二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 自分探し 【銀魂】  −流砂篇− ( No.147 )
日時: 2011/10/05 22:19
名前: 海苔 (ID: 6w.ezElv)


流砂がばら撒かれたのは午後。風向き方角は云々かんぬん。
こんなんで見つかるのかと言いたくなった。

が、しかし。真選組ってすごいのね。
日を追うごとに少しずつだけど情報が集まっていくのだった。
そして私、香音はるかはというと——


「おつかいなのであった……っておいィィィっ!!!」




第五十六訓 テンションがおかしいのはいつものこと




手に持っている財布を地面にたたきつけそうになって慌てて止める。

お、落ち着け自分。お金は大切だ。
テンションがおかしいのはわかってるじゃないか。
とにかく私は『有心堂』へと月見団子を取りにいかねばならない。
なんで今更……、とか言ってはいけない。季節がずれたんだ仕方がないであろう。


「こんにちはー」


ひとりごとを呟いてる間に着いてしまい暖簾のれんをくぐると。


「いや……栗まんじゅうか。でも苺大福もうめーんだよなぁ……」


見慣れた銀髪がショーケースの前をうろついていた。
なにをしてんだ、この人は。


「ぎーんさーん。何やってんの、つーか仕事は」

「あ? ——はるかじゃねーか。そういうお前も仕事どうした」

「おつかいと言う名の仕事ですので」


おばちゃんに「予約してる香音ですけど」と伝えると奥へと行ってしまった。
お釣りで栗まんじゅう買いたいな。かすてらでもいいんだが。
しばらくして、おばちゃんが大きい紙袋を持ってきてお金を渡す。
財布の中身が金額とピッタリなのが腹立たしいぜ、コンチクショー。

外へ出ると風が冷たい。いやもう本当マジで。
紙袋重いし、寒いし、早く帰ろうと思ったときだった。


「はるか、ちょっと待て」

「うぉ。銀さんなんですか。辛いので早く帰りたいのですけど」

「んじゃ、それ半分持ってやるから」

「ならいいけど……」


半分と言った割には8割くらい持ってくれた。
銀さんは私と歩いてるとき、どこかソワソワしていて会話をしてるのに話を聞いてないようにみえた。


「ここまででいいよ。ありがとう」


屯所まであと数メートル。少しくらいなら我慢をしよう。
丁寧にお礼を言って去ろうとしたが、急に銀さんは話し始めた。


「音成来てただろ。俺たちに依頼をして、数日くらい万事屋で家事とかやってもらって。
 帰る日にお前に手紙をよこしたんだよ。だけどお前流砂……? だかで忙しいから代わりにって渡された」


銀さんは懐から手紙を取り出して、それをずいと差し出す。


「え、っと。ありがとう……」

「ま、俺が言いたかったのはそれだけだ。
 じゃ、はるか。なにかあったら『万事屋』にな」


そのまま銀さんは手を振って帰ってしまった。

私はしばらくの間その場で立っていた。荷物が重いことや風が冷たいことなども気にせずに。

+++

——その日の夜、ある建物の屋上にて

柵に腰掛て、足元にはここ数日の新聞。
膝には黄色い毛布をひざ掛けとして使い、満足そうにいう彼。


「がんばってんじゃん。真選組さん意外とすごいね。
 ま、捕まる気はないけどさ」


にっこりと笑い、彼は町を眺める。
風が吹いてくしゃみをして彼は毛布を羽織った。


「それにしても寒いな……」


その顔はひどく寂しそうだったと言うのは夜空の星くらいだろうか。