二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ——手と手を繋いで[銀魂] ( No.39 )
日時: 2010/10/10 13:27
名前: 扉 ◆A2rpxnFQ.g (ID: TtH9.zpr)
参照: 真剣な横顔を見るのに、真剣になってしまう。



 005




「あっれぇ、香澄ちゃんじゃないですか」


お妙と近藤のバトルを見終わり、
土方たちの方へ目を向けると、初めて見る銀髪の青年と、見覚えの在る少女がいた。

「・・・・・・、春風さん」

香澄は春風は見ると、大きく目を見開く。

「無事でしたか??あの後、」

春風はそう良いながら、一歩ずつ香澄に近づく。
基本無表情の香澄だが、少しだけ表情を和らげて春風の言葉に頷いた。

「はい、紆余曲折を経て、この銀ちゃんさんの元で働いてやる事になりました」
「そかそか、それは良かったですー。置き去りにしちったみたいで、すみませんねぇ」
「いえ、良いんです」

勝手に話を進めている2人の間に、銀時と土方が割ってはいる。
始めに尋ねてきたのは、土方だった。

「お前ら、知り合いか??」
「はい、昨日に少しだけ」
「真撰組の屯所へ、真っ先に来たって言ってたじゃねぇか。此処へ寄ったのか??」

そう言って、“万事屋銀ちゃん”と書かれた看板を親指でさす土方。
春風は首を横に振った。


「駅で、助けたんですよぅ。攘夷志士っぽいのに絡まれてたんで」


「ね、」と春風は香澄にアイコンタクトを送る。
香澄はそれを受けて、頷きを返した。

「それ、どんな奴だ??」

土方は鋭い目つきで春風に尋ねる。
春風はそれにも少しも怯むことはなく、笑顔で答えた。


「変わった奴でしたよ。長髪でヘンテコな変装してて、なんかひよこかアヒル??っぽいの連れてましたよ」


その一言で、土方の額に血管が浮き上がる。

「桂か・・・・・・、まァだこの辺ふらついてんのかあの野郎」
「ご機嫌斜めになりましたねぇ、知り合いですか??」
「その言い方辞めろ、知り合いじゃねぇ敵だ」

春風の発言を聞いた後、銀時はふぅーっとため息をつく。
そして香澄に目を向けた。

「さっきから気になってんだけどさァ、何その“働いてやる”って。俺が雇ってんだぞオイ」
「神楽殿に、此処で給料ナシのただ働きが十八番、と聞きましたので」

それを聞いて、銀時は不機嫌そうな顔をしたが、諦めたようにまたため息をついた。

「・・・・・・ま、絡まれたのヅラなら、心配するこたァねぇだろ」
「誰であろうと攘夷志士は切るだけだ」
「おー、おっかねぇ。それじゃ、俺らは退散するとするか」

土方と短い会話をした後、銀時は頭をかきながらそう言い、春風に目を向けた。
そして、まじまじと見つめた。
春風はきょとんとしながら、それでも真っ直ぐに銀時の目を見た。
その緑の目には、徐々に疑問の色が浮かぶ。

「あの、何か??」

耐えきれなくなり、春風は笑顔のまま尋ねる。
銀時はようやく言葉を発した。

「見た感じワケありっぽいから深くつっこまねぇけど・・・・・・」



春風は、身体が微かに強ばるのを感じた。
銀時は春風の耳に顔を近づけ———、静かに言葉を紡いだ。












「お転婆も、対外にしとけよ。——————————“お嬢さん”」












死んだ魚の様な目をした、銀髪天然パーマの青年は、神楽達に向き直る。

「おーい、てめぇら。けぇるぞー」

気の抜けた声を出せば、神楽は既に万事屋への怪談を上り始める。
新八も後へ続いて、その階段の下で、近藤がお妙に再び蹴られていた。
おそらく、別れの挨拶に余計な言葉を付けたのであろう。

「近藤さん、俺たちも帰りますぜィ」
「待って、俺もすぐに行くげへッ 痛い、痛いですお妙さん!!」

ふぅ、と沖田はため息を付く。
いつの間にか、土方は春風の隣にいた。


「万事屋の野郎に、何を言われた??」


マヨネーズを語る時とは、180度違う声で春風に尋ねる。

「いえ、特に何も。ただの挨拶ですよ」

春風はいつもの調子でヘラヘラと笑いながら答える。


——・・・・・・。


少しばかり、引っ掛かった土方だが、それ以上は何も詮索せず、屯所へ向かって歩き始めた。



——————



チャイムの音が部屋に響く。
香澄は、それまで部屋の掃除をしていたが、雑巾を置いて玄関へ走った。

「香澄ー、出といてくれ」

銀時はいちごみるく片手にジャンプを読み老けている。
お客がやって来たというのに、呑気この上なしだ。

「了解です」

万事屋で来て、僅か2日目。
香澄は、随分なじんだモノである。


「はい、」


扉を開けると、先程会った者たちと同じ格好をした人が、笑顔で立っていた。

「・・・・・・、あのマヨネーズ星人さんでしょうか??それとも、税金泥棒さんですか??」

そんな香澄の言葉に、白い髪の青年は苦笑する。

「んー、とりあえず、マヨネーズ星人は否定しておきますよ」
「・・・・・・、お客様、でしょうか」
「そんなところですね。旦那に——、銀さんに会わせて貰えますか??」

白い髪の片眼青年は、毒気の無い微笑みを香澄に向ける。
香澄は、悪人ではないと判断したのか、玄関へと入れた。
青年は、何度か来たことが在るかのような慣れた様子で、銀時がいる部屋まで歩く。
香澄の下手な案内など、ほとんど耳に入れては居ない。



「ひっさしぶりだなァ、“白兎”」



銀時は、珍しく自分から言葉を発した。

「・・・・・・銀さん」

白兎は、小さく呟く。

「まァ、座れよ。話はそれからだ」
「全部、解ってるみたいな口ぶりですね」

銀時は、少しだけ考え込むように黙った後、口を開いた。















「大体、はな」






やけに真面目な白兎の目には、血に染まる真撰組が見えた。