二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【REBORN!】 風、来たる。 ( No.7 )
- 日時: 2010/10/29 19:35
- 名前: ゆらゆら ◆U4ADJleouU (ID: 2romsaeA)
—第三話—
どうやら、"低級"だけのようだった。
あれから黙りこくって歩いてみたが、"低級"はおろか人にすら遭遇しない。
皆さん朝が遅いなぁ。夜更かしは良くないよ。
うんうん、と自分で頷く。神様と喋らない間は物凄く暇だ。
千風の住んでいるアパートは、並盛町の中心部より少し外れている。
どちらかというと、隣町の黒曜町のほうが近い。
そのため、学校への道程は長い。面倒臭い。歩いている間、物凄く暇だ。暇だ。
ふわぁ、とあくびを噛み締めて一つ、そんなことを考えた。
神様はあれから喋らない。喋ると匂いを感づかれてしまうから。
いつもはもっと遅くに起きて遅くに出発して、更に学校には"跳んで"向かう。
人々が活動し始めた時間帯に"低級"なんぞが騒ぎ立てれば、大混乱を招く。
更に、公には存在を知られてはいけないから——。
『千風、前を見ろ』
「うわああ!?」
神様の声に反応して視線を前にずらすと、目の前にはコンクリートの柱。
危うく電柱とキスをするところだった。朝から勘弁して欲しい。
危ない危ない、と冷や汗を拭う。地味に焦った。
「あ、もうすぐ学校かな。野球部の声が聞こえる」
『分かった。そろそろ俺は眠ることにするよ』
「うん、おやすみー」
胸元から神様の気配が消える。一瞬にして眠りに落ちた。早い。
学校にいるときは、いつも眠っていてもらっている。
自分のことだ、きっと人前でもナチュラルに話しかけてしまいそうだから。
野球部の朝練の声が聞こえる。ボールがバットにあたった気持ちのいい音も。
そういえば、同じクラスにも野球部の人がいたっけ。……山本くん、だ。
何回か話をしたことがある。気取らない喋り方が好印象だった。
校門に近づくと、なにやら争っているような声が聞こえた。——いや、言い合いというより、一人が怒鳴って一人がなだめているような。
噛み締めたあくびで涙が出る。目をこすりながらその様子を見やった。
見えた影は三つ。学ランが一つと、ベストが二つ。
確か学ランは、風紀委員しか着ていないはずだ。
大方持ち物検査か服装検査だろう。風紀委員もこんな朝早くから大変だ。尊敬する。
どことなく尊敬の念を抱きながら更に校門に近づく。
怒鳴り声は反抗しているのだろうか。そっちも大変だ。尊敬する。
ふわぁ。またあくびが出た。早く目覚めたせいか、寝不足なのかもしれない。
「だから!! 早く通せっつってんだ! 十代目は日直という重大な仕事のためこんな朝早く来たんだぞ!」
おぉ、奇遇だね。私も今日日直なんだよ。
どこかで聞いたことがあるような声に心の中でそう返す。
学ランの生徒は、面倒臭そうにため息をついて、低い声で呟いた。
「アクセサリーの装着は校則で禁じられているよ。それからネクタイ。シャツも出てる。服装違反しすぎだよ、君たち」
「このリングはお前も持ってんだろうがぁ!」
「ご、獄寺くん、落ち着いて〜」
……獄寺くん?
ぱちり、としかけたあくびが止まった。
聞いたことのある名前。もちろんだ。だってクラスメイトなのだから。
そしてさっきの声。……十代目、と彼に呼ばれているその声は。
「あ、沢田くんと獄寺くんだ」
閃いた。……ら、声に出ていた。盛大に。
校門の前にいる彼らにも聞こえたらしく、驚いたように、訝しそうにこちらを見た。
沢田が驚いたように声を上げる。
「さ、櫻井さん!?」
「おはよう、沢田くん。今日こそ一緒に日直できるね」
え、ええ? う、うん。……意味、分かってないんだろうな。まぁいいや。
「服装検査? 二人ともひっかかったんだ」
「お前には関係ねー」
「あ、獄寺くんおはよう。沢田くんと仲いいんだね、こんな朝早くに一緒に来るなんて」
「もちろんだ! 十代目のゆくところがたとえ火の中水の中だろうと俺は一生ついていく!
ってお前には関係ねーんだよ!! さっさと行けよ!!」
目をキラキラと輝かせてそう言ったかと思えば、今度はギラギラと獰猛な犬のように目をぎらつかせる。
なんだなんだ、彼は意外と面白い人物なのかもしれない。女子にキャーキャー言われてるから、クールな人なのかと思っていた。
「いや、服装検査、あるんだったら受けなきゃ」
「お前なんてひっかかるモンねーだろ!」
「ご、獄寺くん、落ち着いて!」
沢田がなだめて、ようやく静まる。
やっぱり犬だ。ご主人様にはめちゃくちゃ忠実な犬だ。彼にシッポがあるように見えて仕方がない。
ごめんね、と沢田が千風に謝った。その言葉についで、学ランの生徒から低い声が漏れる。
「……君たち、群れすぎだよ……咬み殺されたいの?」
「うわぁああ! ヒバリさん待ってください! 櫻井さんは無関係ですから!!」
トンファーを構えながら恐ろしいことを口にする学ラン。
……トンファー、それに風紀委員。……もしかして。
「風紀委員長さんですか?」
(ええええ櫻井さんんんんん!?)
ぴくり、と不愉快そうに眉を寄せた学ラン——風紀委員長。
その反応で分かった。この人が、あの噂の、と。
入学してから、一年半も出会わなかったというのに。
もしかしたら今日みたいに、朝早く来たら会っていたのかもしれない。なんだそんな簡単なことだったのか。
隣で沢田と獄寺が驚愕に目を見開いているのも知らずに、千風は笑う。
「……何が可笑しいの?」
「あ、すみません。入学して一年半経つのに、私、風紀委員長さんにお会いしたことがなかったんですよ」
それがなんだというのだ。
眉根を寄せて風紀委員長は千風を見た。
「今日みたいに朝早くに来ていれば、もっと前に知り合えたのかな、って思って」
それが可笑しかったんです。と笑いながら言う。
風紀委員長の眉間から皺が消えていた。
ふぅん、と言いながら、その鋭い双眸で笑う千風を見る。——それから一瞬、笑った。
「君、面白いね。名前は?」
「櫻井千風です。あ、クラスは沢田くんたちと同じですよ」
そう、と呟きながら、持っていた手帳を閉じた。
溜め息を一つつくと、通っていいよ、と低く言う。
「やった。ありがとうございます。行こっ、沢田くん、獄寺くん」
「え、えええ?」
何にも言われていないのに。——恐らく、きっと、そう言いたかったんだろう。
けれど、そんなことは今の千風には関係ない。
自嘲にも、哀愁にも似た何かで、微笑む。
——もう少し、早ければ、なんて。
そんな、運命みたいなこと。——私が言えるわけないのに。
— — — — —
>>006 風さま
何度もありがとうございます^^
一話よかったですか!!
うわあああありがとうございますううう←
飛び上がりました。リアルに。←
一人暮らしのところは……ツッコまないでください((
雲雀さんには遭遇しましたww
山本とも絡ませたいですね……←
夢落ちは私の十八番です。嘘じゃないです本当です。←