二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: [銀魂] れんれん. | ( No.54 )
- 日時: 2010/10/05 01:18
- 名前: みんと水飴 ◆vBOFA0jTOg (ID: iQk5t9Pn)
- 参照: http://amenomori22.jugem.jp/
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血の海を作った帰り道。
一匹のある兎は“いいもの”を見つけた。
兎はそれを、どうしても欲しかった。
◇
春雨艦内の通路にて。
全く人通りのないそこには、膨大な量の書類作業をつい先程終えたばかりで目の下に濃い隈をつくっている阿伏兎と、長期任務から帰ってきたばかりの神威が、向かい合って立っていた。
何やら険しい表情の阿伏兎とは対照的に、神威はニコニコと機嫌良さげに笑っている。
眉間に皺を寄せながら阿伏兎が口を開いた。
「……オイ、団長。なんだそいつはァ」
「屋敷の中に捨ててあった猫だよ」
「猫? どー見たっておじさんには女の子にしか見れないけどねぇ……」
にこやかな表情でさらりと言いのけた神威に、もの凄い疲労感と軽い目眩に襲われる阿伏兎。
先程彼が言った“それ”とは今、神威に担がれている少女の事であって。
その少女は任務先の星の姫として大事にされていたらしい。
ターゲットの屋敷の主人部屋の奥の御簾の中に一人座っていた、という。
綺麗な十二単を着せられて、ずいぶんそこで飼われていたようで、足はやせ衰え、歩く事もできなかった。
「まーたなんでこんな弱った女をお前さんが……」
そんな死に損ないの猫。
「で、こいつはどうするんだよ?」
問題は色々とあるが、取り敢えず今一番の問題は、神威が連れて来た少女をどうするかという事だった。
もしも春雨におくのなら元老の許可が必要不可欠だ。
といっても神威は行く筈はないから、結局阿伏兎が動くのだろう。
「勿論、此処に置いとくよ」
(まぁ、だろうなァ)
殺るんだったらその場で殺るだろうし。
と、なんとも彼らしい言葉に、阿伏兎は溜めていた息を深く吐き出した。
「部屋はどうすんだ」
「空いてる部屋あったでしょ? そこにすれば良いじゃん」
神威が何かある度に殺しまくっている為、第七師団は特に空き部屋が多い。
只でさえ貴重な戦力なのに、削らないで欲しい、本当に。
神威にそんな事を言っても「弱いあいつ等が悪いんだヨ」等と言って全く聞き入れて貰えないのだろう。
そんな事を阿伏兎は考えつつ、又溜まった息を深く吐き出すのである。
「大丈夫だよ。俺がきちんと面倒見るサ」
「……ったく、最初のうちだけ面倒見るとか調子いい事言って結局俺が面倒係だもんなぁ……このすっとこどっこい!」
「今回はちゃんとするって」
この台詞を何度聞いて来た事だろうか。
しかし、今回の神威は珍しく真剣そのもので——。
「へいへい……じゃあ俺はジジィ共に報告してくるからな」
「よろしく頼むよ」
「本当は団長が行くべきなんだけどな」
「えー、俺あそこやだー。あいつ等嫌い」
「我が儘いうなよ……」
護りたい、とかそんなんじゃないんだ。
この少女の中に見えた修羅が、気に入ったんだ。
只それだけ
(月影に見えた綺麗な彼女の瞳を)