二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: テニスの王子様〜妄想したの書くョ〜No.2 ( No.18 )
- 日時: 2010/11/22 22:07
- 名前: 牙暁 ◆JFdpfyMRiA (ID: J7cEmcFH)
- 参照: んん〜っ絶頂(エクスタシー)!
名前変えたよ。
〜黒猫〜
「…あ」
放課後の帰り道。
いつもの長い長い坂を上っている途中、一匹の黒猫が目の前に現れた。
首輪をつけてないところからきっと野良猫だ。
ゆらゆらと揺れるカギ尻尾を水平に威風堂々と目の前を横切る。
「どこ行くのかな…」
家と家の塀の間へ姿を消していった猫を追いかけてわたしはその間へ入る。
ギリギリ入れるのだが…
「うんしょっと…」
しばらく歩くと広い道に出た。
と、黒猫がまた家と家の間に入って行った。
わたしもついていく。
なんだか猫になった気分だ。
「猫ちゃーん。どこいくのー?」
黒猫は一度も振り返らずにどんどん足を進めていく。
次第に歩いている道も草まみれになってくる。
いま気がついたのだが、空はもう真っ暗だ。
すると、
「あ」
また広い場所に出た。
いままでこんな丘の上にいったことがなかったわたしにしてみればここは異世界みたいなもんだ。
黒猫を探しながら辺りを見渡していると、街を一望できる場所に出た。
そこにひとつのベンチが置かれており、そこにひとつの影。
「…」
黒猫はベンチのほうへ行き、その人影の足にすり寄ってる。
真っ暗で見えないが…多分男の子。
すると、
「…なんや猫さんのあとを追って来たん?」
「……あ」
やっと見えた男の子。
銀色の髪を揺らして、猫を膝の上に置いて撫でるその左手は包帯に巻かれていた。
彼の顔はわたしの通う中学校でも有名だ。
美人でクールで優しい。
と、わたしの友人は言う。
「……白石くん」
「ん?同じ中学校の子なんか……って由梨さん?」
意外だ。
わたしの名前知ってるんだ。
白石くんは驚いた顔をして、そっとほほ笑む。
「暇やね、猫さん追いかけるなんて」
「…」
まあ、否定はしないよ。
もう進学先決まったし。
白石くんは黒猫をなでながらこっちを見る。
「ちょっとお話せーへん?」
「…うん」
彼の座るベンチに歩み寄って彼から距離を置いて腰を下ろした。
ニャーと猫が鳴き、わたしと白石くんの間にあるスペースに猫は伏せた。
「猫好きなの?」
野良猫に触れるなんてすごい。
白石くんはクスッと笑って「せやね」と答えた。
「オレ、猫飼っててな。エクスタちゃんってゆうんや」
「エ…エクスタちゃん……?」
なんか…不思議な名前だなー…
「せや。めちゃめちゃかわいいんや。今度見してやる」
………。
友人の言っていた美人っていうのは一理あるかも。
笑顔綺麗だ。
ここから見る横顔はそれなりにドキドキする。
「うん。楽しみにしてる」
「おう」
白石くんは隣にいる黒猫の顎を撫で始めた。
絵になるなぁ、
じーっと眺めていると白石くんがこちらを向いた。
「なんや?」
「え?ううん…綺麗な顔してるなぁ、と思っ…」
やば、つい本音が…!
慌てて口を押さえると白石くんが小首をかしげる。
「オレの顔が?」
まあ言ってしまったものは仕方ない。
わたしはコクリと頷いた。
すると白石くんは困ったように笑った。
「オレの顔なんか 褒めてくれてありがとさん」
その困り顔も綺麗だ。
「みんなそう言ってくれるんやけど…オレ全然やで?」
「…ああ、」
無自覚なのか。
まったく罪な男だ。
わたしは顔の話から世間話に変えた。
「そういえば、全国大会は残念だったね」
「そうやなー…でもええ思い出になったで」
「そっか」
白石くんの視線は空に浮かぶ月に向けられていた。
「……思たんやけどええ?」
「うん、どうぞ」
「こんなに話すんは初めてやな」
「…そうだね」
と、いうか初めて喋った気がする。
だって白石くんって有名人だから。
近寄りがたい、って感じ。
「なあ、…聞きたいことあんねんけど、……」
「?」
白石くんは手を左手の包帯をいじりながら言いにくそうにしている。
わたしは猫をなでながら、白石くんの言葉を待つ。
「……あんな」
「うん、」
「…好きなヤツおるんか?」
「…え?」
「ああ、べつに答えたくなかったらええねん。ちょっと、思っただけやから…」
好きな人。
いるにはいる。
「…いる…かな、」
「……やっぱりかー…」
「?」
白石くんはため息交じりにそう言ってベンチの背もたれにもたれかかる。
心なしか残念そうに見える。
「…自分めっちゃかわええもんな」
「え?わたしなんか全然……」
「ふふ、無自覚か」
「……」
謙也が似たもの同士って言ってた意味がわかった気がするわ。
と白石くんは笑いながら言う。
表情豊かな人。
ふと思った。
「由梨さん」
低くて綺麗な声がわたしの耳に入る。
白石くんは猫をなでるわたしの手を見つめてる。
「…もしよかったら、なんやけど」
付き合うてくれへん?
耳を疑った。
そりゃ疑うよ。
四天宝寺の超有名なイケメンボーイ白石蔵ノ介くんに告白されたなんて。
「…え?」
夢だろ。
わたしは彼に気づかないように自分の太腿をつねる。
あ、イタイ…
「オレな、前から好きやったんや」
ずっとずっと。
謙也にも相談のってもろたし。
なにそれなにそれ。
「…ま、」
「…」
「由梨さんにはもう好きな人がおったみたいやし…フラれてしもたな」
あはは、と苦笑を浮かべた白石くん。
「残念や」
そう言って白石くんは立ち上がると、背伸びをした。
ベンチにかけていたカバンを背負ってわたしを見下ろした。
「今日はありがとさん。猫さんも」
猫さんのおかげで話せたようなもんやし。
そう言ってあの綺麗な笑顔を浮かべてわたしに背を向け、歩き出した。