二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: FINAL FANTASYⅦ—序章—   コメント下さい!! ( No.94 )
日時: 2010/12/24 22:51
名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)

   Capter ⅩⅧ —絶滅危惧種—

                           *Aerith Side*

                           実験室。

狂ってる。
物心つく前から、漠然と抱いていた気持ち。
目でわかる。
その人がどんな人かくらい。
わたしと、実験機具を見る目、いっしょだった———。
普通の感情もって人に接してる人、そんな目 しない。

「ふむ・・・」

狂った科学者、宝条。
今彼は、エアリスをガラスの透明なケースに閉じ込め、身体検査を行っていた。
隣にも同じようなケースがある。でも人サイズじゃない。
そのケースの中にいるものの高さはエアリスの腰くらいしかない。
中にいるのは、燃えるような赤い毛並み、そして尾の先が燃えている狼のような風貌をした動物だった。

「おい」

エアリスは、自分に話しかけられている、ということに気づくまで数秒かかった。
ああ、わたしに話しかけていたのね。
そう思い、隣のケースから目を離して宝条を見やる。

「なんですか」

少々ぶっきらぼうに返答する。
しかし宝条はその態度が気に触った様子もなく、普通に続ける。

「最近、心境に変化が・・・。あった、ようだが?」

品定めをするように、立っているエアリスの頭のてっぺんからつま先までを眺める。
エアリスは、強い嫌悪と不快感を覚えた。
だいたい、そんなことしても心の中までは見えないでしょ、と思いつつ体勢を変える。
だいたい、こんな人に教えるわけ、ない。

「心境の変化、ですって?そういう個人的なところにまで、科学者さんって踏み込むのかしら」

「私は知る必要があるのだよ。ガストのような生ぬるい科学者と違ってね———んん?失礼したな。お前の父親だった男だが?」

エアリスは軽く眉根を寄せる。
違う。わたしの、父さんは———。

「父さんは、気づいたのよ。踏み外しちゃいけないって。自分の科学者としての実験に、命を軽く扱うなんてこと、だめだって・・・」

「私に口答えすると、痛い目に会うだけだぞ?」

宝条が楽しそうに口の端をゆがめた。
その顔は見た人がぞっとするような冷酷さをたたえていた。

「このケース、その首輪・・・。誰の開発したものだと思っている?私の自由に、お前達サンプルを扱うためのものだ」

「わたし、サンプルじゃない!ちゃんと名前、もってる」

「ふん。大人しく言いなりになっていればよいものを」

クックック、と笑っていた宝条はそういうと一気に冷酷な表情をあらわにした。
コントロールパネルをカタカタといじり、赤い四角のボタンを押す。

「—————っ!!?きゃぁあああああっ!?」

エアリスの体に、強い電撃がほとばしる。
ケースの四隅、そして彼女の首につけられた首輪から発せられたものだった。
やがて力尽きて、ガラスケースにもたれかかると、ずるり、とそのまま下にずり落ちる。

「わかったか。これが科学のなせる業・・・。すばらしい」

宝条はまたくくっと笑う。
エアリスは息荒く、胸を押さえていた。
いつか、この狂った科学者に散々こき使われた挙句に死んでしまうのだろうか。
目を閉じて、彼のことを思った。

———助けに、来てくれるよね。約束、したもんね。

うつろに開いた目線の先に、あの赤い獣がいた。
さっきは気づかなかったラベルを発見する。
『Red ⅩⅢ』
絶滅危惧種、と書かれていた。
そうか。わたしと同じ、被害者なんだね・・・。
Red ⅩⅢの顔が瞳に映る。
なにか、しゃべってる・・・?

“今は、ダメだ。時を、待て。死んではいけない”

口の動きからして、そう言っているのだと理解した。
時・・・?
震える口でそうつぶやく。
Red ⅩⅢはうなずくと、背を向けた。
炎のともった尾は、ゆっくりと揺れ動いていた。