二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: いろんな愛のカタチ−スキだからだからこそ− ( No.4 )
日時: 2010/10/24 09:19
名前: 扉 ◆A2rpxnFQ.g (ID: TtH9.zpr)
参照: 坏脹汗鋲ぢ栖忱隻ニ






銃声がなる。
何故か、人を殺すことにそれほどの抵抗は無い。
ただ、生き残りたい。


「・・・次は何処、行こうかな」


リョーマはそう呟き、移動を始める。
最高に苛ついてるんだ。
せっかくのテニス合宿だってのに、こんなのに巻き込まれて。

「生き残って、テニスをする」

これだけしか、彼の頭にはない。





自分を求めている人がいることも知らずに。






どれほど歩いただろうか。
空は次第に暗くなり、足下もよく見えない。
人が居る気配も無い。

「無駄足、だったかな」

他の場所へ行こうと振り向くと、草の茂みから物音が聞こえた。
リョーマの無表情な顔に、笑みが浮かぶ。
向こうは自分に気がついていない。



「サヨナラ。 まだまだだね」



これで、俺の勝ち。
アンタの負け。

銃の引き金を引く。
銃弾は標的に当たり、血が飛び散る。

さすがに、顔を確認しないままじゃ失礼すぎる気もしてリョーマは相手の方へ歩み寄った。
草をかき分けると、青学の女子の制服が見えた。

「・・・」

女の子は腹部に当たったらしく、息が荒い。
もう、長くは無いだろう。
暗くて、それだけじゃ誰かまでは分からない。
リョーマはさらに近寄った。



心臓が、うるさいほどに動き始める。



不安が、急に押し寄せてきた。
罪悪感なんて、全く感じてなかったのに。
今になって、冷や汗が出るほど、人を殺した自分に動揺している。




「・・・わた、るせんぱ、い」




少女は力を振り絞って、リョーマのほうへ向き直る。
目には、涙が光っていた。










「やっと会えたのに、ね」









泣きながら、笑うんだ。

「こっち、来て、よ。 リョーマ」
「何で」

震える唇で、リョーマは必死に平然を装った。
「俺はお前を撃ったことに、何の後悔もないよ」と。
でも、弥には見透かされている気がした。

「いい、から」

弥の靴には、泥が付いていた。
自分の靴を、改めてみる。



同じ、泥が付いていた。



弥は、ずっと、自分の後を追ってきていた。
自分の通ってきた道を、弥もまた、通っていたんだ。
リョーマの殺した数々の人を、あの瞳に焼き付けながら。

「先輩、アンタ・・・」
「やっと、追いつけた」

リョーマは、弥の手を強く握る。
もう、力が入っていない。

「会いたかったんだよ」

ああ、この人はもう死んでしまうんだ。
ココロに何処かで、そう悟ってしまう。
自分で招いた結果の癖に、認めたくない。


「スキ、だよ。 リョーマ」


この人は、こんなに、自分を求めていてくれたのに。
俺が考えてたコトって、何だったんだろう。
それを思うと、恥ずかしくて。
他人のコトをこんなに思えるアンタがキレイに見えた。
弥との、たくさんの思い出がリョーマの頭を駆けめぐる。
それは弥も同じだった。

「ごめん、ごめん。 弥先輩」

今になって、初めて自分の気持ちに気がつく。




「俺も、スキ。 先輩」





弥は、笑う。

「やっと伝えられた」

静かに目を閉じる。
限界が来た。
弥の息は、もうない。

「先輩・・・ッ」

死んだ。
だけど、先輩は幸せそうで。
撃った俺に、何の文句も言わずに。
それでも、スキだと言った。


「やっと会えたのに、ね」


馬鹿だ。 自分は、何て馬鹿なんだ。

リョーマは立ち上がる。
弥に自分のジャージを掛けた。













待ってて。 先輩。
すぐに戻るから。
その時には、全てが終わっているはずだから。