二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

---7.険悪なムード ( No.19 )
日時: 2010/11/16 18:02
名前: 璃莉 ◆Lfyfbq.t.A (ID: FxHN6Bqz)

そのとき、汽車が黒い煙とともにホームに入ってきた。








7seven.








「これに乗って行くんだ! 楽しみだなー」


ゆっくりと速度を落としながら停車した紅色の汽車を見て、エリサは目を輝かせた。


「ほら、エリサ。先に荷物を入れて席を取っちゃいなさい」


ルウェラの言葉にエリサは頷き、トランクを持ち上げようとしたが、ぎゅうぎゅうに詰められたトランクは細くて小さい体ではピクリともしない。


「パパー! 手伝ってー! 」


ザックスはやれやれといった顔をしながらもトランクをコンパートメントに運び込んだ。エリサはその後ろを、キュプロス------入学祝いに両親から買ってもらったメンフクロウだ------の入ったかごを持ちながらついていく。


「ありがとう! パパは力持ちだね、かっこいいよ! 」


ホームに戻ってきたエリサの褒め言葉を聞き、ザックスの機嫌は一気に良くなったようだ。当然さ、などと言いながらも頬を緩ませている。
しかしホーム入口の方から入ってきた人影を見ると、それはすぐに険しい表情へと変わった。
父親の周りを取り巻くオーラの変化に気づいたエリサは、だんだん大きくなってくるその人影に目を凝らした------

それは家族と思われる三人の姿だった。父親であろう長身の男性はプラチナブロンドの髪をオールバックにしている。息子はそのミニチュアのような感じで、母親はブロンドヘアの綺麗な女性だ。そろいもそろって青白い肌をしていたが、どこか普通の人とは違う------威圧感とでも言うべきものに身をまとっていた。

その家族はどんどん近付いてきて、エリサ達の前で立ち止まった。


「やぁ、べレスフィールド、久しいな」


最初に口を開いたのは相手の家族の父親だった。ザックスは目を睨みつけながら、冷たい声でかえす。


「よく魔法省で合っているような気もするが」


エリサは二人の間の険悪なムードを感じ取っていた。


------パパとこの人、なにかあったのかな?


「個人的に話すのは久しぶりだろう? まぁいい。そちらは君のお嬢さんかね? 確かエリサ……といったか」


その男性が考えるそぶりを見せながらも自分の名前を言い当てたということに、エリサは驚きを隠せなかった。


「そうだ。今年ホグワーツに入学する」


ザックスは答えると、エリサの方を振り向いて言った。


「エリサ、こいつはルシウス・マルフォイだ」


------ルシウス・マルフォイ! そうか、この人がマルフォイ家の当主……


「初めてお目にかかります、エリサ・べレスフィールドです」


エリサは軽くお辞儀をした。それを見たルシウスは自分の息子を前に押し出した。


「息子のドラコだ。同学年だから仲良くしてやってくれ」


ドラコは何とも言えない顔でエリサを見た。そして、よろしく、と言いながら手を差し出してきたので、エリサもドラコと握手した。


「さて、ドラコ。クラッブやゴイルの息子たちが待っているだろう。列車に乗ってしまいなさい」

「はい、父上」


母親------ナルシッサ・マルフォイ------に抱きしめられて恥ずかしそうに頬を染めた後、ドラコは汽車の中へ消えていった。


「ではでは、べレスフィールド一家。私たちはここで失礼するとしよう」


そう言い残すとルシウスとナルシッサは、増えてきた人の間をぬってホームから出ていった。
エリサは心配してザックスを見たが、彼はすでに和やかな表情に戻っていた。

そして彼は、


「いいか、ドラコと仲良くすることなんてないからな」


と、エリサの耳元で呟いた。