二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 「崩壊協奏曲」 ( No.127 )
日時: 2010/10/30 21:57
名前: 空梨逢 ◆IiYNVS7nas (ID: pkkudMAq)

*~「崩壊協奏曲」~*


「楽しみアル〜!」
「ヅラ、俺いちごパフェな。いちごパフェ」
「貴様は黙れ」


 言い争う銀時達を尻目に、夢幻は黙々と歩く。基本食が細い彼女は、いつも桂の頼んだ物を分けてもらっていた。
 好き嫌いが基本無いのが今回は幸いした、と初めてこの特性に感謝する。

 夕日が眩しい。もうこんな時間になったのか、時間は早い……と目を細めて考える。そんな早さを私にくれれば良いのに。昔から足だけは遅いな、と父に言われた通り足が遅い私は早さが欲しい。

 ……突如、陽光が遮られた。続いてどんっ、と言う衝撃。

「あぁ?テメェ、何処見て歩いてんだよ!」


 見るからにガラの悪そうな男。天人の様で、頭だけはふさふさとした立派なたてがみを持った獣。片方だけ目が塞がり、もう一つの目でこちらを睨みつけてくる。やたらと長い牙が光る。

「お前、夢幻を放すアル!夢幻に触るんじゃないネ!」


 夢幻が絡まれているのに気付いた神楽が、夢幻の前に立ち塞がった。負けじと睨み返し、威勢の良い啖呵を切る。その横に新八と銀時が並び、桂と和月が夢幻の隣に立った。

「アンタ、天人?調子乗ってんじゃないよ。さっさと離れて!」

 和月の張り上げた声に、なんだなんだと人が集まって来る。あっという間に一同は取り囲まれ、好奇の目にさらされた。幸い、桂は笠を深く被っているため気付かれて居ないようだ。


「てめーら、俺の属してるとこ知ってんのか?俺の属してるとこ言ったら、何も言えなくなるぜ」
「言ってみろよバーカ」

 得意げに言った天人に銀時が言い返す。……刹那、夢幻は嫌な予感がした。寺子屋でさされる前に感じる様な、ぴりぴりした予感。気に止めない方が良い予感。

「俺の所属ぁな、——『春雨』ってーんだよ!」


 ぴりっ、て何かが弾けた。真っ白。


———『夢幻、お父さんね……』

止めて。

———『お父さん、殺されたの。もう帰って来ないの』

止めて、その続きを再生しないで。もう止めてよ。

———『春雨に、殺されたの』



止メテ……!!!


「てめー……!殺してやろうか!!」


 夢幻が目を開けると、天人が和月の首を締め上げていた。新八と神楽が必死に天人の腕にしがみつく。あまりの事に、夢幻の目が見開かれる。

 苦しそうな和月の顔。


 その瞬間、何かがぷつんっと切れた様な気がした。


——シャン!

「……和月から、手ェ離せ」

 紅色の髪と、紅色の瞳。別人の様に見開かれた瞳孔。そして、

———天人の首に突きつけられた刀。


 儚い声とはまるで違う、低く威圧する様な声で夢幻は天人に告げる。

「和月から、手、離せって言ってるんだよ!!」

 一条の光が走り、鋭い斬撃が天人の腕を襲う。神楽が、天人の腕を蹴り上げる。
 しゅっ、と音がして切れた自分の腕当てを見つめて天人は目を白黒させた。

 軽い音と共に夢幻が刀を鞘に戻す。



「む、夢幻、ちゃん……今の……」
「……え」

 怯えた様な目で見て来る野次馬と、驚愕の表情を貼付けた桂達。其れを見て、夢幻は哀しそうに笑った。

 本当に本当に、哀しそうな笑みだった。


(音はどんどん刻まれて、もう止める事は出来ないよ)


                    ———「崩壊協奏曲」