二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 自分探し 【銀魂】 −白狐篇− ( No.98 )
- 日時: 2011/03/08 19:00
- 名前: 海苔 (ID: quLGBrBH)
- 参照: 気づけばもう3月ってww
第三十七訓 ただ大福が食べたいだけなんです
たった一日空けていただけなのに懐かしく感じた。
とりあえず帰ったことをみんなに伝えるために部屋に向かって、障子を開けて第一声。
「……なにやってんの?」
「トランプ」
輪になって中心にはカードがバラバラに置かれていた。
ちょうど終盤で穂乃嘉の手元にカードが2枚あり、向かいの春の手には1枚ある。ババ抜きか。上がったと思われる総梧たちが雑談をしていた。
「あー! はーぴょん!」
裄乃が煎餅を口にくわえたまま発言をする。よく物加えたままなのにあんなに上手く喋れるんだ。
「その様子だと夜中に行ったにもかかわらず『有心堂』の大福は手に入らなかったみたいだね」
ニヤニヤと笑いながら狼刀はカードでタワーを作っている。なんだこの隊は器用な奴が多いのか。
そこであることに気づいた。
「は? 『有心堂』の大福?」
有心堂の大福といったら1日限定30個の『苺大福』が有名な菓子屋のことだけど、なぜそれが出て来るんだ。
チラリと総梧の方を見れば口パクで「そういうことだから」と言うではないか。なに話し合わせろってこと?
「なに、違うの?」
「そ、そーなんだけどさ。寝てて気づけば朝でちょうど目の前で買われちゃってさ、アハハのハ」
さすがに「アハハのハ」は無かったと後から後悔。
「大福くらいでクヨクヨする事は無い。また明日もある」
「そうだよね。明日も——」
「うわあああぁっ!!!」
誰の声じゃ! 悲痛の声の矛先をみると穂乃嘉がガッツポーズ中。もう片方の声か。
春の前にはマヨがたっぷりと乗っているどんぶり。そして総梧はそれを食べるよう促す。
「マヨネーズ料理は我輩の一番苦手なもの。それを食べさせるなんて、なんと卑劣な罰ゲーム!」
「いいから早く土方スペシャルもとい犬のえさを食え」
「嫌なのである!」
「やめんかお前らぁっ! つーか何罰ゲームなんてあんの!?」
「当たり前だろ。なんならはるかあんたも食うかィ?」
「春、がんばれ」
「はるかさんんん!!!」
親指を立て声援をかけていると土方さんがやってきた。
当然のごとく私たちの会話は筒抜けでありマヨ議論を述べたのち、説教されるのだった。
——
どこかの建物の屋上に腰かけ、一人の青年は息をつきました。
着物の陰から狐のお面が除いています。
そして空を見上げ、誰に語るわけでもなく話しだしました。
「もしあの時、銀時じゃなくて副長さんが出てたらどうなったんだろうなぁ」
クスクスと笑い目を細め、その顔には綺麗という言葉が当てはまります。
「とりあえずはるかには会えたからいいんだけど。あ、ヅラと話せなかったのは心残りだな。
今度、晋助や辰馬にも会いに行こう。そしたら『事』でも起こしに帰ってこよう。そのためには、そろそろあの人たちでも探しに行くかな」
立ち上がり目線をターミナルへと移して歩き出しました。
「罪悪感や戸惑い。
疑いに動揺。
それと違和感、怒り、悲しみ苦しみ。
それぞれの思いは絡み合った糸となって、解けるのは何時の事やら。
だけど彼らは相手を信じている。
だからこそその思いを受け入れずに否定を続ける、か。
やっぱり会えてよかったよ。はるか」
着物の裾から片割れの写真を取り出して、青年は懐かしむように眺めるのでした。