二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 僕の兄 REBORN 4話up@ ( No.5 )
日時: 2010/11/03 22:21
名前: 市太郎 (ID: voQe75S9)


四話 獣

暗い夜道を駆け抜ける。街灯は気力をなくしたように点滅していた。
しばらく恭弥が走っていると、前方に一人の男の影が見えた。
紛れもなく、兄の姿。足音に気づいた恭一は振り返った。
「お、やっと来たのか」
「……はあ、は……兄さん、何で勝手に帰ったの」
「え!? お前が言ったんじゃねーか」
「……ふう……取りあえず、帰るよ」
「……ははっ」

額に汗を滲ませ、息がまだ整っていない恭弥に向かって、恭一は頭を撫でた。
その手は熊並みに大きく、たくましく、温かいものだった。

夜道をしばらく歩くと、恭一が足を止めた。
一時気づかなかったが、早めに気がついたようで、不思議そうに振り返った。
「どうしたの……」

「きょ……や……こっちに来るんだ」
「え……?」
「こっちに!!」

突然の大声に怯む。唇を噛み締め、恭一は恭弥の元へ走り出した。
その途端、恭一の後方に数個の黒い影が浮かび上がった。
「にいさ……」

しかし、恭一は気がついていた。
我が弟の近くの電柱に潜む影。

「チッ……!」
「きょう……!!」

背後からのかすかな音。
驚いて振り返った瞬間、影と恭弥の間に一人が入り込んだ。
「が……」
「に……さん」
「クソッ!」

倒れる兄。
腹部から滲み出る赤。瞬時の出来事に立ち竦むしかなかった。
状況を察知するのに時間はかからなかった。直ぐに兄を抱える。
「兄さん……!!」
「ってぇ……いてぇ……」

兄の口から漏れる息と霞んだ声。
「まず一人か……」
「こいつ、並中の風紀委員兄弟じゃねーか」
「マジかよ、厄介じゃん」

後方と前方からは男たちの皮肉な声が聞こえる。
しかし、そんなことはどうでも良かった。
「兄さん……!」
「きょ……や、にげ……」
「……逃げる気なんて、満更ないね」

「兄さんは待ってて」

「風紀を乱す奴は……」

——僕が、咬み殺す。

彼の瞳は獣が如く鋭かった。