二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: いろんな愛のカタチ−スキだからだからこそ− ( No.7 )
- 日時: 2010/10/24 09:40
- 名前: 扉 ◆A2rpxnFQ.g (ID: TtH9.zpr)
- 参照: 俺は永遠に、キミの夢になる。
すぐに終わるよ。
こんな腐ったゲームも、苦しみも、痛みも、全部。
夢なんだよ。
悪夢なんだよ。
だけど。
感じる、キミの温もりは確かなモノ。
こんな状況なのに、キミといられるコトが幸せだって思ってしまうんだ。
こんな血と憎悪と悲しみで染まった世界で、キミは幸せな夢のような存在だった。
逢いたい、人が居る。
守りたい、人が居る。
もう、その願いは叶わないかも知れないけれど。
例え、夢の中でだって良い。
もし、叶うなら。
腕いっぱいに、キミを抱きしめよう。
「・・・ッ」
傷が、痛くて、痛くて、どうしようもなくて。
もう、ワケが分からなくて。
なんで、俺が。 なんで、アンタが。 どうして、こんな。
なんで、なんで、なんで、どうして、どうして。
「・・・ま、だま、だ、だね、」
いつもは、相手に向かって言うセリフを、今回は自分に向かって言ってみる。
自虐的に微笑んでみせるが、それも長くは続かない。
傷の痛みは、次第に強まっていく。
胸に広がる、暗い疑問と一緒に。
「なんで、だよ、」
この問いに答える者はいない、そう言えたならどんなに楽だろう。
目の前には、不敵に微笑む少年がいる。
「愚問だよ、ボウヤ」
一撃でのダメージを見て、もう攻撃は必要ないと判断したのか、持っていたアイスピックをおろした。
そして辛うじて微笑んではいるモノの、冷たく悲しい瞳で、リョーマを見る。
リョーマはただ、身動きも取れずに睨み返すだけ。
「愚問?」
「ああ。 答える必要なんて無い」
「ふーん。 そ、んなこと、言って、ホントは、答えが無いだけ、じゃないの?」
息を切らせながらも尚、いつもと変わらぬ生意気な調子で幸村を挑発する。
幸村からは、今までの微笑みは消えていた。
ずっと、訊きたかった。
だけど、誰にも訊けなかったコトがある。
なんでこうなった?
どうして殺し合う?
この腐ったゲームが始まってから、何度も見てきた。
人を殺すことに何も罪悪感を感じないヤツ。
ヤツら、どうして殺し合うことを選んだ?
この地獄のような、血生臭くて寂しい暗い世界。
皆、何を求めている?
皆、何を守りたい?
「アンタも、な、にか、守りたいモノ、が、あるんじゃ、ないの?」
「!」
幸村の表情は、一層険しくなる。
「ボウヤ、愚問だと言っているだろう?」
「図星?」
誰に逢いたい?
「逢いたいヒトも、いるんで、しょ?」
「・・・」
何を望む?
「アンタは、何が、欲しい?」
「・・・」
幸村は、しばらく黙ったままだった。
リョーマの問いを考える様子もなく、ただ、冷たい目でリョーマを見つめる。
だけど、それまでとは少し違った。
「じゃぁ、俺からも訊かせて貰う」
「?」
血に染まったその姿には似合わない、穏やかな声で幸村は言った。
「ボウヤはどうなんだ? 守りたいヒトや、逢いたいヒト、望むモノがあるのかい?」
リョーマの瞳に、“彼女”の姿が蘇る。
もう、逢えないかも知れないな。
怒るとうるさくてさ、素直じゃなくてさ。
ま、ヒトのこと言えないけど。
可愛げないヤツ。
でも。
アイツの歌と笑顔は、何故か誰より心地良かった。
————————————————大咲・・・
「・・・るよ、」
「?」
「当たり、前じゃん。 俺には、いる、よ」
幸村が、一瞬だけ綺麗に微笑んだように見えたのは、気のせいだろうか。
その言葉を言い終えたリョーマは、気を失ってしまった。
歌が聞こえる。
綺麗な、綺麗な、澄み切った歌声で。
心地良く、心地良く、ココロに響く。
まるで、夢のように。
「良かった、起きた」
“彼女”が、目の前にいた。
「もう、起きないかと思ってたよ」
これは、夢の続き?
「お、お、さき」
「ああ、無理にしゃべんなくて良いよ、止血中だし」
「・・・」
寝ころんでいるリョーマの隣に、いつになく静かに座る麻由。
それに、リョーマは少しの違和感を感じていた。
———夢だし、仕方ないか。
「ねェ、いつも、みたいに、騒げば?」
騒いで、いつもどおりになって、安心させて。
「はぁ?! ウチがいっつもうるさいみたいな言い方すんなよ!」
うるさく叫んでくれなきゃ、キミといるっていう実感が湧かない。
「いっつも、うるさいじゃん」
「場合によっては怪我人だからって容赦しねェぞ?」
「そういう、大咲じゃないと、らしくない、よ」
リョーマの言葉に、麻由は顔を赤らめた。
「リョーマも、らしくねェよ」
小さな声で、呟いた。
「大咲、歌って?」
「え?」
「だから、いつもみたいに、歌、歌って」
「リョーマ?」
リョーマの視界が、霞みだす。
「お願い」
何かを、悟った。
ああ、もうリョーマは長くない。
青い顔と、その弱々しい声が、それを語る。
「しょーがねェなぁ」
それなら、それならせめて。
キミの望む、自分でいよう。
いつもどおり騒いで、いつもどおり怒って、いつもどおり歌って、いつもどおり、いつもどおり。
素直になれなくて、かわいげのない。
彼方がスキだと言ってくれた、ありのままの自分で。
歌が、響く。
俺はきっと、夢の続きを見ているんだ。
それなら、どうか。
神様が何処にいるかなんて、分からないけれど、どうか神様。
この夢を永遠に。
麻由との時間を、永遠に。
夢なら覚めないで。
「ごめん、“麻由”—————————・・・」
守れなくて。
「リョーマ?」
それから、リョーマは一言も話さなかった。
瞳を閉じれば。
俺は、いつでもそこにいるよ。
キミの夢となって、いつでもキミの側にいるから。
永遠に、俺はキミの夢となる。