二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: REBORN!短編小説をダラダラ【参照100突破!!】 ( No.38 )
日時: 2010/10/04 19:49
名前: ひろ ◆j6drxNgx9M (ID: E616B4Au)

わりと普通の少年だったなと、今更ながら自分でも感心してしまう。
優しい父と母。
そんな2人を慕っていた、笑顔の絶えなかったあの頃の自分———
もう、あの頃のような心に戻れないのだろうか?
そう思っていた矢先だった。
彼に出会い、本当に少しだけあのころを取り戻せた。
でも、あのような事が無ければ、きっと自分は今も朗らかに笑っていた事だろう。
———何が、自分の世界を変えてしまったのだろう・・・


—10年前 イタリア—


「じゃーまたな!むくろ!!」
「はい、また明日!!」
友達と遊び終え、満足げな顔で家へと帰宅する少年———六道骸。
彼はとても繊細な心の持ち主だった。
青い絹のような髪の毛は頭の上で結わえられていて、例えるならばそう、南国果実のパイナップル。
母の趣味なのだが、骸はとても気に入っていた。
左の瞳は透き通るような碧眼。
ただ、右の瞳にはまるで隠すように白い、真っ白な眼帯が付けられていた。
体は華奢で、同学年の少年が腕を強く握っただけで折れてしまいそうなほどだった。
それでも、骸は幸せだった。
こんな素晴らしい世界が終わってしまわぬよう、毎日大空に祈りをかけた。


「———ただ今帰りました!」
バンと玄関のドアを勢い良く開け放つ。
すると奥から母がひょっこりと顔を覗かせた。
「お帰りなさい骸。ドアは静かに閉めなさい?」
「あ、ごめんなさい」
骸はしっかりドアに鍵をかける。
母は骸とは対照的に、薄い水色の髪に赤い瞳の持ち主だった。
敬語が基本なので、骸の性格は母似とよく近所付き合いの方々に言われる。
「今日はひさしぶりに家族全員集まりましたね」
「えっ!」
母の言葉に、骸は急いでリビングへと駆け寄る。
そこに居たのは———

「父さん!!」

「お、骸」
父が本から顔を上げ、ニッコリと微笑む。
父の髪と瞳は骸とまったく同じだったが、髪型は普通の男性よりも少し長めだった。
骸は父似だった。
父は骸の髪型を見て苦笑した。
「おい、骸の髪型もう変えてやったらどうだ??流石にもう5歳だぞ」
「実は骸が気に入って・・・」
母はそう言ってるが、どこか嬉しそうだ。
次に父は骸の右目を見て顔をしかめた。
「・・・骸、取ってもいいか?」
「はい」
父がスッと骸の右目の眼帯を取った。

———右目は左目と対照的に、母の持つ真っ赤な瞳を骸は湛えていた。

そこには“六”という文字も浮かび上がっている。
父はため息を付きながら母に言った。
「・・・どうにもならないのか」
「はい・・・」
何故母と父がガッカリしているのか、骸には理解しきれなかった。
偉大なる父の持っている瞳と、大いなる母が持つ瞳。
更には六道の“六”の文字まで浮かび上がっている。
これ以上幸せな事はあるのだろうか??
この2人の子供、ということが、これ以上理解できる物はあるのだろうか??
「僕は別に構いません。・・・逆にとっても嬉しいです!」
骸は2人にニコッと笑いかける。
すると2人は本当に嬉しそうに、そしてまた悲しそうに笑った。
「ありがとう、骸」
「そういって頂けるだけで、私達はとっても嬉しいですよ」

ほんとの事なのに。

そう思ったが、骸はただ微笑んだ。
2人が笑顔を溢れさせている。
それだけで、今はいいと骸は幼くして納得した。


(・・・フコウノアシオト、イラッシャイ・・・)