二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 自分探し 【銀魂】  −流砂篇− ( No.129 )
日時: 2011/06/14 21:09
名前: 海苔 (ID: Pmy7uzC3)

第四十八訓 人生に一度や二度の失敗はつき物




私の手には出来立ての流砂が入った袋。例えるなら粉薬の入っているアレ。

つーかさ。粉薬ってなんであんなに不味いの?
良薬口に苦しとか言うけどさ、……私がそんな言葉知ってることに驚いたやつ、斬る。
とりあえず。あれって吐くを通り越して違うものが出そうってことだよ。


「ねー。まったく」

「何がだ」

「とにかく。これを土方さんに提出するため一旦戻りましょー」


道具は屯所のものだから各自が手に持ち、私は全員いるか確認する。

えっと。春に裄乃。それと狼刀に翡翠……って、あれ。
終と穂乃嘉が消えたよ。いや正確に言えば消えたっつーかいないんだけどね。

辺りを見回すが影は無い。
あいつらに何かあったら隊長の責任だ。
もし変な事件にでも巻き込まれていたら——。


「っ、総梧! 探してくるから、みんな連れて先帰ってて!」

「おいっ! はるか!」


総梧の声に足も止めず、私は走り出した。

——


沖田ははるかを止めようとしたがやめて、盛大にため息をついてしゃがむ。
その姿を不思議に思ったのか狼刀は尋ねた。


「止めなくていーのー?」

「あ? 俺が『待ってれば来る』とか言っても、あいつは走っていくからな」

「確かに」


狼刀は苦笑して短く答えて、ほうきを逆さまにして持ち手を掌に載せてバランスを取り始めた。
それに便乗して3人が混ざり始めたとき、終と穂乃嘉が小走りで帰ってきた。

いつもは女中として働いているため穂乃嘉は息を切らしている。


「どうしたんですか?」

「……わ。わたしが……」


傍によってきた翡翠にたいして答えようとするが、それを終が片手で制する。そのまま顔色一つ変えずに終は説明を始めた。


「流砂と混じっていたゴミを捨てに行った時に、ほんの少し目を離して振り向いた。すると穂乃嘉は絡まれているではないか。
 そこで俺は素早くそいつらを撒いて帰ってきたというわけだ」

「絡まれていたって誰に?」

「おそらく攘夷志士だろう。明るき江戸の未来のためにどうのこうのと語っていたが……。
 む、心配はない。急所ははずして軽く峰打ちといったところだ」


冷静に答えていくが、誰も何も答えようとはしない。
そして、みんなの顔色を伺いつつ狼刀が小さく挙手をした。


「それで。そいつらどうしたの……?」

「どうしたも何も——」


そこで終の表情は固まる。

この時の全員の考えは一致していただろう。



——そいつを逃がしてしまったんだ、と。



「……すまない」


しばらくしてポツリと呟くのだった。