二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- ポケモン二次創作 【虹色の天空】 ( No.76 )
- 日時: 2010/11/22 23:35
- 名前: 豆電球 ◆Y6CWE4r6bA (ID: sp0cIx.0)
第十四章 〜認めるって、こんなに楽なモンなのね〜
六番道路
キオン「いや〜・・・エンジュちゃんのおじいさんに詰め寄られた時は、本当に怖かった〜」
エンジュ「でも、いいって、いわれたとき・・・ホントうれしかった!」
キオン「そうだね、じゃあ次に会った時に、どんな旅をしてきたか、自慢できるようにしなくちゃ!」
エンジュ「は〜い!」
先程までの、怯えはどこへやら。泣いた鴉がもう笑ったとは、この事であろう。
エンジュ「でも、じーじ様があんなにあっさり認めてくれるなんて・・・」
キオン「それだけ、エンジュちゃんの想いが本気だったんだろうね。この旅に於ける、本気が。」
さっきまでの、ふにゃりとした顔から一転。急に大人っぽい微笑みを浮かべる。
その瞳が、太陽の光を受けて一瞬だけ、金色に瞬いた気がした。その姿に思わず、見惚れてしまった自分が居た。
エンジュ「・・・ふぁ!」
キオン「?どうしたんだい?いきなり後退りするなんて。僕何にもして無いよー。」
すぐに、ふにゃりとした顔に戻る。
エンジュ「そうじゃないのよ・・・えーと・・・あのぅ・・・その・・・・」
何時に無くしどろもどろになるエンジュに、キオンは首をひねる。
この下は、エンジュちゃん(十歳)の心の中だぜ!
(あああ!!お兄ちゃん!?・・・かっこよすぎですよー・・・。・・・あれ?これって・・・)
キオン「エンジュちゃーん?どったのー?」
エンジュ曰く、この時のキオンの顔ほど、殴りたくなった物は無いらしい。
エンジュは、この後の始末をどうつけるか迷いながらも、キオンの右頬に向かって全体重を乗せた左拳を、音速の速さでぶつけたのであった。
クチバシティ、ポケモンセンター
キオン「・・・ねーさっきから、何怒ってんのさー」
真っ赤に腫れた右頬を、ジョーイさんから借りた氷当てをしながら、ぶつぶつと文句をたれる。
エンジュ「しらない!お兄ちゃんが、ぜ〜んっぶわるいの〜!!」
エンジュの暴挙(?)の後、ここに到着するまで一切口を聞かなかった二人。
キオンに、非はゼロ・・・どころかマイナスである。
エンジュは何が言いたいのか、ひたすらキオンを睨みつける。
先程までの、ほのぼのした空気は何処行った!キオンは、何か悪い事でもしたのかと頭を抱える。
ただでさえ、この年頃の女の子は色々難しいのだ。何か、悪い事したんなら謝るから!
エンジュ「・・・。」
キオン「・・・何?」
沈黙と言う名の、沈黙。(何!?)
キオン「あー・・・僕、何かしたのかい?」
エンジュ「・・・ううん。さっきは、ごめんなさい。」
キオン「・・・あ?」
エンジュ「だからっ!ごめんなさい!」
キオン「何なの?いきなり。」
ポカーン。一番、今のキオンの心&表情を表すには最適な、オノマトペであった。
ポカーンとしているキオンを見て、大きくため息を一つ、つくエンジュであった。
一時間後
キオン「さて、今度のジム戦なんだけど・・・」
何事も無かったかのように、ジム戦対策の話を始めた所は、尊敬すべき部分である(そうなのか?)
エンジュ「え〜と・・・アタシのピイとおんなじ、電気タイプのポケモンを使うジムだっけ。」
キオン「うん。何度か言ったけど、電気タイプの弱点は地面タイプのみ。そして僕らの手持ちの中には、地面タイプのポケモンどころか、地面タイプの技を覚えるポケモンも居ない。」
エンジュ「うっわ〜・・・どうするの?お兄ちゃん。」
キオン「心配は必要ない。クチバシティの先には、ディグダの穴と呼ばれるダンジョンが存在するんだ!」
エンジュ「はい?」
キオン「あれ?知らない?エンジュちゃん。」
エンジュ「しらなーい!」
センセー教えてー!的なノリで言われる。本当に尊敬の尊の字も、持ってくれないんだからまったく・・・
エンジュ「ねーねー、ディグダの穴ってなーにー?」
キオン「はぁぁ〜・・・」
キオンのテンションが復活するまで、あと三分。
キオン「えっと。ディグダの穴って言うのは、何世紀か前に、突然ディグダ、ダグトリオ達の大移動が発生したんだ。その際に出来た穴だと言われているんだよ。因みに、何故大移動が発生したのかは不明とされているけど、予測ではその当時に、何かしらの自然災害(大規模)が発生したとされていて・・・」
ああ、またか。呆れて物も言えない。キオンは、何かを語り始めると己が満足するまで、決して会話をやめないのだ。
ただ意見を述べているだけならば、すぐにでもやめさせるのだが・・・
キオン「ここからは僕の意見なんだけど、自然災害の内容は、大規模な地震によって発生した大津波だと思うんだ!だって、ディグダの穴には今でも海水の後と思われる地層が残されていてね・・・」
エンジュ「へえ・・・」
そこには、バトルの時でも滅多に見られない、満面の笑みがあふれている。だから。
エンジュ「きょうみなくても、お兄ちゃんに質問したりするのよねー。」
キオン「地層調査を、完璧に行えば太古の昔に滅んでしまったポケモンのDNAが検出されるかもしれなくてー・・・」
エンジュ「はぁい!そこまでぇ!!」
キオン「ふぁっ!?」
エンジュ「で、何でディグダの穴にアタシ達はいくの〜?」
キオン「あ。えっと、そこには野生のディグダやダグトリオ達が生息してるんだよ。彼らは地面タイプだからね・・・」
エンジュ「あ〜わかった!いきたい!」
キオン「じゃあいこっか。」
ほら、と手を差し伸べられた。その手は、男のものとは思えないほど綺麗で、小さくて。
それでも不覚にも、己の顔が熱くなるのが分ってしまって。相手は、全く気付いて無いけれど。
何時からだったろう。
彼の笑顔が、いつも幸せな気持ちを届けてくれているのは。
それに、不本意ながら気付いてしまった自分。
ほんの少しだけでいい。彼と沢山の思い出を作る時間が欲しい。
その気持ちの正体に、彼女が気付くまであと・・・
次回へ続く