二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ——手と手を繋いで[銀魂] ( No.2 )
日時: 2010/10/05 18:10
名前: 扉 ◆A2rpxnFQ.g (ID: TtH9.zpr)
参照: 目の前が勉強と試験と、そして、貴男との未来。かもね






手と手を繋ぐ、

ぎゅっと繋ぐ、

暖かくって、

優しくて、

大きな貴男の手と。



手と繋ぐ。



——————



「んー!!つっかれた、疲れた、疲れたぁー!!!」

大きく伸びをする。
目の前に広がるは、大都会・江戸。

「やっぱ遠いねー、田舎からだとさぁ。それに、雰囲気も、全く違う」

一通り街を見渡し、もう1度大きな深呼吸。
そして顔を上げ、ニヤリ、と口を歪めた。



「さぁ、行きますか。“真撰組”ってのに」



黒い髪、緑色のつぶらな瞳、深くかぶったハット。
黒に身を包んだ影は、駆け出す。
楽しそうに、それでいて力強く決意に満ちて。
端から見ると、田舎から出てきた志在る少年のような、影。

それは、復習と雪辱を胸に、目覚めたばかりの江戸の街に消えていった。



——————



「おらぁ!!起きやがれ、総悟ぉぉお!!!」


真撰組屯所に、怒声が響き渡る。

「朝だ朝!!朝稽古の時間だ、馬鹿野郎ぉ」

黒髪の男は、布団を無理矢理引きはがし庭へと放り投げる。
それだけには留まらず、一発蹴りを入れた。

「起きろっつってんだろーがぁあおぶっ!!」
「ドーン、あれ、いたんですかィ。土方さん」

思いっきりぶりを付けて起きあがった少年の両腕が、“土方”と呼ばれた青年の頬にヒットする。
土方は語尾を濁し、その場に倒された。

「てんめ、総悟・・・!!」
「おはよーございます、いつまで転んでるんですか、土方さん。朝稽古ですぜィ」
「マジ殴って良い??マジ殺して良い??」
「トシ、そーご!!飯だ飯ー!!」

ドタドタと、とても静かとは言えない足音と共に、ゴリラが現れる。

「稽古が先だバカヤロー」
「じゃぁ、土方さんはそこらへんでのたれ死んでてください、後からお供えもって行きますから」
「勝手に殺してんじゃねぇ」



いつもの調子で始まる、真撰組の朝。

鬼の副長・土方十四郎の怒声が響き、1番隊隊長・沖田総悟の意趣返し。
そして、空気を読まない近藤の声。
慌ただしく、だが当たり前の家族愛が成立する、いつもの、朝。


結局、土方の言い分が(半ば強引に)通り、隊士全員、中庭で素振りとなった。





「おぉおー!! やってるやってる、“素振り”」





そんないつもの朝を、監視していた者が1人。

「ふーん、皆そうでもなさそう?? んー、あの怖い顔の人は強そうだな。
 あ、あとあの、アイマスクの男の子!!可愛い、強そう!! ・・・・・・何で刀じゃないもの振ってる奴がいるのかな??」

勝手に隊士達の実力を目分量で量る。
そう、まるで、料理中に砂糖の分量を量るように。
ケーキを作るのに、砂糖の量は重要だ。
それと同じように———、影にとって、彼らの実力は“重要”だった。

「なんでゴリラがいるのかな、あそこ・・・・・・」

少々の疑問はあったが、影はニヤリと口を歪める。

「ま、いいや、倒すし。 そーと決まれば————」






「この壁、強行突破っしょ!!!」






土方の怒声が飛んだとき、沖田がバズーカで街に穴を開けた時、それ以上の音が朝の隊舎に響いた。
隊士は一斉に物音がした方角を見た。
今は素振りの途中。
全員、戦闘準備は出来ている。
砂埃が風で全て払われる。


「何者だ・・・・・・、貴様」


土方が凍死するような冷たい声を絞り出す。

「場合によっちゃぁ、無事にゃ返せませんぜィ」

沖田もバズーカを方に担ぎ、涼しい顔で言った。
黒いハットを被り黒い洋服に身を包んだ少年は、前髪で隠れた緑の瞳を輝かせた。

「そんな怖い顔、しないでよー。大丈夫大丈夫、道場破りとか、そんなんじゃないから」

道場破りも何も、此処は元から道場ではないのだが。
土方は、一層眼力を強め、睨んだ。



「自己紹介、ね」



ニヤリと歪んだ口は、そのまま。
















「黒鳥春風、真撰組に入りたくて来ました」


















手を繋ごう、大切な貴方と。
でもそのためには。
強くなくては。












これは、出会い。
黒鳥春風と、これから始まる騒がしい毎日との、出会いだった。