二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 余命数ヶ日のボーカロイド 〜初音ミク〜 ( No.24 )
日時: 2010/10/26 21:11
名前: ミズキュウラ・ドラッテ (ID: qrnJbgt/)

 あれは…そう、マスターが暑いと言っていた夏の日。
 私は機械だから体温調節という便利轄かつ鬱陶しい機能などついていない。
 だから《くーら》のびんびん効いた中で寛いでいるマスターが「やっぱり夏はクーラが一番だよね」と笑顔で訊いてきても温度の判らぬ私はそれをはっきりと覚えていた。

 ——私が初めて『恋』というものを知った日——






 「じゃ、次のテキスト。ミクは恋って…知ってる?知ってる限り挙げてみて」

 毎度行われる恒例の行事。テキスト。
 ボーカロイドはこれを一年間ずつ行う。
 この間で何を覚え、何を知ったのか調べるのだ。
 そして今日は私がそれをやる日だった。

 「……恋……?恋って……あの、胸がどっきんどっきんするやつ?」

 「そう。そのことをどれくらい知ってるか今日は調べるの。——判った?」

 「う〜……判ったけどさ……知ってることっていったら………何もないよ…」

 情けなく私は項垂れた。
 恋なんて…動物が感じるものであって、ココロ——前頭葉感情をコントロールする海馬——がない私たち機械は知らなくていい情報。
 其れをなぜマスターは態々わざわざ調べる必要があるのだろうか。