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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 「ぬくもり」 ( No.27 )
- 日時: 2010/10/30 21:48
- 名前: 空梨逢 ◆IiYNVS7nas (ID: pkkudMAq)
*~「ぬくもり」~*
木で出来た簡素な机。その上には、湯気を上げている薄青の湯呑みが置いてある。少女は、ぼんやりとした目でそれを見つめていた。
「……どうした?遠慮はいらん。飲まないのか?」
少女を見ながら、桂が不思議そうに問う。少女は手を伸ばし、引っ込め……を三回程繰り返し、おどおどとした瞳で桂を見つめた。
その少女を再度見やり、桂はある事に気付く。
「貴様……じゃないな。名はなんと言う?」
そう言えば名を聞いていなかった、と思い桂は苦笑した。まぁ、こんな自分に名前など教えてくれないと思うが。なにしろ自分は指名手配されているのだから仕様がない。
その予想を裏切り、少女はぽつりと言葉を紡ぐ。
「……む、夢幻」
「ほう。良い名だ」
少し驚いた後ふわりと微笑み、桂は椅子に座った。自分の分の茶を啜り、もう一回夢幻に茶を勧める。
夢幻は恐る恐る湯呑みに口を付け、こくりと一口茶を飲んだ。
「おいしい……!」
ぱあっ、と広がった笑顔。それを見ながら、桂は一つ質問をした。
「それはそうと……。夢幻、そなた先程は髪色が藍色だったが今は橙になっているのだが」
何故?と聞く前に夢幻の表情が凍った。ゆっくりと首を振り、泣きそうな表情をする。咄嗟に桂は夢幻の肩に手を置いた。
「無理して答えなくても良い。……俺が悪かった。すまない」
自分にも髪色の事で悩んでいた友人が居る事から、桂は夢幻の気持ちが少しは理解出来た。ほっとした表情に戻り、夢幻は嬉しそうに肩に置かれた手をぎゅっと握る。
「ありが、と……」
(出してくれたお茶と同じ位、貴方は温かかった)
———「ぬくもり」
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