二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- ポケモン二次創作 【虹色の天空】感謝御礼リクエスト受付中! ( No.231 )
- 日時: 2011/02/02 23:34
- 名前: 豆電球 ◆Y6CWE4r6bA (ID: sp0cIx.0)
第五十一章 〜母を訪ねて・・・〜
サカキが逮捕され、全てが終わってから二ヵ月後。ギンガは、刑務所にいるサカキとの面会を果たしていた。
サカキの罪を問う裁判が一週間後に迫っており、そこで重い刑に処せられる。
そうなってしまえば、父親といつ会えるか分からなくなるからだ。
つまり、これが最初で最後の面会である。それなりに、緊張感がある筈なのだが・・・
今、大きなプラスチックの壁で父親と息子を分け隔てている空間に、2人は居た。
ギンガ「・・・親父、どうだ?ムショの飯は。」
サカキ「うむ・・・まあ悪くは無いが、母さんの飯よりはマズイ。」
ギンガ「母さんの飯と一緒にするなよ・・・てゆうか、俺お袋の味覚えてねーんだけど。」
サカキ「そうだったか?玉子焼きなんか、メッチャうまかったぞ。」
ギンガ「十四年前だぞ!?母さんが出てったの。ってか、親父が若者言葉使うんじゃねー。」
サカキ「悪いか。父さんだって、流行は追いかけるモンだぞコノヤロー。」
ギンガ「変わってないのな。本当に。ボスとしての地位が消えうせただけで。」
サカキ「・・・口悪くなったなお前。」
ギンガ「誰のせいだと。幼い頃転々と引っ越してたから、幼馴染が居ないってのによぉ。」
サカキ「仕事だ、しーごーと!」
看守「・・・いつまで、親子喧嘩してんですか。もう、一人面会希望者が居ますが、通します?」
ギンガ「面会希望者?」
サカキ「ああ。通してくれ。」
看守立会いの下、通されてきたある人物に、ギンガは己の目を疑った。
サカキ「リ、リノン・・・!」
何せ、十年以上前に出て行った、自分の母親が目の前に居るのだから。
ギンガ「母さん・・・?」
リノン「・・・全く。いつかはこうなると思ってたわ。貴方は本当に、馬鹿だから。」
サカキ「・・・すまない。迷惑をかけた・・・」
リノン「ギンガまで、巻き込むとか・・・どんだけ?」
ギンガ「な、んで・・・」
リノン「大きくなったわね、ギンガ。あんなに小さかったのに・・・」
ギンガ「いや、あのさ・・・」
サカキ「そりゃそうだ。十四年間会ってなかったんだから。」
リノン「そうよね〜、アナタよりも背も高くなって・・・何より。」
母親は優しく、幼子を抱くように息子を傍に抱き寄せた。
ギンガ「母さん!?」
リノン「こんなにも立派になっちゃって・・・」
ギンガ「・・・どうして、十四年前に出て行ったんだ?」
リノン「アナタ、ギンガに言ってなかったの?」
サカキ「言えるか。そんな内容。」
一つため息をつき、母親は語りだした。
時間は遡る事、二十数年前。当時は、サカキも悪に染まる事無く、真面目な社会人であった。
そんなある日、都会の喧騒に嫌気がさしたサカキは、鈴音の小道に偶然迷い込んだ。
そこで、運命の出逢いを果たしたのだ。
当時、ギンガの母親は『舞妓はん』だった。それも、力は桁外れで、舞妓の中でもトップクラスのエリート。
本来ならば、出逢うことの無い2人。
何も力の無いサカキが、『神の領域』に立ち入った事で。全てが始まったのだ。
特別な力を持つリノンに出逢い、『神の力』の強大さに気が付いた。この力があれば、全てが手に入る——
欲に狂った男が一人、一丁上がりである。
しかし、サカキは確かに彼女に恋をした。何故か年中、ずっと紅葉している小道に、一人佇む女性。
美しく、儚げで、力強く、温かい——
欲だけでなく、恋にも狂った男。
彼女は男の欲に気が付きながらも、彼の思いを受け止め伴侶となった。
信じていたから。男が神の力を欲して、悪に突き進まない事を。
叶わなかった。
伴侶となり、リノンは舞妓を引退した。子どもも生まれた。幸せな家庭を築けると思っていたのに。
息子に、己と同じ力があると気付いた時。この幸せな時間が崩れる音がした。
本来、舞妓の力は遺伝しない。ただ、愛息子の瞳は——銀。伝説では・・・
嗚呼、何故ですか。私だけでなくこの子まで・・・どうして、どうして・・・
悪に染まりだした男が、息子の力に気が付いたら、どうするだろうか。
息子を、利用するのだろうか?
せめて、何かが起こる前に出て行かなければ。息子を連れて。
・・・それは出来ない。リノンは知っていた。
力を引き出すには、『両親の、心からの愛情が必要』だと言う事を。
私が連れて行ってしまえば、多分力が目覚めてしまう。同じような力を使うから。
でも、父親の元に置いて行けば。力が目覚める事が無いかもしれない。『両親』の愛が必要なのだから。
だから——
ギンガ「かあさん!ぼくもいくぅ!」
リノン「ゴメンね、貴方が、力に目覚めなかったら、きっと迎えに行くから。」
ギンガ「やだぁやだぁ!!」
リノン「貴方の為にも、この方がいい。きっと、一生『普通』に暮らしていける・・・」
家を出て、後悔が押し寄せる。本当に、置いていって良かったのだろうか。独りにして良かったのか。
でも、これが息子の為、伴侶の為。そう思い、その地を後にした。
ギンガ「・・・」
サカキ「実は、リノンが出て行ってからも時々、電話で話していた。ギンガ、お前の事を。」
リノン「サカキさんを、止められなかった私を許して。独りにしてしまった事も。」
ギンガ「・・・いいよ。もう、終わった事だし。今から、やり直せばいいだろう?」
リノン「そうよね。ありがとう、ギンガ・・・」
看守が、鼻を啜りながら時間が来た事を告げた。これで、暫くは家族が揃う事は無い。
リノン「ギンガ、貴方は今、オーキド博士に引き取られてるのよね・・・?」
ギンガ「そうだけど・・・あ、戸籍。」
リノン「お母さんと、お父さんが来るまで一緒に居てくれない?戸籍も、元通りにして。」
ギンガ「・・・母さん。」
次回へ続く
これから、リクに答えてきますー!