二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 余命数ヶ日のボーカロイド 〜初音ミク〜 ( No.45 )
日時: 2010/11/29 03:51
名前: ミズキュウラ・ドラッテ (ID: qrnJbgt/)

 ハイ、皆様長らくお待たせしました。
 更新です。



























 「マスター。私、旅に出たい」

 直球だった。もう前振りとか関係なしに。
 マスターは案の定、持っていたマグカップを落として挙句には口から何かを零す。

 「わぁああっマスター口っ!口から子供には見せられない物が出てるっっっ!」
 
 必死になって手拭いを渡す。
 マスターは、あ、ありがとう。と言って拭きながら私の顔を覗き込んできた。

 「それって…本当?」

 「本当」

 「…そっか…寂しいな…ミクはボーカロイドのなかでムードメーカーだったのに」

 そういってマスターは立ち上がった。

 …じゃあ、引き止めてよ。
 そういうならさ。
 私を。
 力一杯に行くなって言ってよ。 

 それはマスターの性格上無理な期待だった。
 判ってるんだ。
 これは0%に近い賭けなのだということは。
 でも。
 それでも。
 キミには引きとめてほしかった。
 旅に出たいなんて嘘。 
 これはキミを試す賭け。
 でも答えは訊かずとも明白で。
 私は項垂れかけた。
 そしたら…。


 「…行くな…って言ったら、ミクは旅に出ること止めるなんて考えないの?もしさ…ボクに可能性があるなら…行かないで欲しい。ここに居て?ボクの傍にさ。だめかな?」


 ………え?
 私は弾かれるように顔を上げた。
 そこにはドアップのマスターの顔。
 そして近づいて。
 私の中の時間が止まる。
 自分がいまなにをされているのか頭ごなしではわからない。
 な…に…?

 ゆっくりとマスターは顔を戻す。
 そして少しだけ寂しそうにに言った。

 「君を離したくないんだ。一緒にいてほしい。こんな我儘なボクとじゃ…イヤ?」

 それに私は首を何度も振る。
 嫌じゃない。むしろ嬉しい。
 だって…無理だって思っていたから。
 今のは…キスだ。 
 マスターからの。
 触れるだけだけの。
 私は半ば信じられず。
 放心状態だった。