二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: リボーン 神様のドルチェ【300突破ありがとうございます!】 ( No.85 )
- 日時: 2010/10/20 20:47
- 名前: 無花果 ◆j6drxNgx9M (ID: 2Sdxx4yv)
第一弾「若き当主」
ブォンッ!
銀色の光がぶわりと溢れ出す。
1人の少女を中心に溢れ出している様だ。
栗色のセミロングが気持ちよさそうに靡く。
銀色の光は1本の線になり、少女の右手に納まる。
———それはまるで、ユニコーンの角のようだった。
少女はそれを剣のように構えると、
「やぁああああああああっ!!」
怒声を響かせながら何かに突進していった。
それは、“彼女自身”。
偽者の“彼女”も少女と同じ物を手にしていた。
少女は物凄いスピードで“彼女”との距離を詰めていく。
しかし“彼女”も負けてはいない。
少女と“彼女”の剣のような物が触れ合うかと思われたその時、“彼女”が少女よりも先にそれを薙ぎ払った。
瞬間、少女は真上に飛んだ。
“彼女”はすぐにターゲットを真上に切り替えたが、少女よりも動きが鈍かった。
少女はくるりと空中で一回転すると、“彼女”に向けて剣の様な物を振り下ろした。
ズパッ!
“彼女”の肩から血が溢れ出す。
“彼女”はガクリと膝をつくと、肩を押さえながら倒れた。
すると突然ガタンと部屋の照明が落ちる。
落ちたかと思うと、また電気がついた。
もうそこには、“彼女”の姿はなく、血跡と共に消えていた。
パチパチと、どこからともなく拍手が聞こえてきた。
少女は振り返る。
そこにいたのはスーツを着た1人の女だった。
「———流石は我々の主・春様です」
「・・・アリサ」
アリサ、と呼ばれた女は春———風月春に深々と一礼した。
そして静かな声で言う。
「どうですか?新たなバーチャルトレーニング機は」
「リアル感が溢れてていいと思う」
「お褒めに預かり、感謝致します」
「・・・・・・」
春はポニーテールに結わえていたセミロングを解く。
アリサが訊ねた。
「髪の毛は、お切りにならないのですか?」
「・・・出来るだけ切りたくない」
「左様で御座いますか」
「うん」
春は適当に手櫛でささっと髪を梳かすと、ピッと剣の様な物を振った。
それは銀色に輝いたかと思うと、さらさらと消えていく。
それを名残惜しそうに見つめた後、春は肩を竦めた。
アリサが言う。
「・・・“月馬剣”を、“ムール”から直接抜き取らずにお使いになられるようになったとは・・・」
春はアリサに淡々と告げた。
「匣を開匣するには死ぬ気の炎がいるし、消費もする。だから開匣しなくてもいいように、ムールと心を通わせたんだ。そうすれば、いつでも使えるからね」
「流石です。———お強くなられましたね」
「・・・いつまでも泣いてられないから」
春は悲しげに俯くと、出口へと歩き出した。
アリサもその後を追う。
その時、アリサの携帯が振動した。
「・・・っ!?」
アリサは吃驚した表情でディスプレイを見つめている。
「出ないの?」
「あ、申し訳ありません!失礼します・・・。・・・はい、アリフェルです」
アリフェル、とはアリサの名字だ。
長年の付き合いである春にはすぐに分かる。
春は待っておこうかとも思ったが、長引きそうだ。
踵を返し、再び出口へ向かう。
———その時、
「・・・それはボンゴレ9代目のご意思ですか?」
「———っ!!」
春の体がビクリと反応する。
ボンゴレ9代目———マフィア界のトップの、更にトップに君臨する御老体。
その9代目からの電話という事は・・・何か頼み事でもあるのだろうか・・・。
「———主に伝えさせて頂きます。では、失礼をば」
ピッ、と音がして、春はアリサに問う。
「———誰から?」
「ボンゴレファミリー9代目ボスからの直々のお電話でした。・・・大至急、日本へ飛んで欲しいと」
「?どうして私?ボンゴレ独立暗殺部隊のヴァリアーとかがする仕事じゃないの?」
「はい、ヴァリアーの仕事範囲に入っていないことだそうで・・・」
「ボンゴレ門外顧問は?」
「それが、9代目がどうしても春様に行って欲しいと———」
春は首を傾げた。
門外顧問チームではなく、自分に??
日本に帰るなど、あまり気が進まないが、代々ボンゴレと風月家は同盟関係をずっと持続させている。
ボンゴレにはお世話になっているし、今の生活はほぼボンゴレに頼っている。
ここは協力しなければならないだろう。
春はアリサに言った。
「分かった、行く。依頼者は?日本のどの辺りにいるか分からないから電話する」
「いえ、依頼などではなく———」
「??依頼じゃ、ない?」
春の問いに、アリサは頷いて言った。
「9代目から伝言を言付かりました」
「・・・何て?」
「“———老いぼれのお願いだ”・・・だ、そうです」
「・・・は?」
春は笑っているアリサに、間抜けな声を浴びせてしまった。