二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- ポケモン二次創作 【虹色の天空】アンケート中です。 ( No.141 )
- 日時: 2010/12/28 17:24
- 名前: 豆電球 ◆Y6CWE4r6bA (ID: sp0cIx.0)
第三十一章 〜鎮魂歌を奏でましょう〜
シオンタウン。
この町には、その昔(といっても、六年程前だが)この世に未練がある、ポケモン達の魂を安らかに眠らせる為に、建造されたポケモンタワーと言う建物が存在していた。
霊園施設だったそれは、現在カントーラジオ局として生まれ変わり、中にあった墓は、『魂の家』に移転されている。
ギンガ「ここは、カントー全域から、沢山のポケモンの遺骨が集まる所なんだ。」
エンジュ「・・・ちょっと、こわいかも。」
ギンガ「ま、六年前に、前チャンピオンがタワーで、幽霊と遭遇したらしいけど。」
エンジュ「!?」
ギンガ「それも・・・ロケット団の仕業でね。そうだ!一つ、物語を聞かせてあげよう。」
エンジュ「うん。」
ギンガ「それは、六年前のお話です———」
いつに無く穏やかで、しかし何処か悲しそうに、ギンガは語り始めた。
それは、六年前のお話です。
ある日の事。カラカラと言うポケモンの親子が、悪い人間に捕まってしまいました。
そして、まだ生まれたばかりの小さなカラカラは、母親の目の前で殺されてしまいました。
母親も、子どもの後を追うかのように、無残に殺されてしまったのです。
二匹の亡骸は、シオンタウンのあるおじいさんが拾い、ポケモンタワーに納めてくれました。
しかし母親は、目の前で殺された子どもが余りに可哀想で、成仏する事が出来なかったのです。
それ以来、ポケモンタワーに行くと死んだ母親のカラカラが、子どもの敵(かたき)を討とうと人間を襲うようになってしまいました。
エンジュ「そ、それで・・・?」
ギンガ「大丈夫。続きを話すよ——」
そんなある日の事。
一人の少年が、ポケモンタワーに訪れた。後に、リーグチャンピオンまでのし上がる彼。
しかし、その時はまだジムバッジを五つ持っているだけだったが。
カラカラの母親が、成仏できずにこの世を彷徨っていると聞いて、タワーに上ってきた。
そして最上階で、彼は母親に出会った。
彼は、通じるかも分からないのに、必死でカラカラに説いた。
『確かに僕達人間は、君達親子を殺してしまった。でも、君の子どもがそんな事望んでると思う?』
幽霊のカラカラは、理解はしたものの、人間の言葉を受け入れる事が出来ませんでした。
しかし——
『僕に出来ることなら、何でもする!だからこれ以上、関係ない人を巻き込むのは止めてくれ!』
何でも。——この言葉に、カラカラの母親は一つ条件を出しました。
それは、己と子どもを殺した組織を完全に叩き潰す事。少年は、二つ返事で頷きました。
その後彼は約束を守り、組織を潰す事に成功しました。
カラカラも、安心して天国に旅立ったそうです——
エンジュ「・・・よかった・・・」
ギンガ「そうだね。でも、この話にはこれから、続きが出来るかもしれないんだ。」
エンジュ「え?」
ギンガ「物語でもあるように、カラカラが成仏したのは、ロケット団がこの世から消えたから。でも、また復活する。」
エンジュ「じゃあ、もういちどこの世にもどってきちゃう・・・!」
ギンガ「それは無いだろうけど・・・きっと、前チャンピオンはこの事が許せないだろうね。」
エンジュ「もしかして、お姉ちゃんは・・・」
ギンガ「きっと、自分の事以外に、この事もあっただろうね。優しいリオンのことだから。」
エンジュ「そうですね。・・・そうだ!お兄ちゃん、一つお願いがあるんだけど・・・」
ギンガ「?」
魂の家
エンジュ「・・・どうだった?」
ギンガ「大丈夫!喜んでこの場所を提供するって。」
???「君かい。この地で眠っているポケモン達の為に、鎮魂歌を奏でてくれるってのは。」
鎮魂歌とは、死者の霊をなぐさめるために作られた詩歌である。
エンジュ「はい。アタシの故郷で、昔からつたえられているウタなんですけどね。」
ギンガ「こちら、魂の家の管理人で、カラカラ達の遺骨を納めた、フジさんだ。」
エンジュ「・・・よろしくおねがいします。」
ギンガ「俺は、何をしたらいい?」
エンジュ「ううん、アタシしか知らないから。そうだ!チョキをだして!」
ギンガ「ああ。いいが・・・」
ボム!
チョキ「フィ〜♪」
エンジュ「お兄ちゃん、チョキにアタシの唄にあわせて、そらを飛んで欲しいってたのんで!」
ギンガ「何のために?」
エンジュ「いいから!」
ギンガ「分かった・・・———。」
しん、と静まり返った空の下。エンジュの口から、旋律が紡がれた。
『この世全ての、生きとし生けるものに捧ぐ。
蒼き空に舞う光よ。我等の仲間を受け入れ賜え。
我等も、同じ光となりし仲間の為に想いを捧げよう。
日の時は、黄金に輝きし、太陽に。夜の時は、白銀に瞬きし、月に。
全てのものが同じに、全てのものに平等に。
この唄が紡がれしとき、愛すべきものを失ったものよ。
その命を奪ったものに、憎し心を、醜し心を曝け出しては成らぬ。
その事を、望んでいるのだろうか?唄を捧げられしものが。
憎しみがあれば、そのものも気持ちよく旅立てぬだろう。
失いし命。比例するかのように、生まれし命がある。
金の光、銀の光よ。我等の仲間を、天へ導いてくださいますよう。
生きし時のかつての苦しみから、開放してくださいますよう。
我等は仲間を想い、永久に近し時間、祈り続けましょうぞ。
蒼き空に舞う光よ。我等の仲間を受け入れ賜え。
我等も、同じ光となりし仲間の為に想いを捧げよう。
日の時は、黄金に輝きし、太陽に。夜の時は、白銀に瞬きし、月に。
全てのものが同じに、全てのものに平等に。
この世全ての、生きとし生けるものに捧ぐ。』
美しき旋律に従いし、祝福ポケモンであるトゲキッスが、舞う。
エンジュの歌の中に、金の光、銀の光とあった。
それはきっと、かつて出会った伝説と呼ばれし生き物の事であろう。
六年前に、己が関係している組織のせいで、散ってしまった小さな命。
せめてもの慰めになればいい、と願う。
次回へ続く
後で、補足書きます(汗)