君と出会った・・・・・———








今でもその思い出は、心の中に・・・・・・