二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 忘れな草【イナズマ短編】リク少し募集、なんだよ! ( No.18 )
日時: 2011/03/01 17:38
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: 今からひなにんぎょうだすんでコメント返し遅れます

+湯気の向こうに

「ねえ、リュウジ。今日の夜、雷雷軒に行こう?」

 練習後、あたしはベンチで一人、ドリンクを飲んでいるリュウジに声をかけた。リュウジはドリンクをベンチの傍らに置き、不思議そうな顔でこちらを見てきた。

「急にどうしたんだ? こ」

 その後、何か言葉を続けようとしたけど、リュウジは言いよどんでしまう。何となくだけど、言いたいことは、99%の確立で『こんな時期に』だろう。気持ちはわかるけど、今日じゃないといけない。
 あたしはそ知らぬふりを装いながら、ジャージのポケットからとある券を2枚取り出す。『雷雷軒』のラーメン半額! と大きく書かれた券。響木監督に頼み込んで譲ってもらったものだ。その券を強引に、リュウジの手に握らせる。

「響木監督に券もらったの。期間今日までだし、行こうよ! ねっ?」

 リュウジは渋々と言った感じに頷き、ベンチから立ち上がった。そしてあたしの方を向いて、イナズマジャパンの宿舎を指差した。

「じゃあ、着替えてからすぐに行こうぜ」



 そして、空が茜色に輝き、夕日がゆっくりと沈みかける頃、あたしとリュウジは雷雷軒へと辿り着いた。
 店の入り口には、白く大きな文字で『雷雷軒』と書かれた、のれんも下がっている。あたしが入り口に立つと、自動ドアが開き、ラーメン店特有の熱気が吹き付けてきた。同時に、ラーメンのおいしそうな匂いも。うう、お腹の虫が鳴きそうで怖い。
 湯気があがるカウンターの向こうには響木さんがいて、あたしとリュウジを見つけると、手を止めて、顔を上げた。

「おう、緑川に柚月とは珍しいお客さんじゃねぇか。まあ、好きな席に座れ」

 好きな場所に座れといわれても、お客さんはあたしたちだけだから、席はどこも開いている。
 どこにしかねるか悩んでいると、リュウジが響木さんの前にある二つの丸い椅子を指差した。

「梓、たまにはオーナーの前なんてどうだ?」

 確かにオーナーの前なんて、滅多に座れるものじゃない。あたしは快諾し、リュウジと共に響木さんの前に座る。カウンター席だし響木さんがすごく近いけど、それよりもリュウジがもっと近い。ほんの少し、手を伸ばせば触れられそうな程近くにいる。リュウジがメニューをめくる姿が。頭の上で結ばれた細いポニーテールが。こんなに近いなんて。そのことに気づいたら、急に心臓がざわめき始めた。
 何もいえずにリュウジを見つめたまま固まっているあたしに気づいたのか——響木監督が、口元をニタリと歪ませながら、からかう調子で話しかけてくる。

「夕食抜きで雷雷軒(うち)に来るなんて、二人でデートか?」

 それは違う、とあたしが答えるよりも早くリュウジが口を開く。

「違います。たんなる気分転換ですよ」

 うん。そうそう。イナズマジャパンの宿舎以外でたまに食べればいい気分転換になる。
 響木監督はふうんと納得した声を出してカウンターの向こうで皿を拭き始めた。けれど、皿を拭いているように見えて、探るような視線を時折こちらに向けていることに、あたしは気づいていた。リュウジは気づいてないみたいで、ずっとメニューと格闘し続けている。あたしは時々響木監督と目が合い、そのたびに響木監督は楽しそうに笑った。
 そんな沈黙が数分位して、不意にリュウジが沈黙を破るようにあたしの名前を呼んだ。

「なあ、梓」

 あたしがリュウジの方に顔を向けると、リュウジはメニューをあたしの前に置いた。そして挑戦的な笑みで、

「二人で早食い対決しないか?」

 勝負を仕掛けてきた。もちろん断るなど、あたし自身のプライドが許さない。食べるスピードには自信がある。リュウジになど、負けるわけがない。
 腕をまくり、あたしもまた挑発的に笑って見せた。そしてメニューの一つを指差す。

「いいわね。じゃあこの『麺ガチガチ・ネギチャーシュー大盛りスペシャル』で勝負だ!」

 あたしはあえて大盛のものを選んだ。女の子だからって、なめられたくないからだ。
 リュウジは華奢(きゃしゃ)な体格のあたしがこんなものを選ぶことに驚いたのか、それとも『大盛り』と言う3文字に驚いたのか——僅かにひるむ。しかしすぐに気を取り直して、からかうような顔で挑発してくる。

「望むところだ。負けたほうが奢りだな。逃げるのなら今のうちだぞ? 逃げるが勝ちとも言うしね」
「む〜負けて堪るか!」

 負けたくないという気持ちを目に込め思いっきり睨みつけた。でもリュウジは物怖じもせずに、挑戦的な笑みで返してくる。見えない緊張感がどんどん高まる。漫画なら、あたしとリュウジのバックには間違いなく炎が出ている。それを察したのか、今の今まで高みの見物をしていた響木さんが動き始めた。

 ラーメン勝負は僅差でリュウジの勝ちだった。ほんとうに数秒の差。タイムを計ったら、一秒ほどの違いしかないだろう。リュウジが勝ち誇った顔でニコニコと笑う横で、敗北感に満ちたあたしはくやしさをスープと共に胃の底に流し込んでいた。
その時、響木さんはエプロンを外して調理台の上に置くと、勝手口の方に歩き始めた。どこに行くんですか? とあたしが呼び止めると、響木さんはあたしだけを見ながら、立ち止まる。

「俺は少し買い物に出かけるが、お前らはゆっくりしてろよ」

 そう言い残して、響木さんは勝手口の外に消えた。どうやらあたしとリュウジを二人きりにする作戦らしい。
 あたしは響木さんの気遣いに感謝しながら、勝ち誇った顔をするリュウジに負け惜しみを言ってやる。

「こんな大食いごときに夢中になるなんて、やっぱり男子って子供ね」
「お前こそ夢中になってただろ? 女子も子供だな」

 リュウジは楽しそうに言い返してきて、しばらく二人は大声で笑いあっていた。
 しかしテレビから声が流れてきた途端、リュウジの顔から笑顔が消えた。
 TVに目をやるとファイアードラゴンの試合の特集をやっていた。実は明日はイナズマジャパンとファイアードラゴンの試合がある。今は赤いユニフォームの、つまりはファイアードラゴンの主力選手の紹介がなされている。その中には見知った顔——南雲と涼野がいた。リュウジはTVに映し出された彼らの顔写真を睨みつけるように眺めている。
リュウジは元仲間たちを見ていったいどんなことを考えているのだろう。何か励ましたいけど、上手い言葉が見つからず、あたしはさりげなく普通の雑談に持ち込むことにした。

「リュウジ、明日は韓国との試合ね」

 リュウジは怖い目であたしを見て、無言で頷く。本当は南雲や涼野に対しての憤りかもしれないけれど、あたしはリュウジがあたしに腹を立てているような気がした。俯くと、あたしは細い声で謝った。

「……無理に連れ出しちゃったりして、ごめん」

 その瞬間後悔とか懺悔とかいろんな気持ちが込み上げてきて、頭の中でぐしゃぐしゃに混ざり始めた。
 今日は試合の前日リュウジはもっと練習をしたかったかもしれない。それなのにあたしは彼の邪魔をしてしまったのではないだろうか。リュウジの気分転換になれば、と連れ出したのは、実はリュウジを邪魔することではなかったのか。脳内の悪魔が次々と嫌な仮設を生み出していくなか、リュウジの静かな声が聞こえた。

「いいや」

 びっくりして振り向くと、リュウジは柔らかい笑みを浮かべていた。

「オレは梓と二人きりでここに来れて、いい気持ちの切り替えができた。お前とラーメン早食い勝負をしてさ、明日の試合に向けて頑張ろうって思えてきたよ」

 その声に迷いなんかなくて。その声に怒りなんかなくて。
 あたしはふわふわとした夢心地のような感触に囚われながら、にじむリュウジを睨んだ。

「あ、あたしの奢りなんだから負けたら承知しないし」
「明日の夜も、ファイアードラゴンに勝利して、一緒に来ような」
「うん」

 絶対に勝ってほしい。あたしはまだほのかに立っている湯気に願いをかけた。湯気の向こうに、笑いあうあたしとリュウジが見えた気がしたのは気のせいかな。

(湯気の向こうには、何があるのかな)
〜FIN〜
HAHAHAHA☆
なんですかこの意味不明な文章は〜!?
ルカぴょんさんを長いこと待たせておいて、こんな低クオリティの作品を生み出してすいませえぬ。
甘いはずがなんかただラーメン食っただけにしか見えませんよね;;
では、ルカぴょんさんリク有難うございましたb