二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: リボーン 神様のドルチェ【300突破ありがとうございます!】 ( No.84 )
- 日時: 2010/10/19 19:56
- 名前: 無花果 ◆j6drxNgx9M (ID: 2Sdxx4yv)
プロローグ
———雨が降っていた。
正確に言えば、降っていたのかもしれない。
しかしそんな事は今の自分にとってはどうでもいい事だった。
少女は自分の手の中に納まっている1つの箱を見た。
雨で濡れていて良く見えないが、何やら貝の文様が刻まれていた。
下の方には“VONGOLA”とも刻まれていた。
何て読むんだろう・・・。
ぼんやりとそんな事を思いながら、コロコロと箱を転がす。
7歳だ。
読めなくて仕方あるまい。
これは自分の誕生日———ついさっき、家の門の前で拾った品物だった。
銀色の、とても綺麗な物だったため、嬉しくて父に見せに行ったらどうやら父が落としてしまっていた物らしく、取られそうになった所を慌てて逃げてきたのだ。
その挙句、傘を忘れてしまう始末だ。
ふと箱に触っていると、窪みがあることに気がついた。
中指の先が少し入るくらいの窪み。
ビー玉が丁度安定しそうだ。
そしてハッ、としてまた文様を見る。
「———ぶい、おー、えぬ、じー、おー、える、えー」
ゆっくりと、口にしてみる。
『VONGOLA(ボンゴレ)』
父が書類を見ながら言っていた言葉。
「ぼん、ごれ・・・。ぼんごれ、ボンゴレ・・・ボンゴレ・・・」
幼い脳内を駆け巡る沢山の単語。
『ボンゴレ匣』
父が感嘆しながら言ったこの言葉。
「———ボンゴレ匣!」
そうだ、これだ!
父が大切そうに持っていたのは、これだった!!
しかし、どうしてこれが門の前に落ちてあったのか?
———いや、“置いてあった”のだ。
綺麗に、きちんと、丁寧に置いてあったのだ。
「・・・?」
気配を感じ、少女は前を見つめる。
そこにいたのは、紫の少女。
髪が長く、ストレートで、自分の栗色のセミロングとは正反対の少女。
「———誰??」
自分でも、吃驚した。
親しい間柄じゃなければ自分から話さないほどの人見知りの激しい自分が、自分から他人に話しかけているのだから。
紫の少女はゆっくりとこちらを向いた。
予想通り、丸い瞳も綺麗な紫色だった。
あまりにも綺麗だったため、自分の黄色く濁ったような黒い瞳を隠したくなる。
紫の少女は紫の丸い瞳を更に丸くして、ぽつりと呟いた。
「・・・綺麗」
「・・・?」
何が?、という前に紫の少女はスッと少女の黄色黒い瞳を指差した。
「・・・琥珀みたいで、綺麗。・・・名前は何ていうの?」
「・・・え、あ、春」
綺麗と言われたのが初めてだったため、思わず少女———春は戸惑った。
紫の少女はニコッと儚げな、今にも消えてしまいそうな笑顔をして言った。
「春・・・、暖かそうな名前」
春はとても恥ずかしかったが、勇気を出して、紫の少女に問うた。
「あ、貴女、は?」
「私は———」
・・・そこまでが、彼女の遠い昔の記憶。