二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 僕の兄 REBORN 最終話up@ ( No.6 )
- 日時: 2010/11/04 18:39
- 名前: 市太郎 (ID: voQe75S9)
五話 運命
静かに兄を下ろす。
冷静に、ゆっくりと立ち上がる恭弥。
「僕は」
辺りに響く声。
その後小さく呟いたが、誰の耳にも届かなかった。
そして——
「ぐぁっ……!」
「ひぃ!」
僅かな一瞬。正気に戻った頃には辺りに苦しむ男が数人。
手には、かすかに赤く汚れた鉄槌。
足元をふらつかせながら、兄・恭一へ駆け寄った。
「兄さん……今救急車を」
「お前守って死ねんなら……本望だ」
「……何言ってるの。まだ死なないのに、確定? それって酷いと思わないの?」
「そだな……俺は、酷い兄だ」
「大事な弟残……て……」
「言いた……事……腐……ほどある……に」
「運命って……」
——すっげー……残酷。
一人の少年は目を閉じた。
顔からは血の気が引き、土気色に変わる。
恭弥の身体が振るえ、ついには目から悲しみが溢れ出した。
「本当だよ……置いていかないでよ……」
——「兄さん」
夜が更けた。日も経った。
最近の朝は遠くから聞こえる小さい母の声に起こされる。
朝食には、机の上にある湯気の上がらない味噌汁。
未だに今朝のテレビでは、二週間前に報道された通り魔が捕まったというニュースが流れていた。
被害者は並盛中学校のとある生徒。帰宅途中の兄弟に襲い掛かったとのこと。兄側は死亡。弟に怪我はなかった。
しかし、その弟の通報により、その場で逮捕。弟側の頼みで、その生徒の名は挙げられなかった。
そんなニュースは見飽きたように目もくれず、支度を済ませた恭弥は、一枚の写真を見つめる。
とある残忍な出来事に巻き込まれ、世を去った兄の元気な姿がそこにあった。
声を出さんとばかりに口を開けて笑う兄。
しかし、あの後の生活はあまりにも寂しく、つまらなかった。
一人で登校。一人で遅刻者の検査。一人で帰宅。
遅刻することもなくなった。むしろ余裕で登校できるようになった。
トラウマとは言わないが、大人数が嫌いになった。すぐに襲い掛かるようになった。
全てがつまらなかった。
だが——彼は以前の記憶を忘れることなく、写真の中の大切な人には、毎日微笑んでいた。
彼は恭一が並中帰ってくると今でも信じている。
故に彼は、風紀委員長を続けている。
兄が帰るその時まで。