二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:「夢は消えた(幻の様に)」 ( No.167 )
日時: 2010/10/30 22:00
名前: 空梨逢 ◆IiYNVS7nas (ID: pkkudMAq)

*~「夢は消えた(幻の様に)」~*


 あの日——夢幻が姿を消した、あの日から。

「……うぅ」
「わふっ」

 神楽はほぼ毎日の様に定春にもたれかかって泣いていた。ポロポロと透明の粒が神楽の白い肌を伝い、定春の長い毛の間に消えて行く。
新八は俯いて掃除や雑用をこなしているが、いつもの様に楽しそうに仕事をしていないのは誰が見ても明かだった。
和月は冗談を言って皆を和ませようとするが、結果的に黙るばかり。人に弱み……悩みを見せまいと夜中にこっそり泣いているのを銀時だけが知っていた。

 そして、銀時と桂は。


 ピーンポーン……

 チャイムの音を聞くなり、神楽は立ち上がって玄関まで突っ走って行く。和月と新八も其れに続き、銀時はあくびをしながら玄関に向かった。

 神楽の期待した通り、扉を開けると其処には長髪をなびかせた桂の姿。


「ヅラ、どうアルカ」
「……情報は入った」

 夢幻の消えた日から、桂は攘夷党を招集して夢幻を捜索していた。良く桂にくっついて党の会合に来ていた夢幻は、攘夷志士達にも人気があったのである。

ぱっと顔を輝かせた神楽に対し、桂は疲れた様に言う。

「すまないリーダー、良い情報では決して無いんだ……」


 いつもの決まり文句である「ヅラじゃない、桂だ」と言う台詞も返さない。
何日かですっかりやつれてしまった桂は、銀時の方を意味ありげに見やる。その視線に気付き、銀時は顔をしかめた。

「ヅラ、そりゃまさか……」
「……ああ、そうだ」

 被っている笠を少しずらし、桂は静かに告げる。


「……停泊していた戦艦に、青い長髪の少女が乗り込んだのを見た奴が居るらしい」
「っ……でも!それだけじゃ夢幻ちゃんとは……っ」

 言いかけた和月を遮り、桂はさらに告げた。

「……その少女、戦艦に乗る際に『夢幻』と名乗ったとか」


 部屋は、痛い程の静寂に包まれた。


(何処へ行ったかワカラナイ)


               ———「夢は消えた(幻の様に)」