二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ——手と手を繋いで[銀魂] ( No.47 )
日時: 2010/10/12 19:34
名前: 扉 ◆A2rpxnFQ.g (ID: TtH9.zpr)
参照: 真剣な横顔を見るのに、真剣になってしまう。

 

 006




——あの銀髪天パ、要注意だ。


春風は、屯所に帰ってから何度も繰り返し、自分の中でこの台詞を唱え続けている。



————お転婆も対外にしろよ、“お嬢さん”



あの声が、耳について離れない。
特別優しい声でもないければ怒っているわけでもない、無表情な声で、銀時は春風に言った。
そして、その背中を春風が振り返っても、向こうが春風を振り返ることはなく。
何事もなかったかのように、自分の仲間と自分の家へ入っていった。
そんな温かい微笑ましい光景は、春風にとって羨ましく恨めしいものであった。


「・・・・・・、何者ですかねぇ、坂田銀時」


好奇心たっぷりに、口角を上げニッと嗤う。





「邪魔させや、しないけどね」



——————



「んで、俺らにどうして欲しい訳??」

銀時はいつも通りの気の抜けた声で言う。
白兎は依然、硬い表情で部屋の入り口に立ったままだ。

「難しい事は、頼みませんよ」
「遠慮はいらねぇぜー。俺ぁ万能だからな」

銀時らしからぬ、やる気な発言に新八は目を見張った。
その隣では神楽が、定春と遊んでいる。

「いえ、」

新八と神楽を横目に見ながら、白兎は言う。
吊れない表情の白兎に、銀時は僅かに微笑んでソファと指さした。

「とりあえず、座れよ」

銀時はそう言い、自らも移動し、ソファに腰掛ける。
白兎もようやく動いた。


「で、何」


催促する銀時。
自分を見つめる、死んだ魚の目が妙に怖く感じて、白兎はふいに目をそらした。
それでも、逸らすなよ、とばかりに銀時は此方を見る。
気まずい空気が流れる。

——時間が、ないんだ。

白兎は、唇を噛み締めた。

——“黒鳥春風”が江戸に、真撰組に来てしまった以上・・・・・・


——もう、時間がない。


——そして僕に、“彼女”を止める術は、ない。
——僕も、
——復讐者、なのだから。


膝の上で、自らの拳をぎゅっと握る白兎。
それが、悲しみによるものなのか、憎しみによるものなのか、白兎地震にも解らなかった。
だが、銀時に自分の“依頼”を告げる決心が付き、銀時に向かっていつもの笑顔を向けた。
そんな変化に気がついたようで、銀時は「お、」と声を上げた。

「銀さん、もしこの先————」

銀時は、旧友の悲しい決意に満ちた表情を見て、眉を歪めた。
それを、白兎は知る由もなく。
ただ精一杯、銀時に助けを求めた。

「真撰組に危機が迫ったとして、それが小さな少女の仕業だったとして、」

白兎は随分、遠回しだった。
それでも、理解できる銀時はどれだけの白兎を見てきたのだろうか。



「その少女が、例え自業自得だったとしても居場所を失って、
 その時僕は、支えにも助けにもなってやれず、隣魅居てやることも叶わなかったら」



白兎は、そこで初めて銀時の目を見た。
その目を死んでなんかいなかった。
だが、今まで見たことがないくらい、慄然としていた。


「白、兎。 ・・・・・・お前、まさか」


銀時の声に、小さく頷いた。

「止せ、変な気起こしてんじゃねぇぞ!!」

グイ、と力強く白兎の襟を持って自分へ引き寄せる。
だが、まるで土方に怒鳴られている春風の様に、白兎はいつもと同じように微笑んで———

「僕と春風は、運命共同体。憎しみも悲しみも寂しさも、全部、一緒だ」



「敵も、一緒なんですよ」


銀時は、その言葉を聞くと諦めたように手の力を抜いた。
白兎は、ふぅ、と息をつく。

「苦しかったですよ、銀さん。そんなに、怒らないでください。悲しい事じゃないですよ」
「てめぇ」
「ほら、また睨む。僕は、幸せですよ。ハルの力になって、死ねます」

白兎の迷いのない表情に、銀時は疑問さえ浮かんだ。
あっさりと、“春風のために死ねて幸せ”だと、恍惚の表情を浮かべながら述べたのだ。
銀時の脳裏に、少年のような格好をして真撰組隊士として生活をしている、春風の姿が目に浮かぶ。
その姿には、妙に儚く寂しく、そして何処までも暗い憎しみがあった。
そんな彼女を、白兎は1人の女として“愛しているのか”??

「復讐・・・・・・って奴か」

あえて、銀時はその問いを口にはしなかった。
銀時の言葉に、白兎は頷く。


「そうです。彼らは、真撰組は———、僕たちから“大切な人”を奪った」


銀時は困ったように、頭をかく。



「僕の“依頼”は———、
 もし僕が死んで春風だけが残ったとき、出来るだけの世話をしてやって欲しいってことです」



あれだけ遠回しに言っておいて、最後ばかりはストレートに言い放った。

「真撰組を裏切れば、あとは切腹だけです。僕はそれを避けられないとしてもハルだけは———」

語る白兎に、銀時は口を挟んだ。

「そんなこと、俺に頼みに来るより先に“ハル”の復讐を止めてやれ。・・・・・・それが、お前の仕事だろ」

銀時の目に、曇りは無かった。
白兎は、小さく笑みを溢す。





「それが出来れば、僕だけでも復讐を完成させますよ」










“憎しみは、貴方にも解るでしょう??”





「銀ちゃん、白ウサギ、何のようだったアルか??」

神楽は立ちつくす銀時の着物の袖を引っ張った。
“白ウサギ”、とはどうやら白兎のことのようだ。
銀時は、ひたすら玄関を見つめるだけで、神楽の問いに答えようとしない。

「神楽ちゃんっ」

空気を読んだ新八が、神楽を引っ張って連れて行く。

「銀さん、僕たち買い出しに行ってきますね、夕飯の」

返事はなかったが、そのまま新八は出た。
バタン、と扉の閉まる音が、1人の家に響く。








「・・・・・・イカれちまったな、白兎・・・・・・!!」













黒い鳥と白い兎は、血に染まる世に跳びだした。