二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: FINAL FANTASYⅦ 第 一 章 〜反旗〜 ( No.118 )
- 日時: 2011/01/06 23:22
- 名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)
第一章 Capter 23 —飛空挺シエラ号—
飛空挺が飛ぶ。
切るようにして通り過ぎた風は、甲板に乗っている人々の体に、顔に頬に、強くぶつかってくる。
エアリスは甲板に上がってすぐ、手すりに近づいて、見る見る遠ざかるミッドガルを見送っていた。
心残りは無い。
母さんの死んじゃった場所だし、自然を感じない場所だから。
でも、それが逆に心にひっかかっているのかも知れなかった。
何より、育ててくれたお母さんにも何も告げれなかった。
そのうち、戻ってこよう。
そして、クラウドを紹介しよう。
「お母さん。ただいま。見て、わたし、ボーイフレンド、できたのよ」
そう伝える自分の姿が目に浮かぶ。
記憶の中のお母さんは、やわらかく微笑む。
知らずに流した涙は、強い風が乱暴にさらいとって行ってしまった。
鉄の甲板は歩くたびカンカンと音を立てる。
エアリスは強い風の吹く甲板から質素な階段で降りて、鉄の内装をした飛空挺の中へ入っていった。
錆びた鉄のにおい、オイルのにおい。
かいだことは無いような、なつかしいような。
「エアリス!大丈夫?怪我は無い?」
「うん。おかげさまで。ありがと、ティファ」
金網の通路の上で待っていてくれたティファに、エアリスは笑顔でそう答えた。
通路の先には、外を見ることができるガラス張りの部分のある操縦室に出る。
そこには数人の、青い服を着た船員たち。
当然のことながらそこにはザックスや、クラウド、Red ⅩⅢもいた。
そして伝説のパイロット、シド。
アバランチのリーダーだと言うバレットもいた。
「よっす、エアリス。やっと降りてきたか。上じゃ寒くなかった?」
「うん、だいじょぶ。わたし、意外と寒さには強いのよ?」
ザックスの心配の言葉に、エアリスは得意げにそういう。
とは言ってもそこまで体が丈夫なわけではない。
エアリスは喘息持ちだし、酒には弱いし。
寒さに強いのは、彼女が北国の生まれであるためだった。
「・・・でよぉ。あんた、何モンだ?なんであんなとこに」
エアリスは一瞬躊躇する。
しかしそんな彼女を見かねて、ザックスが頷く。
「話すと、随分長いけど・・・」
古代種の母、自分のこと。
教会で育てた花を売っていたこと。
数年後、神羅に再び捕えられてしまったこと。
実験に耐えてきたこと。
そして、学園での生活。
「そうか!」
いきなり、話し終えたエアリスにバレットは叫ぶ。
全員、何事かと彼のほうを向く。
「うちの娘のマリンがよ、・・・まだこ〜んなにちっせぇんだ・・・一時迷子んなってな、いつもの教会の『お姉ちゃん』に、スラムの盗賊にさらわれそうになったときかくまってもらったって・・・。しまいにゃ、送ってもらったとまで言ってたんだが、あんただったか!」
「え?あのときの子の、お父さんだったの!?バレットさんが!?」
へへへ、とバレットはくすぐったそうに鼻の下をこすって笑う。
クラウドがすかさず「なんだよ、気持ち悪いな」と言ったが、バレットは聞こえなかったのか言葉を発する。
「よせよ、『さん』なんてのはよ。俺のガラじゃねぇ。いや、ありがとうよ。あんときはマリンがいなくなって、大騒ぎだったんだ」
「へー。バレットもありがとうなんて言うのね。なんか変な感じ」
ティファが笑う。
バレットは上機嫌になったのか、そうか?と笑っている。
いつもはいざこざの耐えないとこなのに、エアリスがいるだけでこんなに変わるものなのか。
クラウドはいつもより数倍機嫌のいいバレットを見て、そう思った。