二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【inzm11】彩り ( No.18 )
- 日時: 2010/10/27 17:46
- 名前: 小春 (ID: 9w/YL3et)
*七話*
椛は完成した下書きを見て少し満足したように微笑む。
(結構うまくいったなあ。なんてね)
画用紙をいったん机の上に置き、ペンケースなどを鞄の中に入れていく。
そのとき、部室のドアが開いた。
(先輩かな? 忘れ物取りに来たのかしら)
首だけドアの方へ向けると、淡い水色が見えた。
「かぜ、まるくん……? どうかした?」
風丸は走っていたのか、息を切らしていた。
そしてゆっくりとこちらに近づいてきた。
「九条、が……」
「わたしが?」
「さっき急いで走っていったからなんかあったのかなって……」
その言葉を聞き、椛は噴き出す。
「あはは、風丸くん心配してくれたの?」
風丸は顔を赤く染める。
「あ、ああ……。何もなかったみたいだな」
「うん、何もなかったよ。絵の下書きを描きに戻っていったの」
「にしては、すっごい急いでたな」
「うん、いい構図思いついたから忘れないように」
椛は「それから……」と続ける。
「心配してくれてる割には、来てくれるの遅かったね?」
風丸はあたふたとして、「あー」や「うー」だの言った後、
「いや、その練習が……」
「わたしより練習選ぶんだ。へぇ、ふーん」
「そんなわけじゃ、「なんてね」
椛はにっこり笑う。
「心配してくれてありがとうね」
「いや、別に……。あ、そういえばどんな絵を描いたんだ」
風丸は裏返しに置いてあった画用紙をめくろうと、手をのばす。
「あ、だ、だめっ!」
言うと同時に、めくろうとしていた手をがしり、とつかむ。
風丸はきょとんとした顔で、
「見ちゃいけないものがあるのか?」
「あ、いや、そうじゃないんだけど……。えっと、あのっ、見るのは完成してからのお楽しみってことで…」
椛は「あは……」と苦笑する。
「そういうことか。俺、完成するの楽しみにしてるよ」
「、うん」
椛は視線を少し下におろし「あ、」と声を上げる。
「え?」
風丸も下に視線をおろす。
「あ、の……、ごめんねっ」
椛は掴んでいた手を放す。
「、いや、別に……」
二人とも頬を朱に染め、沈黙が流れる。
そこに、チャイムがなる。
「あ、もうこんな時間。帰らなきゃ」
「そう、だな」
二人ともどこかぎこちない笑みを浮かべ、部室のドアを開ける。
「ていうかさ……」
風丸は前を見つめ、何か思い出したように呟く。
「うん? どうしたの?」
「俺達、初対面だよな」
「ええ……、それが?」
「今までで、初対面なのにこんないつもの友達みたいな感じで話したの、初めてだ」
「そういえば、わたしも」
二人は向き合い、くすくすと笑い出す。
「あはは、おっかし!」
「ホントにな」
二人はオレンジ色の学校を歩く。